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遅すぎる試合後レビュー。試合とは逃げ出したくなる自分との闘い。

試合が終わって2週間が経ちました。なんだかんだで忙しく、書けず仕舞いになってました。まあ、試合直後は気が動転していたので、むしろ2週間くらい経って冷静に自分の試合を書ける気がしたので書いていきます。

試合内容の総括(要らないけど、一応。)

お互いデビュー戦で情報がなかったため、対峙するまでどんなタイプでどんくらい強いのかは分かりませんでした。やる方としてはあった方が対策しやすいなと思う反面、得体が知れないからこそ生まれる緊張感があったと思います。そういう状況だったので、相手に嵌め込む練習ではなく、ひたすら自分と向き合って自分のレベルをあげる練習しかしてこなかったです。

映像を見返しているのですが、完全に封じ込めたと言えるでしょう。パンチは恐らく一発も貰っていないはず。1R目の1分で相手のボディにキックが数発連続で入ってから、主導権を完全に握った感覚がありました。

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そこからは、自分のペースで自分のやりたようにやらせてもらえた気がします。1R目の終盤にかかるとローキックが効いたのか、相手も足を引き摺る様子が見られました。そこで心理的な主導権だけではなく、物理的に主導権を握れたはずです。

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そして、2R目に突入。何発かローを蹴ったら、蹴られる距離感を潰すために前に前に前進しようとしてきました。1ラウンド目からもそれはあったのですが、プッシュキックと言われる前蹴りでそれを跳ね返せたのでよかったです。そんな状況で相手に前蹴りをしたら、思ったより吹っ飛ばされて相手と3Mくらい距離ができてしまった。

「さあ、何をするか。遠いからすり足で寄って行ってもなあ。。」みたいなのを思った瞬間に、勝手に足が踏み出して気づいた時には空中で相手の顔を膝で捉えていました。練習でも1回もやったことのない超大技、なんで。。。

そこからは、相手が口から出血がひどい状態で、さらには顔に追撃のハイキックまで決め相手の脳も揺れており、仕留めるだけでした。とにかく試合を終えたくて、早く仕留めたかったのです。それでも相手は折れずに前に前に進んでき一発逆転してやろうという気持ちが前面に出ていたので、いい勝負が出来上がった気がします。相手のガッツは伝わった。

そんな感じが試合自体の総括です。まあ、興味ないよね。わかる。
一応、なんか考えて戦ってるんだなあくらいで十分です。ザッツオール。

リング上のあいつは何かに憑依した別の生き物。

暗幕から出たのはわずか6分くらい。そんな短かったのか。

暗幕の出演控えのところで1試合前から待機していたんだけど、お客さんの入った会場自体見ていないしどんな空間なんだろう。プレゼントか10人以上で話すのすら苦手なのに、こんな400人近くの前でスポットライト浴びるのかあ的な。ほんとに現実になってしまった感が最後まであった。

そんなこと考えてちゃダメだけど、これはまあ場数で慣れそうな気がする。試合の時とか一切リング以外に神経がいってなかったし、それで緊張するとかは一切なかった。ただただ相手より先に殺してやろうと思っていた。でも、やっぱり暗幕から飛び出す最後の最後までまで嫌だなあとやるしかないの綱引きだった。

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暗幕からいざ飛び出ると、もうそんな自分は多分いなくなっていた。写真を見ても完全に表情が常軌を逸しているし、何かに憑依できたんだと思う。そこで怖さを相手に見せるなんてことはできないからね。めちゃくちゃ大きく見せて、自信満々で、殺気だってて、活き活きしてたんじゃないだろうか。俺は暗幕でてから記憶がぼんやりだからわからないけど、完全に別の生き物のようだった。

勝った瞬間に雄叫びを揚げていたり、レフリーにウィナーコールで手を挙げられてもずっと跳ねているのは、なんかね。そうだと思う。普段あんな声出さないからね。自分の動物的・野性的な部分が溢れ出してのかな。

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試合が終わって、リングを一周した時に初めて応援に来てくれた仲間が見えた。会場が盛大な拍手と歓声をくれていたことがわかった。それでも、暗幕に捌けるまでは完全に演じていた自分だった。やっぱ、入り込んで、カッコつけていたかったんだろうね。自分が憧れた格闘家達はそうだったから。

やっぱり、俺はどこまでも弱い人間。

暗幕にハケていった瞬間。そのスイッチが切れた。暗幕の外で何者かに憑依していた自分から、2ヶ月間苛めて入り込んでいた自分から、自分を超える事をやり切った自分から。

急に涙が止まらなくなった。控室に戻るまでの道で他のチーム全員が敗者が戻ってきたのだと思って労いの言葉をかけてくれていたらしい。そんなのも全く気づかないくらいに泣いた。「男らしさ」とか無縁なくらい、超ダサイくらい、あんなに人前で泣いたのは初めてだというくらいに、人目を憚らず泣いていた(らしい)。

