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リモートワーク? ハイブリッドワーク? これからの働き方はどうなるのか

2020年、新型コロナウイルスによって、私たちの生活は一変しました。
そんな中、大きな影響を受けたのが働き方。
非接触を目的とし、国内外を問わず、急速にリモートワーク(在宅勤務)が普及しました。

世界中で現在の働き方に変わってから約1年半が経過し、
企業によってはリモートワークとオフィスへの出社を組み合わせるハイブリッドワークに移行する企業も出てくるなど、最適解を探す動きが加速しています。

自社にとってどんな働き方がマッチするのか? そもそもトレンドはどう変わっていくのか?
国内外の事例から、これからの働き方について考えてみました。

1.  リモートワークとハイブリッドワーク

まずは、“これからの働き方”を考える前に言葉の定義を確認してみます。

■リモートワークとは

一般的には、「インターネットを介し、企業のオフィス以外で業務を行うこと」を指します。
コロナ禍となってからは、「在宅勤務」も含め、すっかり浸透した言葉ですが、勤務地に縛られないことや、通勤時間の削減など新しい勤務体系として引き続き注目されています。

■ハイブリッドワークとは

先述したリモートワークとオフィスへの出社を組み合わせる勤務体系です。
主に生産性の向上やコミュニケーションの促進、社外とのコラボレーションを活発化させるという観点から、急速に注目が高まっています。

各社によってどのような勤務体系を採用するか。
その対応は分かれ、出社を義務付けたり、フルリモートワークを推奨したりと、議論が進められています。

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2. コロナ禍における各社の対応

それでは、生産性や通勤時間など、様々な観点がある中で、各社はどのように対応を進めているのでしょうか?

まずはじめに国内より早く議論が進んだ海外の事例を、それからやや遅れをとっている感はありますが、国内でも今後の方針を打ち出している企業の事例を見ていきましょう。

今回は各社の対応を、
・リモートワーク推奨
・ハイブリッドワーク(出社義務あり)推奨
・ハイブリッドワーク(出社義務なし)推奨

の3つに分類してみました。

■海外の事例

・リモートワーク推奨

Twitter
Twitterは新型コロナウイルス収束後も、恒久的にリモートワークでの勤務を認める方針です。もちろん、希望する社員には出社を許可するとのことですが、各社が対応を熟慮する中、いち早くリモートワークを“推奨する”方針を示した企業の一社です。
同社は2年ほど前からリモートワーク制度を導入していたことに加え、
・情報共有に時間を消費しすぎないよう、具体的な議題のない会議を禁止
・ストレスを軽減するために、成績評価を1年間停止
・心理的なプレッシャーを軽減するために、会社からの連絡に応じる時間帯を限定する

など、心理的な面のケアに注力することで、スムーズなリモートワークへの移行を実現しました。


Facebook
将来的には全社員にオフィスへの出社を求める方針だったFacebookは、2021年4月に、勤務内容的にリモートワークが可能な社員であれば、恒久的にリモートワークを可能にする方針へとシフトしました。
リモートワークが許可されていない社員には週の50%程度の出社を求める予定ではありますが、従業員からの強い希望を受け、方針転換を決めたとのことです。
また、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏も私有地のあるハワイでの勤務を実践したり、「生産性が向上し、よりハッピーになった」「家族と過ごす時間が増えた」などリモートワークのメリットを実感しているとのことで、
企業側のニーズと従業員側のニーズとが歩み寄った例と言えるでしょう。


・ハイブリッドワーク(出社義務あり)推奨

Google
Googleは、「リモートワークではチームワークの形成や、イノベーティブな新製品開発が難しい」との理由から、全社員の60%ほどに最低週3日以上の出社を義務付け、残りの日はリモートワークを許可する方針を打ち出しています。
また、既にTwitterが導入しているように、居住エリアの物価に応じて、最大25%の賃金削減を検討するなど、基本的にはオフィスへの出社を推奨する方向性と言えそうです。
他社との差別化ならびに社員の生産性向上を目的とし、オフィス環境を整備してきたGoogleらしい方針かもしれません。


