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透明性を通じて成功するモデルを構築する

この記事は、以下の記事の翻訳となります。

訪問ケアという現場でのOKR事例を下記の通り、ご紹介します。

ケアモアが在宅ケア(訪問での診療・看護)を向上させるためのOKRの活用

医師の訪問ケアという考えは、1930年代に白黒テレビ放送が始まった前年のような、どこかノスタルジックな響きがあるものです。

少し体調が悪いと感じた時はパジャマに身を包んだままで良し。医師があなたの家を訪問してくれるので、ケアを受けるために外出することで回復を妨げたり、病気を他人に広めたりといった心配をなくせます。

ノスタルジックというよりも、現代では贅沢なサービスだと思える事でしょう。実際、今日ではこのようなオプションを提供している場所の多くでは、高価格のコンシェルジュサービスとされています。アメリカ家庭医学会によると、1930年代に40%の患者に対応していたものが、1980年代のではわずか1%にまで落ち込みました。

しかし、訪問ケアの経験が患者とシステムに測定可能な改善をもたらすことはわかっています。家庭への訪問ケアは、長期ケアのための入院や、死亡・そして新生児ケアのための繰り返し入院の減少といった健康の改善をもたらすものです。入院患者の入院後の薬物管理のための在宅訪問も、薬物過誤を削減します。これは、米国の医療システムに毎年210億ドルの費用がかかる問題です。

現状はどうなっているのか?2009年には、米国全体で約230万件の訪問ケアが施されました。2009年の政策変更により、在宅訪問の払い戻しが50%増加したことにより、訪問ケアに復活の兆しが見えています。しかし、現代の医療システムが「在宅病院」を患者にを提供することで、従来の訪問ケアを代替すると何がどのような事態が想定されるでしょうか?

変化はホームチームから始まる

ケアモアは、2018年12月にカリフォルニア州ロサンゼルスとオレンジ郡で「在宅病院」プログラムを開始しました。うっ血性心不全、肺炎、インフルエンザなどの特定の症状、または皮膚感染に直面している患者などの創傷ケアのニーズがあるハイリスクのメディケア患者に焦点を当てたこのプログラムは、緊急対応の必要な患者が訪問ケアの要請をできるよう設計されています。在宅治療が必要な患者数は、当時、ケアモアの患者全体の20%以上だと推定されていました。

「私の初めての訪問ケアは1980年代に始まり、すでに従事していた父親と共に週末に高齢者を訪問していました。後に医学部と共に患者の状況に関する教育の一部として訪問するようになりました」

とケアモアのチーフメディカルオフィサーであるビベック・ガーグ博士は話します。彼は3年以上前にチームに加わり、当初は新しい市場と事業開発を監督していました。

「クリニックと本部の両方でこの素晴らしいチームが作り上げられていました。全員が健康状態を改善するために在宅の患者により良いケアを提供するという目標を共有していました。」

しかしガーグはすぐに、自社の努力を成功に導くために、ケアモアチームは協調的な優先順位設定のためのツールも必要であることに気付きました。

「私たちがしなければならないことは分かっていました」

と彼は続けました。

「しかし、優先順位立てができていなかったのです。そこでOKRが必要でした。」

ケアモアは広い範囲をカバーしながらもシンプルに、1930年代の訪問ケアを現代風にアレンジした「在宅病院」プログラムを確立しました。目的は、コストを削減し、繰り返し入院する回数を減らしながら、より質の高い患者ケアを提供することです。

チームは、最初の一握りのOKRを使用して、野心的なプログラムへの登録目標を設定し、

標準的なケアを受けた場合と比較して、健康結果の改善が期待されることを確認しました。ケアモアの計画は紙上では十分に検討されているように見えましたが、このような思慮深い計画でさえ、現場で失敗する可能性があります。何年もの間、患者はケアモアの開業医に自宅でフォローアップケアを受けられるかどうか尋ねていました。しかしチームの想像に反して、新しいプログラムへの患者の移行は非常に遅かったのです。

「在宅病院プログラムの成功は2019年の優先付けするためのチームOKRであると特定できました」

とケアモア のメディカルディレクターであり、在宅病院チームのヘッドであるサシ・ムードリー博士は言います。不足しているものを評価するための部門間のコミットメントと、問題を解決するための部門間のコミットメントの両方が必要です。

患者は、在宅ケアに対して、プライベート空間が侵されると感じたのでしょうか?在宅ケアは、クリニック受診と同じレベルの医療ケアが提供されるものなのでしょうか?そもそも臨床医や患者は、それがケアモアの提供するサービスのひとつだと把握していたのでしょうか?在宅ケアは十分な価値を患者に提供できていたのでしょうか?臨床医に対しては、どうでしょうか?患者がどこにいても、納得行けるケアを提供するために、ケアモアは何を変えていく必要があったのでしょうか?