控室で30分くらいずっと嗚咽しながら泣いていた。セコンドの人が動画を撮っていて、それを見返したんだけど何言ってるか聞き取れないけど一人でなにかを言っていた。

正直、泣いていた理由は今でもぼんやりとしか分からない。ただ、勝った事で、嬉しいとかスカッとしたとか、やってやったぜ。みたいな感覚はなかったし、今も無い。友達に元気がもらえたとか、背中を押してもらえたとか言われたのはうれしかったけど。

リング上の自分とは正反対なくらい、自信がない、弱気、弱虫な自分に戻っていた。2ヶ月かけてリング上のあの精神状態に持って行ったけど、本質的にはあれは180度違う自分なんだろう。本当の素の自分に戻るために体がそうさせたのかもしれない。心に抱えていた殺気とか怒りみたいなものがスーッと消えていった。あれは不思議な感覚。

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「勝ってこんなに泣く奴は見たことがない」とジムの会長から言われた。逆に言えば、これ以上根っこが素が弱いやつがいなかったんだろう。みんな勝ったらバックヤードでも嬉しさを爆発させたり、喜んだりしてるのかもしれない。多分、根っこが素が強いから、本当の自分をリングに持っていけるんだろう。

自分はそうじゃない。そうじゃないからこそ、自分の弱さが嫌いだからこそ、あえて180度反対な世界に憧れて、飛びこんてきたんじゃなだろうか。
弱いからこそ、格闘技をやる。弱いうちは、やり続ける。

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逆に自分に自信や強さを感じたら、やめるんじゃないかな。試合とは逃げ出したくなる自分との闘いだけど、そういう感覚が消えて作業化できる域に行ったら俺はやめる気がする。だから、やってるうちはずっと辛い。それが辛い。今はなんかぼんやりだけど、そんな気がしてる。

格闘技に試合は毎試合が受験。

試合が正式に決まってから二ヶ月。気狂いになれるように、自分が自分を脱せられるように、自分の精神に負荷をかけてきました。

やっぱり、この2ヶ月間を通して、アマチュアの試合をしていた時には感じない過酷さを感じた。もちろん、職業プロとして生活を懸けているわけでは無いし、命だって実際に懸かっているわけでは(ほぼ)無い。所詮、逃げ道のある学生にすぎない。

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それでもプロと名付けられた試合で、生温いものものを見せられない、頑張りましたではいけない。自分が信じる哲学とか生き方とか作り込むものに対して妥協は許されない。自分でプロの格闘家ですなんて名乗る事は恐れ多くて言わないようにしてるけど、同じ土俵に上がって土俵を汚すような事は自分のプライドが許さない。憧れを抱き続けてきたからこそ。

とにかく自分と向き合う作業、リングに上がる日までのカウントダウンが受験直前の受験生が抱く気分のようだった。ジャッジが出る、合格か不合格かの二択しか無い。ジャッジされて合格すると分かっているなら早くきて欲しい。だけど、不合格になるかもしれないと思うとジャッジの瞬間が少しでも先に延びてほしい。そんなジレンマ。でも、それって格闘技に限らずだったんだな。

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受験生のような心境で試合に向けて作り込む事は本当にしんどくて、ここで勝ち逃げしてしまいたかった。そうしたらセンセーショナルな勝ち方して、一生ちょっとした自慢っぽく負けレコードなく逃げる事ができてしまう。

あぁ、ここで終えたらもう解放されるのに、ずっとこの身も心も削る作業と向き合わなければいけないのかと思うと、格闘技から初めて逃げ出したいと思った。一瞬そんな弱い、甘い考えがあった後、怖さから解放されて生き延びた事で魂の放心が混じっていた。もちろん、これがスタートだって腹括ってたから、そんな事は絶対しないと分かっていた、向き合わなきゃいけないからこそ絶望を感じて泣いていたのかもしれない。


改めて。賽は投げられた。辛くとも、険しくとも、もう前に進むしかないのだ。

あれ以上ダイナミックなKOがキャリアで出るかは現実的にわからない。泥を飲むような試合が普通だと、覚悟してる。そしたら、派手な殴り合いとかスマブラのような格闘技を楽しみにして観にくる人は減るだろう。別にいい。構わない。それだけが格闘技では無いと思ってるから。嫌なら、見なきゃいい。

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自分でもどこまで高い山に登れるか分からない、体も強く無い、キャリア歴も短い、格闘技センスもない。でも、自分が自分を超えた瞬間を知ってしまった。だから、自分がどうなるか、どこまでいけるかは分からないけど、楽しみにしている。やるしかない。賽は投げられた。男女差別とか厳しい時代でもあえて言おう。ここで逃げ出したら、漢じゃない。少なくとも自分が背中を見てきた。

アントニオ猪木。「道」。

この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ、危ぶめば道は無し。踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。迷わず行けよ、行けばわかるさ。

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自分の、バカやろー!








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