Clearview AI事例からデータの所有者とビジネスモデルについて考える
こんにちは。アメリカで新規事業業務を行なっている中で最近気になった業界の動向と気づきを定期発信しています。どなたかの参考になれば幸いです。
さて、インターネット上に溢れる個人に関わるデータデータは誰のものかという観点において、自分のデータは自分がオーナーでありたいと常に考えています。
最近アメリカでは、顔認識技術を利用したNYベースのスタートアップClearview AI が物議を醸していて、データの所有者について改めて考えさせられましたので事例紹介と、この機会に自分なりの見解を述べたいと思います。
事例紹介 (Privacy vs Crime Prevention)
Clearview AIはFacebook, YouTube, Twitter, Instagram, VenmoなどのSNSから数十億単位の顔写真と位置情報を無断でスクレーピングし、名前や顔認識技術によりその人がいつどこにいたかを特定できるアプリを開発していて、プライバシー侵害や倫理に反したビジネスモデルと批判されています。YoutubeやTwitterなどSNS企業はClearview AIにスクレーピングを止めるよう呼びかけている一方でClearview AIアプリは既にFBIや600以上の警察機関で利用されていて犯罪者・被害者の特定に活用されているようです。犯罪と闘う彼らにとってはニーズにフィットしたソリューションであり、犯罪を防止・解決する(手柄をあげる)ためには手段を選ばない姿勢だと思います。
参考記事:
類似の事例としてドアベルのRing (Amazonが2018年に買収)も 数百単位の数の警察機関とのコントラクトを結んでおり、犯罪特定のためのデータ提供を行っているようです。USでは郵便やAmazonなどの配達物も玄関に置かれるだけなので、盗難被害も少なくありません。そこに目をつけたRingは不在中の場合でもスマホに来客通知がありどこでもリモートで話ができたり、自宅ではAlexaが来客を通知してくれたり、そしていつでも過去の来客時の様子を確認できたりするサービスを提供しています。
とても便利なので僕も利用していますが、一方で知らない間にRingから警察機関へデータが提供されているのかもしれません。
参考記事:
これらのように今やプライバシー保護と犯罪防止はトレードオフの関係にある時代です。
プライバシー保護の動き
一方でプライバシー保護の動きとしては、昨年度、サンフランシスコ市は市民権利を尊重して公共で顔認識技術を利用した監視を禁止するUS初の市となりました。他の市や州でも同様の検討の動きがあります。
参考記事:San Francisco bans city use of facial recognition surveillance technology
イリノイ州ではBiometric Information Privacy Act (BIPA)という生体情報保護法が定められおり、ユーザの同意無しに顔画像を含めた生体情報を収集することは法律違反になります。
また、カリフォルニア州では今年からCCPA(California Consumer Privacy Act)が施行されました。カリフォルニア住民であればClearview AIに自分のデータの削除依頼を出す法的権利があります。
CCPAについては前回記事もご参考にください。
自分のデータは自分がオーナーでありたい
企業はユーザに便利なサービスを提供してユーザからデータを吸い上ています。そしてユーザがサービスのTerm of Useに知らないうちに同意した(または読まずに同意した)ことにより、それらのデータのオーナーはサービス提供側となっているのがほとんどのケースだと思います。サービス提供側がそれらのデータを第3者とデータの売買をするビジネスモデルは今後も続くと思いますが、Clearview AIの事例はデータのオーナーという視点において本来のあり方を改めて考えさせれました。自分が作り出したデータ、自分の意思で共有したデータは自分がオーナーであるべきではないかと考えています。
ユーザが例えSNSなどで自分のデータを公開しても、自分のデータがいつ誰が参照したか追跡でき、必要あればアクセスをブロックできる。お金でアクセスを許すこともできる。そのような技術およびビジネスモデルが、ヒト・モノ・カネに加えてよりデータが価値となる時代に求められているのではないかと考えています。
全ての人が平等に自分の意思で自分のデータを利活用できる社会に貢献していきたいと思います。
ではでは。またサンフランシスコから気づきを発信していきます。
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