ムードリー博士は彼のチームの任務として、患者、プライマリケアに従事する医師、その他の臨床スタッフおよび看護者から大規模な聞き取りをするセッションを設けました。チームはすぐに、最初に障壁となっていることに気づきました。登録メールが非常に事務的であり、プログラム自体が事務的で孤立したもののように感じられてしまう点です。

どうすれば在宅病院チームの新たな資産である「患者の自宅で、それぞれに最適な急性期治療の提供」が促進できるでしょうか?彼らは、臨床医からの患者紹介を増やすという新しい目的を立ち上げました。当初に比べて規模を縮小することで、より狭い地理的な範囲内で臨床医に対して、より人間味のあるサポートを提供するためです。

主要な結果を継続的に追跡することで、紹介プログラムを改良し、登録プロセスにおけるあつれきを減らしました。ホテルのコンシェルジュにヒントを得たトレーニングを受けることで、臨床医はオフィスでの予約を取る際に在宅病院プログラムについて患者と1対1で対話しやすくなりました。更に、複数あった患者照会チャネルを普遍的な1つの紹介番号に置き換えたことで、患者情報の照会が容易となりました。紹介を多く行った臨床医に対しては、プログラムが有益となる患者を見つけ、そして紹介したという成功を評価・表彰していました。そして、数字が上がるようになったのです。登録数が増え、コストも削減できました。

「OKRの透明性は、競争ではなくつながりを提供します。」 

ムードリー博士は言います。

会議や仮想ワークスペースでOKRスプレッドシートを共有することで、チームはサービス開発とプログラム実装における従属的な要素を迅速に特定することができました。部門間のOKRを作成する構造は、10年間の成長と進化の中で、一般的だが誰も意図せぬ結果である「分裂されたチーム」という問題を浮き彫りにしたのです。登録者を増やすのための最初のOKRを達成すると、チームはストレッチ目標に集中し始めました。これには緊急治療に対する事務処理の削減を含むものでした。最初の失敗はすぐにサクセスストーリーとなりました。

「OKRは私にとって約3つのことを指します。OKRはチームに対して協働する良い機会を与え、意義あることを実際に進める方法を学べ、大規模な組織の中でそれぞれのシステム固有の従属関係について気づけるのです。OKRは、物事を成し遂げ、有意義な仕事のための成長基盤を構築するのに役立ちます。」

とガーグ博士は言います。

OKR:忍耐の中での試み


新しい臨床ケア提供モデルの基礎を築くことは簡単でも、すぐできることでもありません。OKRでの目標設定は、それ自体、時間とともに成長しなければならないプロセスでした。当初ケアモアの実践は、見込みを管理し、優先順位を伝えるための足場として使用されていました。ケアモアでも当初3つの州に固定で始めたモデルですが、それをスタッフに迅速に伝達させシステムを維持することは、多くの組織と同様に全体コミュニケーションを複雑にしました。

診療所医師は元来起業家の側面も持っているため、現場管理でも度々独立して機能することがあり、同様の実践を行う者との関りがないか、あっても限定的なことが散見されます。これは孤立感を感じ、継続するやる気を削ぐものです。ケアモアの臨床医は、優れたケアを提供する点と、個人としての独自性ある考えを持っていることで採用されてきました。それであっても、個々の貢献者としてではなく、チームとして効果的にコミュニケーションをとることを急速で習得する必要がありました。

ケアモアの状況を反映し、さらに多くの州に事業を拡大する上で、ガーグは真に変化をもたらすためにスタッフが団結力のあるチームになる必要があることを認識していました。

「早い段階で、私たちは最高の意志と大きな情熱を持っていました。期待と優先順位に大きな乖離があり、ここでOKRが役立つと思いました」

とガーグ博士は言いました。

全ての声には対応が必要であり、すべての責任者は進捗と説明責任について透明性を提供する必要がありました。OKRスプレッドシートを共有し、誰でもフィードバックできる環境を作ったことで、「重複」という新たな認識がもたらされ、チームがタスクを選別し、最適な責任の割り振りできるようにツールが合理化されました。

「全員がOKRプロセスに慣れるのに数四半期かかりました」

とムードリー博士は認めます。

「目標にどのレベルを設定しますか?協働関係をどのように構築し、機能している範囲をどう測定しますか?このような問いを続け、OKRを設定するという経験を通して、製品開発、分析、行動の健康、臨床運用、および症例管理に携わる同僚へのより良い理解に繋がるよう昇華させました。」

OKRの作成と計画の歩調がケアモアで揃っていく中で、スタッフのプロジェクト管理と目標設定の感覚が洗練され強化されています。ムードリー博士は次のように付け加えています。

「OKRは、全体戦略について考えることを強いています。ストレッチゴールの概念もこの一部です。これらの野心的な目標をチームとして一緒に見つめると、その可視性によって協働への道筋が導き出されるのです。」

ケアモアは、患者へのコミットメントに基づいて、慢性疾患の負担を軽減し疾患の進行を遅らせるツールを提供します。これは新しいイニシアチブや、患者のライフスタイルに合わせたプログラムの組み込み、そして患者の生涯にわたる健康を促進する新しい方法の発見を通じて行われています。OKRは、このコミットメントを明文化させ、新たな発見を追求し、行動やシステムの変化・進化を進めるための既知の障壁を乗り越えるための構造を提供します。現在までに400名以上の患者が在宅病院プログラムに登録し、登録者数は更に成長し続けています。各臨床医は必要なケアを提供し、そしてそれを自宅という快適で最適な環境で受けられるように注力しています。

ムードリー博士は振り返ります。

「私たちの活動で言えば、例えそれをOKRと呼ばなかったとしても、次世代のアイデアと発見を呼び起こすための構造と道がある。それが私がクリニックのチームと一緒に仕事をするとき私が目指していることです。」 

(Publisher: Whitney Zatzkin)

(翻訳者:石川佳那様)

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