OKRを利用し「褒める」を増やす。「とにかく指摘し合う文化」だったポテンシャライトに生まれた変化とは。
スタートアップは激しい競争の中で「成果」を生み出し続けなければなりません。しかしその戦いの最中にメンバーが疲弊し、ネガティブなコミュニケーションが増えることも、往々にして起きてしまいます。
ベンチャー・スタートアップ企業の採用支援を行う株式会社ポテンシャライトの小原さんもまた、「褒める風土がないことに強烈な課題意識を持っていた」と感じていました。
設立以来抱えていた大きな課題を解決するため、OKRを導入。メンバーが主体的に動き成果を生み出しながら、心理的安全性の高い組織づくりに挑戦し始めました。
OKR導入から3ヶ月。どのような変化が生まれたのか?
ハイマネージャー主催「OKR/1on1/CFR勉強会#4」のレポートをお届けします。
ポテンシャライトのMVV(Mission / Vision / Value)
初めまして。ポテンシャライトの小原と申します。ポテンシャライトは、次の3月から4期目を迎える会社です。従業員が23名で、そのうち11名が常勤のメンバーになっています。
事業内容としては、採用コンサルティング事業と人材紹介事業を行っています。みなさんにとっても馴染みがあるのではないかと思います。
株式会社ポテンシャライト 小原聡一さん
採用コンサルティング事業は会社設立当初から始めていて、主にスタートアップ・ベンチャー企業、資金調達をしてこれから採用にドライブをかけたい会社さんを対象にしています。少ないところだと2名から、多いと100名前後の会社さんを中心にサービスを提供しています。
僕らは「Grow Up Ventures」というミッションを設定しております。
ポテンシャライトは、代表の山根と僕で創業した会社になるんですけれども、
ベンチャーや新しい事業がとにかく好きです。そういう会社を採用という領域で支援することが喜びだったりしていて、この領域で頑張っていきたいなと思っています。
ビジョンは「ベンチャー採用/転職のスタンダードをポテンシャライトに」としています。これから頑張っていきたいベンチャー企業が、「とりあえずポテンシャライトに声かけてみようかな」というような世界をつくることが、僕らのビジョンです。
最後に、僕らのバリューは「Top Insight」「Honshitsu」「Challenge Yourself」「Impressive Speed」「Respect」です。上から重要度順に並べています。
OKRを導入したのは去年の11月くらいで、新しく今のミッション・ビジョンに設定したのが去年の秋くらい。そしてバリューは去年の年明けに設定しました。なので、OKRと並行してバリューを新しく作り直したという形になります。
ここまで会社のミッション・ビジョン・バリューについてお伝えしましたが、OKRの話の中では大事な部分かなと思って共有させて頂きました。
今日は、OKR導入前の課題感と、OKRを入れたことによってどんな行動が生み出されたか、OKRを実践した3ヶ月を振り返って見つけた課題をご共有できたらなと思っています。
「褒める風土がない」ことに強烈な課題意識を持っていた
ここから本題に入ります。OKR導入前にどんな課題があったのか、お話させて頂きます。スライドを見ていただくとわかるのですが、課題を3つ挙げさせてもらいました。
左が「ミッション・ビジョン・バリューが浸透していない」。真ん中が「褒める風土がない」。右が「個人の思いつきが会社に結びついていない」。この3つです。
OKR導入前からミッション・ビジョンはありました。あったんですけども、正直あんまり浸透していなかった。「ミッション・ビジョンってなんだっけ?」と振った時にメンバーが答えられないケースもあり、大きな課題として感じていました。特にバリューは後からできあがったものなので、当時浸透していませんでした。
そして、真ん中の2つ目は強烈に課題を感じていました。「褒める風土がない」。
代表と僕が育った環境がKPIでがっちり固めていく組織風土でした。褒められるというより、叱られながら同僚と切磋琢磨しながら育っていく文化だったことが起因しているかと思います。
