なぜ有償クライアントがとれないのか? 誰もが悩む「コーチの営業」
最初の壁となる「有償クライアントの獲得」
力のあるプロコーチたちの活躍、貢献で個人・法人問わずコーチングの正しい認知も広まり、今や日本でもアメリカ同様、経営者やアスリート、会社組織やスポーツチームが専属のコーチを持つことがスタンダードとなりつつあります。
アメリカから日本にコーチングが上陸して、およそ20年になろうとしています。そしてこの間、国内でコーチングを普及させるべく、複数のコーチングスクールができ、比例して数多くのコーチが誕生しました。合わせて、プロコーチとしてコーチングを生業にしていきたいという人も年々増えています。
しかしその一方、多くのプロコーチになりたいというその志の数に対して、実際コーチングで生計を立てることが叶っているコーチの数は、決して多くないのが実情です。プロコーチとして生計を立てられているその数は、コーチ全体の1~2%に過ぎないとのデータもあります。
力のあるプロコーチが多い私の周りをみても、この数字は遠く外れていないと感じます。
多くのコーチたちがコーチング業を軌道に乗せることができず、迷い、苦しんでいます。素晴らしいコーチングスキルを持ちながらも、諦めてしまうコーチを何人も見てきました。なぜこんなことが起こってしまうのでしょうか。
存在しないものへの恐れに気づく
営業のプロフェッショナルである営業マンがしていること、それは自分(自社)の扱う商品やサービスの価値と見込客への将来の貢献度を理解していただき、感じてもらい、合意の上で売買契約を結ぶこと。目的は「売買契約を結ぶこと」です。
その目的を成し遂げるために、
見込客のニーズを聴き、営業マンが感じた先方の潜在・顕在含めた課題とその対策案の提案すること、商品やサービスの価値を伝えること。そして時にウォンツを喚起するアクションをすること、その一連の流れの中で信頼関係を築き、その目的を達成する、これが営業の仕事です。
つまり、“営業”とは契約を目的としたこの一連のフローのことを指し、“営業”とはその職種名であって、アクションそのものではないのです。
その一連のフローの中には、「聴く」「伝える」「喚起する(気づき)」そして「ラポール形成(信頼構築)」という、コーチのみなさんが特化してトレーニングしてきた得意なアクションがあるだけなのです。
しかし、多くのクライアント獲得に苦しむコーチたちは、「営業をかける」という存在しないモノに恐れ、そして「営業をかける相手」の反応に恐れ、ベクトルが自分に向いたコミュニケーションで契約に至らしめようとしていることに気がつけていないだけなのです。
故にその『営業活動』に大きな心的ストレスを感じ、期待する結果も得られないでいるのです。
つまり、ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいる状態なのです。
恐怖心からくる無意識の行動に気づく
多くの“営業”を恐れるコーチたちは、恐れるがゆえ無意識に、「きつく断られなさそう」「変に思われなさそう」「話しやすそう」「コーチングが機能しそう」などといった、自身の恐怖心を和らげる視点で見込み客をリストアップしています。
コーチングは万人に対して貢献し得るものにも関わらず、自分の恐れを軽減する視点で取捨選択し、リストアップしてしまっているのです。
この視点でリストアップすることは、同時に“至って欲しい結果”、“期待する先方の反応”を強くグリップしていることでもあります。然るに、「それが叶わなかったら嫌だな…」「思っていた反応と違ったらどうしよう…」「人間関係が壊れたらどうしよう…」という恐れも必然的に手に握りしめているのです。
この状態では、相手にだけベクトルを向けたいつもの素晴らしいコミュニケーションをとることはとても困難です。素晴らしいコミュニケーションスキルをもっているのに、機能しない。実にもったいない状態です。
コーチが営業マンになる必要はない
日頃、私はプロコーチを目指す教え子たちに、「営業をかけるのではなく、ただただコーチングをしなさい。目の前の人の絶対的味方になり、心から寄り添いなさい。本当になりたい姿を気づいてもらいなさい。」と言っています。
大切なのは、プロコーチであり続けたいのであれば、日常すべての人との関わりにおいてコーチであり続けることです。
私の長年の営業経験、そしてプロのセールスコーチの経験上、強く断言します。
世の大多数の営業マンより、コーチの方が契約をとることに長けています。
(余談ですが、世のトップ営業マンと呼ばれる人たちは営業場面において、意図的・意図的でないに関わらずコーチングスキルを使っています。)
まずは今この瞬間から、恐れるべきでない、そして存在もしない“営業”への恐れを手放してください。安心してください。コーチはコーチのままで良いのです。営業マンになる必要はありません。
いつものセッション同様、ただただ目の前の人、すべての人に心から寄り添ったコーチングをしてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?