見出し画像

アドビが年次評価を廃止した理由

本記事は、以下の記事の翻訳記事です。

アドビのドナ・モリスにもたらされた、継続的なパフォーマンス管理の新しいモデルである「チェックイン」のきっかけと経緯を学べる記事です。

6年前のアドビ社の年次評価

画像1

6年前、ほとんどの企業と同様に、ソフトウェア会社のアドビは、時代遅れの年次パフォーマンスレビューを抱えていました。マネージャーは従業員1人あたり8時間を費やしており、関係者全員の士気の低下にも繋がっていました。自主退職は毎年2月に急増していました。

これは自身の貢献度に対する、パフォーマンスレビューの結果に失望した従業員が才能を他で生かそうとするものでした。全体で、同社のマネージャーは合計で8万時間(約40名のフルタイム雇用に相当)を、認識できる価値を生み出さない機械的なプロセスに費やしていました。

アドビはクラウドベースのサブスクリプションビジネスモデルに全速力で移行しており、それは勝ち続けるために必要なことでした。しかし、同社が製品と顧客関係を現代的なリアルタイム処理に移行した際にも、人事へのアプローチは過去に縛られたままでした。

HiManagerに無料お問い合わせしたい方はこちら↓

ドナ・モリスによる問題提議

画像2

2012年、インドへの出張中にアドビの幹部であるドナ・モリスは、従来のパフォーマンス管理に対する不満を募らせていました。

時差ボケによってガードが緩んだ彼女は記者に、会社は年次レビューを廃止し、より頻繁で前向きなフィードバックを優先する形のランキングを積み重ねる計画だと語りました。それは素晴らしいアイデアでした。問題は、人事担当者やアドビのCEOとまだ話し合っていないことでした。

持ち前の実行力と説得力で、ドナは会社を納得させるために奮闘しました。アドビのイントラネットで彼女が書いたように、当面の課題は、『貢献度を審査し、成果に報酬を与え、フィードバックをやり取りすることです。面倒なプロセスに統合する必要があるでしょうか?そうは思いません。

根本的に異なる考え方をする時がきたのです。 もしも「年次レビュー」を廃止した場合、代わりにどのような姿であってほしいですか?貢献をより効果的に刺激し、動機付けし、評価できるとしたら、どうでしょうか?』この彼女の投稿は、会社の歴史の中で最も活発な議論のひとつを引き起こしました。

チェックイン誕生のきっかけ

画像3

ドナの率直さは、アドビの新しいパフォーマンス管理の方法である「チェックイン」のきっかけとなりました。会社を前進させるための集合的な取り組みとして、マネージャー、従業員、同僚は毎年複数のチェックイン面談に参加しています。人事チームに頼るのではなく、組織全体のリーダーがプロセスの主体的な責任を負います。

手軽で柔軟性があり、透明性があるチェックインは、最小限の構造で追跡や事務処理を必要としません。これは、四半期ごとの「目標と期待」(アドビ版のOKRを示す表現)、定期的なフィードバックキャリア開発と成長という3つの重点領域を取り扱います。

セッションは従業員の要望に応じて開かれ、報酬とは切り離されています。決まった額の報酬を割り振るための強制的な序列付けは、年間の報酬を決めるためのチェックインに置き換えられました。

マネージャーは、従業員のパフォーマンス、ビジネスへの影響、スキルの相対的な希少価値、および市場の状況に基づいて報酬を調整するように訓練されています。決まったガイドラインはありません。

2012年秋以降、チェックインが導入されたとき、アドビでの自主退職は急激に減少しました。アドビはCFRを使用して継続的なパフォーマンス管理を実装することにより、事業運営全体を活性化しました。

ドナ・モリス:
アドビは4つのコアバリューに基づいて設立されました。誠実並外れた良さ革新的、そして関わり合い

私たちの古い年次レビュープロセスは、それらすべてに矛盾していました。だから私は社内の人々に言いました。もし評定も序列も、決まった形式もなかったとしたら、どうでしょうか?と。

代わりに、ひとりひとりが高く評価される環境の中で、自分自身に何が期待されているのかを理解しており、アドビであなたのキャリアを成長させる機会があったとしたら、どうでしょうか?

チェックインは、日々をアドビのコアバリューに基づいて進めるうえで、大きな助けとなりました。新しいプロセスがどのように機能するかを説明するために、手はじめに一連の30分から60分にわたるWebトレーニングの初回を以って開始しました。

それらを上級リーダー、次にマネージャー、そして従業員に展開しました。(従業員の参加率は90%でした。)四半期ごとに、期待の設定からフィードバックの授受まで、チェックインのさまざまなフェーズに取り組みました。