ポテンシャライトも設立から1年半くらいは代表と2人でほとんどやっていて、その間はお互い褒めることはほとんどなかったですし、その後メンバーが入って10名くらいの規模になるまで、「褒める」ということがない環境でした。とにかく指摘し合う文化で、改善は進んでいくのですがメンバーが増えていく中、これが去年あたりから徐々にひずみが生まれてきたように感じていました。
そして3つ目「個人の思いつきが会社に結びついていない」。
僕らはベンチャー企業で、いつ倒れてもおかしくありません。なので各メンバーが経営支援で「主体的に動こう」という価値観を大事にしています。課題を感じたらとにかく自分で課題を提起して、解決してノウハウにして、組織に落としていく文化を大事にしています。
ただ、たまに「それズレてない?」ということがあるんですよね。自分で考えて行動しているんだが、会社の目指している方向とは少しズレたところで施策が行われてしまうことがあったので、そのあたりの管理がちゃんとできていなかったなという風に思っています。
OKRに期待していたこと
この3つの課題がある中で、OKRの導入を検討し始めました。僕らはハイマネージャーさんを通してOKRを知ったんですよね。「OKRというものがあるんだ」と知って、「HiManager」と一緒にOKRの仕組みを導入し始めました。
OKRを導入することで、それぞれの課題に対してこんな効果を求めていました。
一番上は、「ミッション・ビジョンに紐づいた会社のWillと個人のWillを同じ方向に向かせることができるのではないか?」。
OKRのチェックインをウィンセッションを通じて、ミッション・ビジョン・バリューを考えざるを得ない環境をつくったら、効果が出るんじゃないかなと。
2個目は「心理的安全性を担保することで、より生産性の高い組織を目指せるのではないか?」と。
いわゆる「心理的安全性」があるかないかと言われたら、ない組織でした。なので「心理的安全性」を担保することで、より生産性の高い組織を目指せるのではないかと思っていました。とにかく「指摘」が多い組織だったので、指摘だけでなくそれ以上にポジティブなコミュニケーションが多い組織を目指しました。
最後、3個目は「より会社の方向性にあった『0→1』を生み出すことができるのではないか」と。
組織のOKRを設定して、そこに個人のOKRを紐づけることによって、ズレを減らせるのではないか。
こんな仮説を持って、OKRを導入することにしました。
OKRを3ヶ月運用して感じる効果
実際に運用を始めてみて、こんな効果がありました。
左上の「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透」については、週次でOKRの振り返りを行うことによって、ミッション・ビジョンを嫌でも意識する状態をつくれました。
「いま会社はどの方向に向かっているんだっけ?」と考えざるを得ないので、ミッション・ビジョンが無意識にメンバーの中に入っていくようになったかなと思います。
バリューが「褒める基準」となった
右上には「褒める(賞賛)の風土の醸成」と書いたんですけれども、
バリューが「褒める基準」となったことで、「褒めること」に対しての抵抗がなくなってきました。バリューを設定し、OKRという枠組みを利用して一緒に運用することによって、「褒める」こと自体に抵抗がなくなったのかなと思っています。
ミッション・ビジョン・バリューの浸透と「褒める」ことは紐づいていると思っています。
僕らは最初、バリューがない状態でOKRを入れていました。なので、最初バリューを仮置きして称賛をしていたんですけれども、
「それ褒める軸が違うよ」ということが多々あり、バリューの重要性に気づきました。バリューがなかったら「何を褒めたらいいんだろう?」となってしまいます。それが課題感としてあり、外部の方の協力も得ながら社員全員で今のバリューを作りました。
バリューをしっかりと運用されてらっしゃってOKRを導入している会社さんは、称賛がすんなりと入れるかなと思いますし、抵抗なく称賛する風土が作りやすいんじゃないかなと思います。
会社と個人のOKRが紐づき「ズレ」が減る
左下なんですけれども「個人の思いつきが会社に結びついてなかった」と。
5名10名くらいの組織の中で、「社長なに考えてるんだろう」「昨日言ってたことと今日言ってたことが違うな…」という現象が起きることってどこの会社でもあると思うんですよね。気分で褒めることも否定することもある…みたいな。うちも例外ではないかなと思っていてました。
