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なぜキャラクター版権モノのボードゲームがあんまり大ヒットしていないのか

こんばんは!
『なぜ○○は✕✕なのか』というタイトルには“○○は✕✕である”という主張を無根拠に受け入れられる効果があるってことで多用され過ぎて、正直もう通用しないと思っている大塚健吾です。

改めまして、ボードゲームデザイナー・放送作家をしています。
『理想の納豆』 『行けたら行くよ!』 『ギリギリカレー』『ブックメイカーズ』そして、『シノミリア』を作りました。

キャラクター版権もの(いわゆるIPもの)のボードゲームの話です。
なのに、トップ画像がいらすとやさんなのが悩ましい。

自分にはあんま関係ないって思う人が多いテーマでしょうが、メインテーマはボードゲームの性質についての話なので、最後まで読んでいただけたらうれしいです。

まず、記事のタイトルについて。
そもそも、キャラクター版権モノのボードゲームが大ヒットしていないって言うけど実際どうなのってとこについて。

もちろん作品によってまちまちなんでしょうけど、僕が持ってるデータで、ざっくり販売数だけで言うと、一般的なボードゲームの平均的な販売数で言ったら10倍~20倍は普通にあります。

ただ、“大ヒット”の定義が重要で。

それらが例えばボードゲーム会で、どれだけ遊ばれてるかって、なんなら、1000個も作られていない同人作品よりも少ないんじゃないでしょうか。

なので、キャラクター版権もののボードゲームって意外と難しいです。
めちゃくちゃ考えて作らないといけないものです。

コレは特にボードゲームだからこそって話で。
デジタルだとむしろこんなん言われていたりします。

デジタルだと強いキャラクター版権モノがボードゲームでは単純にはあんまり強くないって理由が2つあって。

1つ目はマーケティング的な理由
2つ目はボードゲームの性質に関わる理由

で、どっちも、その理由について理解して、きちんと対応していけば、
キャラクター版権モノのボードゲームはめちゃくちゃ大ヒットするんじゃないかと思っています。


1.マーケティング的な理由

ターゲッティングとかそういう話です。

いろんな企画書とかボードゲームの紹介文に雑に書かれるコピーで、
“老若男女誰もが一緒に楽しめる!!”
みたいなのありますけど、
コレ、基本的には、あんまり良くありません。
(拙作『理想の納豆』には書いてあるけど)

“オールターゲット”って要は
「すいません!ターゲッティングとか何も考えてないです!」
って言ってるのと同じとこありますからね。

ターゲッティングの重要性を示すものとして、教科書的なのに必ず書いてある話が。

例えば、この世界には
白いTシャツが好きな人が50%
黒いTシャツが好きな人が50%
いるとして。

で、雑に“オールターゲット”を打ち出す人がやりがちな商品開発として、
“グレーのTシャツ”を作ってしまう。
結果、どちらにも興味を持たれない。

……みたいな話があって。

キャラクター版権モノのゲームってボードゲームデザイナーとして、というよりもファンとして、そういうグレーのTシャツに見えることが多々あります。

コレも実体験として挙げるのがこちら。

『アンパンマンふりかけ』
この商品にはアンパンマンの要素と、ふりかけの要素があって。
『アンパンマン』ファンと『ふりかけ』ファンという2つの層から購入されるので、他の作品よりも圧倒的に大きな市場を持つ!
……ってわけでは別にないんですよね。

個人的にはアンパンマンにもふりかけにもどちらにも本気じゃないように見えてしまいます。

めっちゃ黒い服とか、すげぇ白い服とか、アニメ『アンパンマン』戸田恵子さんが演技プランをメモっている台本とか、永谷園が1袋1,000円のふりかけ作ってみました。
とか、そういうのには興味持ちますけど、どうしても中途半端な印象を受けてしまいます。
(※とはいえ、この『アンパンマンふりかけ』はちゃんとメインターゲットの子供には刺さるように作られてますよ)

松本人志さんの『遺書』だったかな。
「『仮面ライダー』は仮面ライダーの絵が描かれた『仮面ライダーシューズ』なんて履いていない。だからその靴は欲しくない」
って話も一緒ですね。

面白いボードゲームは欲しい。
原作の魅力を伝えるグッズは欲しい。
けれど。って話ですね。

ちなみに最近印象的だった作品はこちらで。

こちら、適正価格のほぼ倍の価格にも関わらず、Amazonのボードゲームカテゴリでかなりの期間1位であり続けました。

ターゲッティングとしてかなりキッチリ『鬼滅の刃』振ってる戦略の成果であることは間違いありません。

もうだって、『鬼滅の刃』と『ドンジャラ』はもう何にも関係ないですからね。

学ぶことが多いです。


……が!!
コレで納得するのはなんか賢い経営コンサルタントみたいな人で。
僕の職業はボードゲームデザイナーですからね!
声を大にして「いやいや、それは違うぞ!」って言わなきゃいけません。

コレね、重要なのは太字で書いた“どちらにも本気じゃないように見える”ってところで。
そうじゃなきゃいいんですよ!
要は、全てに本気であるってことが伝わればいいんですよ!!

矛盾でもなんでもなく、めっちゃ白くてめっちゃ黒いTシャツとか作れたら全員に売れます!
なんか、ほら、「影が強いほど光が際立つように!強い黒と強い白があるからこそ、このTシャツは最高なんだ!」とか言ってやったらいいんすよ!

アンパンマンふりかけだって、それこそ、『前田建設ファンタジー営業部』のように、『アンパンマンの味を完全に再現したふりかけ』とか面白そうじゃないですか。
多分あんこ味のふりかけは珍しいし、それで美味しく仕上げたらふりかけファンも熱狂する作品になります。

重要なのは、もう、ただ一つです。

“原作愛”(+ボードゲーム愛)

それさえ強く持って、作品に盛り込めれば、絶対に間違いなきものになると思っています。
んで、それは必ず人に伝わります。

以前からそんな風に思っていました。
で、今回この記事を書くにあたって軽く調べたところ、松山洋さんが10年以上に前に同じような内容を語っていて。
とても心強くなりました。


2.ボードゲームの性質に関わる理由

……はい。
まだ終わりじゃないんですね。

むしろ、こっからが重要です。

ここさえクリアできれば、最高のキャラクター版権モノのボードゲームが作れると思います。

【ヒント】
“ギャンブル漫画の主人公のようなボードゲーム体験”『シノミリア』作者の僕がもし『賭博黙示録カイジ』のボードゲーム作ってくれと依頼されたらどんなんを作るでしょう?


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