Amazon
Amazonも、週3日程度のオフィス勤務に週2日のリモートワークを組み合わせる方針。
むしろ、本社のあるシアトル以外に複数のオフィスを開設し、従業員の確保に努めるという“オフィス中心主義”を打ち出しています。
社員間のコラボレーションや、ものづくりのしやすさがオフィス回帰の主な理由とのこと。テック企業でもあり、物流の中心でもあるAmazonにはフィットしている働き方と言えるかもしれません。


Apple
Appleは、新型コロナウイルス収束後には、週4-5日の出社を求める方針です。
1年に計2週間ほどのリモートワークを認める方向ですが、「対面のコラボレーションに代わるものはない」との考えを示しています。
ハードウェアが事業の中心であるAppleには、リモートワークが難しいという事情がありそうですが、一部の従業員からはリモートワークを柔軟に認めるよう反発の動きがあるなど、経営陣と従業員との意識にはやや開きがあるように見えます。


Microsoft
Microsoftは、従業員が在宅勤務を選択できる権限を恒久的に認める方針です。
ただし、勤務時間の50%までと制限があるため、基本的にはGoogleやAmazonのように週の半分程度は出社をすることとなります。
その背景には、Microsoftが自社従業員および自営業者3万人を対象に行った調査から判明した、“情報共有による実勤務時間の長時間化”“他チームのメンバーとのコミュニケーション量の減少”といった、リモートワークによる弊害があると思われます。


・ハイブリッドワーク(出社義務なし)推奨

Cisco
Ciscoは、出社日数を義務付けない形でリモートワークを許可する方針です。
リモートワークのみを推奨するわけではなく、オフィスをコラボレーションの場として位置付け、整備を図っていくとのことです。
「Cisco Webex」を始めとした、リモートワークを推進するサービスを提供している同社は、コロナ禍以前からリモートワークを導入していたこともあり、カルチャー的にも問題なくリモートワークへの移行ができたとのこと。
週3日以上オフィスに勤務することを望む従業員は全体の4分の1にとどまっています。

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以上、海外の事例を見てみましたが、カルチャー的にも環境的にもリモートワークと相性が良さそうなIT企業でも、オフィスへの出社を義務付ける動きが高まっているように見えます。
実際にはApple社員の反発やCisco社員へのアンケートが示すように、リモートワークを好む従業員が多いこともあり、このタイミングでオフィスを拡張するAmazonや給与調整を図ってまで出社を促すGoogleの姿勢にはやや驚かされました。
各社の業績や採用戦略にも大きな影響を与えると思われますので、引き続き各社の動向はウォッチしていく必要があるでしょう。

それでは次に国内の事例を見てみます。

■国内の事例

・リモートワーク推奨

ヤフー
国内でもいち早くリモートワークの導入を進めていたヤフー。
92.6%の従業員が、リモートワークでもパフォーマンスへの影響がなかった、もしくは向上したと回答しました。
今まであったリモートワーク回数の制限やコアタイムを廃止し、オフィス面積の削減も検討するなど、一気にリモートワークを推進しています。


・ハイブリッドワーク(出社義務あり)推奨

日立製作所
日立製作所ではコロナウイルス収束後も、週の50%程度をリモートワークとする方針を固めました。
興味深いのは、ヤフー社と異なり、リモートワークを経験した従業員の約40%が「パフォーマンスが少し下がった」と回答したこと。
この結果からもリモートワークと業種/カルチャーなどとの相性が見えてきそうです。


クックパッド
クックパッドは、現在はリモートワークを認めているものの、将来的にはオフィスへの出社を前提とする方針を打ち出しました。
ただし、オフィスへの出社しやすさ/コラボレーションのしやすさを考慮し、都心から横浜へのオフィス移転を決めました。
同社における“料理”のように現物があり、オフィスへの出社を中心とする企業には参考となる動きでしょう。


・ハイブリッドワーク(出社義務なし)推奨

サイボウズ
「100人100通りの働き方」などユニークな人事体制でも知られるサイボウズでは、オフィスを効果的に活用するハイブリッドワークを推進していく方針です。
リモートワーク回数などの制限はないものの、オフィスを社内外のコラボレーションの場と捉え、整備を進めていくとのことです。


