TSUTAYAは僕の実家だった


僕の地元でTSUTAYAが軒並み無くなってしまいしばらく経つ

僕がまだ高校生だった頃
放課後自転車を走らせてTSUTAYAに直行しCDレンタルコーナーに向かっていた

CD5枚千円
とてもキリの良い金額
CDを借りる為にTSUTAYAに行く訳ではなく
次千円使えるタイミングが来たら何を借りるか厳選する為にTSUTAYAに行くのが殆どの目的

1番の敵はタイミング悪くレンタル中な事

大体の場合1週間待てば戻ってくるのだが
悪質な前客に当たるといつまで経っても戻ってこない場合もある(実際僕の地元の最寄りのTSUTAYA美里店ではTHE BACK HORNの「THE BACK HORN」というアルバムがずっとレンタル中で結局少し遠くのTSUTAYAまで借りに行ったが結局このCDが帰ってくる事はなかった)

大体自分の聴きたいCDを厳選していくと当方田舎なもので当然聴きたいのに置いてないCDもある
その場合はそのCDを探し求めて最寄り以外のTSUTAYAを周る

もちろん一回行ってその時借りるという事はない
CD5枚千円なのだ
せっかく遠出するのだからそこでしか借りれないCDを5枚選んだ方が得策だ

という訳で最寄りでいつも行けるTSUTAYA美里店に無くて少し遠いTSUTAYAにあるCDを確認する為にTSUTAYAを往復
今考えるとそれって逆に非効率なのでは?とも思うのだがその頃の僕は何の疑問もなくそんな活動を続けていた


さてそんな非効率の塊の活動をしてCDを5枚厳選して借りて家買って聴いて終わりではない

借りたCDをCD-Rに焼いて
残す必要がある
当時パソコンが無かったので
パソコンが家にある友達の家に行ってCDを焼きに行っていた
太々しいにも程があるが
その友達も僕も特に気にも留めなかった

その友達の家で「じゃ今日もよろしく」という事で当たり前のようにパソコンを借り
CDを取り込む

その間も結構時間がかかる
その間友達とおしゃべりして時間を潰す、、、という訳ではなくここがTSUTAYA活動の本番
次借りたい音楽を探す為にYouTubeで新しい音楽漁り

その友達も僕に一切関与せず黙々とゲームをするだけ
それって友達なのか??今ではそう思うが
部活やバイトも特にせずダラダラ青くもない青春を送ってた学生時代の繋がりなんてそんなものんで
当時は何の疑問もなくそんな生活を続けてた


大学生になりパソコンがある友達の家に行く必要が無くなった

大学内にパソコンがあったし
暫くしてバイト代でパソコンを買ったからだ

そしてなりより高校時代と大きくTSUTAYA活動で変化したのは車を持つ事で自転車で行けなった那覇シティのTSUTAYAにいける事だった

今でも残っているTSUTAYA新都心店
品揃えは田舎者の僕のちゃっちい想像力を遥かに超えていた
そこで気になっていたけれど手を出せていなかったsyrup16g、ART-SCHOOL、eastern youth、bloodthirsty butchersの音源を聴けた
これが僕の今後の音楽性のトドメだった

いつしかTSUTAYA新都心店に行き爆借りする事が僕の給料日のハレの日となった

運良くTSUTAYA新都心でバイトしている大学の同級生がいて「あのバンドのあのCDって置いてたっけ?」と聞き「多分あるんじゃない?」という会話などをして高校生の時と同じく厳選してたし
返しに行くのは億劫なのでソイツに借りたCDを渡して返しといてーなどしていた




TSUTAYAは僕の実家だ



TSUTAYAは田舎者と貧乏人に唯一与えられるエンタメとの出会いの場
田舎者と貧乏人のダブルパンチの僕は
10代〜20代前半はTSUTAYAが全てだった
サブスク時代の到来まではそうだった



もちろんサブスク時代到来後に出会って大好きな音楽も沢山ある
でもTSUTAYAが全てだった頃出会った音楽には懐かしくて愛おしくてたまらない「TSUTAYAの匂い」がする
あの頃の出会いの想い出には勝てない


スピッツの「三日月ロック」
TSUTAYAで借りてすぐ家で聴いた「夜を駆ける」のイントロに心が包まれ、涙が止まらなかった日のこと


oasisが聴きたくて「入門は絶対モーニングローリーってやつらしい」という情報をもとにTSUTAYA美里店に行ったらタイミング悪くレンタル中だったので遠くに行く気力よりも先に聴きたい衝動が勝ち仕方なく借りた「Be Here Now」
この曲の一曲目の「D'You Know What I Mean?」が刺さり虜になったこと

最後の5枚目が特に無く
何となしに借りたくるりの2枚組のベストが
後に買い直す程人生の名盤になった事


新都心店でeastern youthのCDを借りたら中身が「Acid Black Cherry」で
取り替えてもらったけど
「イースタンとAcid Black Cherry同時に借りた人が居るんだ」と思ったこと



音楽の事だけピックアップして記したがもちろんいろんな映画をレンタルしたしお笑いDVDもレンタルした
ギャグマンガ日和のアニメもレンタルした


僕はバンドを自分で続けてる上で色んな音楽に影響を受けてきた

ただ、結局あの頃聴いてた「TSUTAYAの匂いがする音楽」から受けた影響が軸になっている
それでこれがブレる事は今後も無いだろう



2023年10月末
僕の実家
TSUTAYA美里店が閉店した


もうすっかり実家に寄る事なんて無くなっていたけれど
最終日に立ち寄った


僕の部屋であるCDレンタルコーナーはかなり恥に追いやられ縮小されてしまっていた
何となくあの頃のようにCDを物色してみた


色んなTSUTAYAを回ってみて感じていた
「意外と美里店も田舎の割には充実してた」という僕の総評が圧倒的に顔負けで寂しくなっていた


何となくこれもこれもサブスクにあるしなーとか思って探していたら見つけた
GO!GO!7188の「569」というアルバム

このアルバムは未だにサブスクに上がってない上、僕が大好きな「脳内トラベラー」という曲が入っている

閉店セールという事で50円で購入した
今ではほぼお金を落とす感覚なく音楽を聴いているのに50円という価格に悲しくなった


GO!GO!7188の「569」
おそらく人生で最後に購入した
レンタル落ちCD



実家は死際の際に
最後の土産に僕に音楽の出会いをくれた

という訳で実家が取り壊された直後は喪中という事で書けなかった
この文章は僕のTSUTAYAへのレクイエムです


本当にありがとうTSUTAYA
僕を作ってくれて

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