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農業で稼いで何をするの?

農業の世界も、他の産業と同じく稼げることを最優先に掲げ動いている。農水省は田を転作して「高収益作物」へ促す政策を行っているし、各都道府県、市町村も積極的に儲かる農業にしようとしている。生産者も同じく稼げることを目標にして、大規模化をする人が増えている。

農業雑誌や農業に関わるシンクタンクみたいな団体が発行する本を読むと、いかに儲かるか、儲かるためにはどうするか、あの生産者は年商1億を超えた、行政と農協を批判してもしょうがない、といったことが主流となっている。

一言で終わってしまうけど、稼げる農業なんか1ミリも興味ないし、これからもそれにコミットすることはまずない。食べていければそれでいい。

同業者に「俺は億もの金を動かしているんだぞ」というのに1人じゃなくて数人自慢されたことがあるけど、どう反応すればいいかわからないから適当に相槌を打った。

お金をがっぽり稼ぎたい人は勝手にすればいいんだけど、いっぱいお金を稼いで何をするんだろうか?億単位の収益を上げ、従業員を雇用して、規模を拡大していくことはなんのためにやるのだろうか?資源は有限で人生も同じだ。時間は限られている。お金を稼ぐために自分の時間を注ぎ込むことは考えれられない。お金をいつでも稼げても時間は永遠に戻ってこない。

大規模農業と儲かる農業を尊ぶ流れは10年は続くだろうけど、その先の未来はないと思っている。農地を拡大する手法と儲かり続けることはまずない。そもそも農業で儲かるという前提自体が現代に限った特殊なことであり、特殊なことが普遍的価値を持つことはない。1万年もの農耕の歴史を俯瞰すれば、たかだが20年くらいの金を中心とした農耕が続くと思うが異常だ。

新自由主義の広がりですべてを市場経済に換算してきた資本主義はもう終わる。世界を豊かにした側面もあるが、すべてを金にしたことの歪みは限界だ。経済は重要だけどすべてではない。

10年くらい前かな「ニートの歩き方」を読んだとき、どうしてこれが話題になるかわからなかった。phaさんが、言語化できないところを言語化してくれたことは良かったが、内容は自分にとって「普通」のことだった。多分、今は同じような考えの人たちが増えてきている気がする。ニートがバッシングされなくなったし、「自分がいいと思うことをやればいいよね」が広く共有されるようになっている感じだし。

農業に関しては、国、行政、農業者は完全に真逆の方向を向いて走っている。お金儲け至上主義が増えてきている。特に若い人たちで。(60代も農業では若手なので…)

お金儲けをする人たちに「お前も稼げ、稼いでナンボぞ」と言われても、自分は興味ないのでこのまま自分のやり方で進んでいく。

「やり方次第で農業はリスク0の産業になる」とお金儲けの人たちが言うことに対して「食べるだけ農業してあとは時間を大切にすることもリスク0ですよ」と言いたい。


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