なので、会社の目指す方向としてミッション・ビジョン・バリューを設定して、会社のOKRを設定することで個人のOKRと結びつくので、大きくずれることがなくなりました。
先ほどのバリューと称賛の話もありましたけど、バリューを押さえられると、代表に対して「これって会社の軸に合ってますよね?」とメンバーから話をしやすくなります。
何が奨励され、何がいけない行為なのか?が明確になることで下からの意見が出やすくなる感覚があります。
最後なんですけれども「隣のメンバーを支え合える組織」。
僕らは採用コンサルとして、各人がいろんなクライアント企業に入っていきます。そうすると、割と属人的になりやすいんですよね。。他のメンバーがどういった仕事をやっていて、どれくらい負担な状態かがわからないんですよ。それがわからないと、手を差し伸べられないんですよね。
今は、チェックインの時に「あ、今は◯◯さん大変だと思うので、その内容であれば私が受け持ちますよ。」みたいな、横のシナジーが生まれているなと感じています。
OKRに対するメンバーのリアルな声
今回の登壇にあたって良い機会だなと思い、各メンバーに「OKRやってみてどう思っているか?」を聞いて、GoodポイントとBadポイントを挙げてもらいました。メンバーに許可を取っていないので、後で怒られるかもしれません(笑)。
結構リアルな意見だなと思っています。導入して良かった点は
「周りのメンバーが何をしているのか把握できる」
「会社のミッション・方向性が明確なので、自分のアクションが会社の方向とずれづらい」
これは先ほどお伝えした話ですね。
そして何より「称賛の文化ができた」。
このコメントを見て頂くと面白いんですけど、うちの組織がよっぽど称賛してなかったんだな…というのがわかるんですよね。「月曜の朝、つめる雰囲気ではなく…」って書いてあるんですよね…(笑)。他のコメントにも「称賛」というキーワードがとにかく多くて。これを見ながら、僕は若干「はぁ〜」と思っていたのですが…。
『「これができた」「これが進んだ」という肯定的な雰囲気でスタートできるので、業務スタートのエンジンという観点でも大事だなと感じる』…本当にそうだと思います。
それから「実績以外の評価や称賛につながった」と書いてあるんですが、
これまでもお客さんの採用成功ができたときに「すごい!」と褒めることは少なからずありました。それに加えて、バリューに基づいた行動が褒められることで、メンバーが褒められる機会が圧倒的に増えました。
最後にご紹介するコメントは「他のメンバーのことを見ているのが前提になるので、他のメンバーの業務にも興味関心が出てくるようになった」「他のメンバーの今の動きや会社としての方向性を知れる」。
この言葉から分かるように、横のつながりが出てきています。ウィンセッションとチェックインでこの部分が担保できている状態です。
これからのOKRの課題
より強固な組織を作るために、OKRを3ヶ月運用してきて感じている課題点としては3つあります。
1つは、「他事業でのOKR導入」を考えています。
現在、採用コンサルティング事業が、人数的には8割、そして人材紹介は2割でやっています。採用コンサルティングの事業が、KPIでガチガチ組んだ方が業務が回りやすいんですよ。なのでその中にうまくOKRを導入できないかなと。それを今考えています。
あとは左下の「適切なOKRの振り返り」。ここに課題を感じられている会社さんも多いんじゃないかなと思います。
OKRを設定したけれども、ちゃんと個人で振り返ったり、1on1でケアできているの?と考えると、僕はまだまだ甘いなと思っていて、アップデートしていかなければいけないなと思っています。
右下が「より洗練された1on1の実施」。OKRの振り返りの話にもつながってくるんですけれども、
1on1もOKR導入前から実施はしていました。実施はしていたんですけれども、ただ話を聞いているだけで、何かの改善につながっているかというと「?」がついていて。その辺りをハイマネージャーさんにアドバイスを頂きながら、進めています。
以上です。ありがとうございました。
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主催:ハイマネージャー株式会社
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