また、従業員のリソースセンターにも投資しており、従業員の建設的なフィードバックのためのスキルセットを構築するのに役立つテンプレートとビデオを提供しています。

アドビでは、率直に意見交換できるような職場を経験したことのないエンジニアも多く在籍しています。センターは彼らにとってこのプロセスを受け入れる一助ともなります。

リーダーのロールモデルとしてのチェックイン。彼らは、自身に対するフィードバックやビジョンについての質問を快く受け入れるという姿勢を示す必要がありました。

今では、すべてのマネージャーをビジネスリーダーとして扱っています。彼らには、基本のインセンティブと株式のための予算が割り当てられており、このお金のプールを彼らが適切と思うように分配できます。

このように彼らが直属の従業員に対して真に責任を負っていると理解することは、彼らを非常に力づける糧となります。従業員も、プロセスに対して働きかけがあると理解すれば、同様に権限を感じることができます。

年間を通じて定期的なチェックインをスケジュールすることにより、従業員は今後の成長に対する能力開発のニーズやアイデアとともに、それまでの面談からのアクションアイテムと目標に対する進捗状況をマネージャーに通知し続けることとなります。そして、全体の報酬額を固定で設定することをやめました。これにより、チームメイトはもはや競争相手ではなくなったのです。

個人は自分の成功を推進したいと考えます。彼らは年末まで評定を待ちたくないのです。彼らは、物事を進めている最中にも、彼らが上手くできているのか、どのようにアプローチを変える必要があるのかを知りたいと思っています。

新しいシステムでは、従業員は少なくとも6週間に1回、非常に具体的なパフォーマンスフィードバックを受け取ります。しかし、実際には毎週実施されています。誰もが自分の立場や、会社にどのように価値を提供しているかを知っているのです。遅れをとることなく、パフォーマンス管理プロセスが同時進行されています。

チェックインでのフィードバックは、多くの場合、マネージャーから従業員までですが、従業員からマネージャーに向けてフィードバックすることもできます。

「私はプロジェクトXのおかげで、一気に外の世界を知り、さらにサポートが必要だと感じました。」また、アドビは高度にマトリックス化されているため、フィードバックは仲間同士ですることもできます。

たとえば、私の部門には、コミュニケーションパートナー、ファイナンスパートナー、およびリーガルパートナーがいます。彼らは他の人々の直属でありながらも、私たちは点線で強く結ばれています。私達は、期待を審査し、私たちのパフォーマンスについて互いにフィードバックを与えます。

チェックインに必要な3つの要件

画像4

アドビの経験から、継続的なパフォーマンス管理システムには3つの要件があると思います。1つはエグゼクティブサポートです。

2つ目は、OKRに相当する「目標と期待」に示されているように、会社の目標とそれが個々の優先事項とどのように一致するかを明確にすることです。3つ目は、マネージャーとリーダーがより機能を果たすように訓練するための投資です。

決まったレールの上を走らせるために人々を送り込むのではありません。場面に応じたロールプレイによって、1時間のオンラインセッションで、次のように助言しています。「難しいフィードバックをしなければならないのならば、手順は次のとおりです。」と。

矯正するためのフィードバックは、人々にとって当然難しいものです。しかし、うまくいけば、それはあなたが誰かに与えることができる最高の贈り物でもあります。

それは、人々の考え方を変え、最も前向きで価値ある方法で彼らの行動を変えることができるからです。「知ってる?間違いは犯しても大丈夫なんだよ。それが最も成長できる方法だから。」と、人々が言える環境を作ろうとしています。それは私たちの文化にとっても大きな変化の部分です。

チェックインが明らかにするように、人事リーダーはビジネスの成功のために存在します。私たちの役割は、すべての構成員を会社の使命を果たす上で成功させる方法について、他のリーダーと相談することです。

成功は、方式や序列、評価によって構築されるのではありません。それは、人々を困らせて邪魔をするポリシーやプログラムによって動かされているのではありません。成功の真のメカニズムは、機能を構築し、人々が会社に貢献できるようにするメカニズムです。

最後に

サービスビジネスにとって、変化をもたらすことができると感じ、組織にとどまりたいと考えている従業員よりも価値のあるものはありません。離職には、巨額のコストが伴います。

最高の離職は内部離職です。そこでは、人々は他の場所に移動するのではなく、企業内でキャリアを伸ばしています。人々は放浪したいのではないのです。彼らは、自分が実際に影響を与えられると感じる場所を探す必要があるだけなのです。アドビでは、チェックインがそれを実現しています。

(Publisher: John Doerr)

(翻訳者:石川 佳那様)

・・・

さらに1on1の理解を深めたい方はこちら

1on1の概念的理解から具体的な事例までを網羅した全30ページのパーフェクトブックです。

以下のリンクから無料ダウンロードが可能です。ぜひご一読ください。

・・・
ハイマネージャー
OKR1on1フィードバック人事評価などハイブリッドワークのマネジメントに必要な機能が全て揃ったピープルマネジメント・プラットフォームHiManager」の提供、及びマネジメント人事評価に関するコンサルティングを行っています。

ハイマネージャーへの無料お問い合わせはこちら

マネジメントに活きる知見を発信しています。フォローをお待ちしています!