DeNA
DeNAでは、ハイブリッドワークを前提とする方針を打ち出しました。
今後もリモートワークは継続する見込みですが、将来的には30%ほどの出社率を前提とし、オフィスの移転+横浜への拠点拡大を行いました。
現在も本社への出社率は約6%と、スムーズなリモートワークへの移行を実現していましたが、“オフィスの価値”を再考した結果と言えそうです。

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海外と比較して、明確な方針を打ち出している企業はやや少なく、他社の動向を注視しながら様子見している状態と言えるかもしれません。
製造業を中心に拡大してきた日本では、顧客とのやり取りでも対面でのコミュニケーションや紙作業を重視する文化が根強く、中々リモートワークの導入が進まないという事情もありそうです。
いち早くリモートワークメインの働き方を打ち出す大手企業などが出てくると、議論が前に進むかもしれません。楽しみですね。


3. どの働き方を選択するべきか

さて、ここまで国内外のいくつかの事例を見てきましたが、まさに千差万別。
経営者や人事担当者にとっては、結局自社ではどんな働き方を選択するべきか、頭の痛い問題かと思います。

そこで、人事評価のDXを実現するリアルタイム評価サービス「HiManagerを提供している弊社が、顧客へのヒアリングを通して見えてきた、それぞれの働き方のメリット/デメリットどんな企業にフィットするかをまとめてみます。
(ちなみに弊社ではリモートワークを引き続き採用する予定です)

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■リモートワークのメリット/デメリット、選択すべき企業

メリット
・勤務場所を選ばないため、地理/勤務体系などの理由で今までアプローチできなかった優秀な人材の確保につながる
・通勤時間やオフィス費用の削減につながる
・出産/育児、介護など従業員のライフスタイルを尊重しやすく、離職の低下につながる

デメリット
・IT/セキュリティ環境の構築など追加投資が必要になる場合がある
・労務管理、評価/マネジメントなど出社を想定とした仕組みが機能しにくい場合がある
・意識的な制度構築を行わないと、従業員同士のコミュニケーションの希薄化、心理的安全性を損ねる可能性がある

選択すべき企業
・スタートアップ企業など、勤務体系にこだわらず優秀な人材を確保したい企業
・IT・Webサービス/BPOサービスなど無形商材を提供する企業

■ハイブリッドワークのメリット/デメリット、選択すべき企業

メリット
・出社によるコミュニケーションの円滑さやリモートワークの柔軟性、両方を享受できる

デメリット
・IT/セキュリティ環境の構築など追加投資が必要になる場合がある
・出社を義務付ける場合、リモートワークを望む従業員の離職リスクが高まる
・出社を義務付けない場合、労務管理や経費管理などが複雑化するため、オペレーションを構築する必要がある

選択すべき企業
・メーカーなど、主に有形商材を扱う企業
・企画/デザイン/設計業務など、複数人での打ち合わせが頻繁に発生する企業
・既存のカルチャーや商習慣から、リモートワークへの完全移行が難しい企業


■ 完全出社のメリット/デメリット、選択すべき企業

メリット
・これまでの働き方に近く、追加の投資コストがかかりにくい
・ルールの変化などによる従業員の心理的負担は少ない

デメリット
・採用可能エリアなどが絞られ、優秀な人材が確保しづらくなる恐れがある
・(特に都心であれば)通勤によるコスト・従業員の身体的負担が発生する

選択すべき企業
・BtoCのサービス業など、直接的なコミュニケーションが発生する企業


4. まとめ

いかがでしたでしょうか?
各社の対応を比較すると、働き方に対する価値観だけでなく、各社が目指す方向が見えてくるような気がしませんか?

海外/国内に関わらず、あくまで各社とも現時点での方針ですので、ワクチンの普及状況やウイルス収束のタイミングがいつ頃になるかで対応は変わってくるものと思われます。
ただ、新型コロナウイルスがこれまで進みそうで進まなかった“働き方”に関する議論が進む契機となったことには、疑いの余地がありません。

どんな働き方にもメリット/デメリット、向き不向きがあることは事実ですし、正解のない議論でもあるため、まだまだ研究の進んでいく領域かと思います。

とは言え、結果的に急速にリモートワークが普及したのもまた事実。
おそらく、これからはリモートワークを前提とした働き方が中心となってくるでしょう。

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ハイマネージャー
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