東大(理科II類)に現役で受かるまでにお世話になった参考図書(英語編)

 この記事は私(高校1年時の偏差値は60ちょい)が、なるべく学校に頼らずに東大理IIに受かるまでの過程でお世話になった参考書をまとめたものです。

 はじめにおことわりしておきますが、私は問題演習の量が、他の東大生に比べて圧倒的に少ないです。それは、私が長編小説の執筆を趣味としており、それが程よい訓練になってくれていたためと考えられます。”私の頭が特別に良かったから”とか、”やり方が優れていたから”という理由ではありません。(ですので、あくまで参考までに読んでいただけるとありがたいです。)

出発点

 私は中学二年生の秋に、実用英語技能検定(いわゆる英検)の二級を取得しました。それまでは学校の授業をボーッと聞き、課題を黙々とこなし、テスト勉強を真面目にやるだけでした。独学を始めたのはその後のことです。ですので、この記事は、「英検二級なら受かる/受かった」という人に向けて書いているつもりです。

全体

・英単語
・英文法
・リーディング
・リスニング
・ライティング
・スピーキング

の順に整理していこうと思います。

英単語

 私は駿台文庫の”システム英単語”しかやっていません。この単語帳は以下の点で、非常に使い勝手がいいと思います。

☆例文が非常に短く、丸暗記が可能である。

 単語の意味は、文の中に組み込まれることで決定します。その”前後”を必要最小限かつ頻出のフレーズで取り出す、という工夫をしてくれているのがこの単語帳です。他の単語帳は例文が長くて覚えづらく、どうしてもワード単体での暗記になってしまいがちです。(例えばrun = ”走る”、など。しかし、実際にはrun a risk = 危険を”冒す”、run a restaurant = レストランを”運営する”、など、文脈に応じて意味は変わります。それら前後とセットにして丸暗記してしまった方が応用が効きます。また、後に説明しますが、リスニングやライティング、スピーキングにおいても有利になります)

 というわけで、私がオススメする単語帳は、システム英単語一択です。唯一の難点は、この単語帳のBasic版と通常版(簡単なものと難しいもの)の中身が半分くらいずつ被っていることでしょうか。ちなみに、私はそれでもBasic版と通常版の両方を購入して使いました。すでにBasicレベルの単語は全部知っている、という人は通常版だけ買えばいいかと思います。

他の単語帳

 この他にも先輩や友人などから何冊かの単語帳を譲り受けました。英検に特化したものや、東大に特化したもの(いわゆる”鉄壁”)などです。しかし、私はこれらにほとんど手をつけないまま東大のG1クラス(上位10%)に受かりました。極めるならば、システム英単語だけでも十分かと思います。”極める”とは、単語帳の中に出てくるフレーズを全て丸暗記してしまう、ということです。

英文法

 前述しましたが、私は中二で英検二級を取得していましたので、大学受験に必要な英文法の知識は一通り身についておりました。ですので、高校時代にやった英文法の勉強は、日本の入試英語に独特の”重箱の隅をつつく系”の問題への対策が主です。
 その際に、最もお世話になった問題集が”vintage"です。私はあまり細かい問題が好きではなかったので、最後までやり通してはいませんが、受験の際にはけっこう役に立ってくれたなぁ、と思います。

 また、時折、「なんだこれ??」という文に遭遇することがありましたが、そういう時には”フォレスト英文法”を辞書のように使いました。

 その他、読み物として面白かったものを挙げておきます。直接、点数に結びついていたかどうかは判然としませんが、私は読んでおいて良かったな、と思います。(少なくとも、塾講師として英語の授業をする際には役立ってくれています。)

一億人の英文法

 この参考書の良し悪しを言葉で表現するのは難しいのですが、はっきりと言えるのは、”すでにある程度の英文法を修めた人向けである”ということです。その意味で、”一億人の”と銘打つのはいかがなものかと思ったりもします笑
 日本の受験英語は、明治時代に翻訳マシンを大量に養成しようとしていた頃の名残で、どうしても”形式主義”に傾倒していると感じます。正確さ・厳密さを偏重したがあまり、外国人の前でお地蔵さんのようにフリーズしてしまう英語教師の多いこと、多いこと、、、
 実際に外国人と話すときには(私は外国人向けのフードツアーのアルバイトをしていました)もっと雑で、適当でもいいので、言葉が出てくることの方が大事です。

 ”一億人の英文法”は、”内容主義”です。それゆえに、受験勉強に対してはあまり有効ではないかもしれませんが、語学学習の本筋に立ち返った時、(近年の受験英語は、そちらに向かいつつあると思います。)この本は非常に優れていると感じます。(何より、読んでいてけっこう楽しいです。語り口調がムリ、という人も多いようですが^^;)
 ちなみに、付属の問題集も売られていますが、こちらは先出のvintageの縮小版みたいなものなので、購入の必要はないかと思います。(私は買っちゃいましたが、ほとんど開かないまま後輩に譲りました。)

リーディング

 どの英語の先生も口を揃えて言うことかと思いますが、とにかく、英文に触れた”量”が重要です。よく、勉強は”質”か”量”か、という話題が持ち上がりますが、英語は圧倒的に”量”に重きをおくべきと思います。(ちなみに、数学や物理は”質”だと思います。)

 ですので、自分の興味があるものであれば、なんであれ読んだ方がいいと思います。その時に重要なのは、あまり背伸びをしないことです。童話でも、好きな俳優の日記でも、ゴシップ記事でも、なんでもいいのでとにかく読む。(私の友達には英語で書かれたエッチな小説を読んでいる人もいました。英語の成績は私よりもよかったです)

 その際に意識すべきことは、とにかく、「英語モード」と「日本語モード」を切り替えることです。英語の文章を読んでいるときには、あまり日本語の文章を目にしない方が良いのではないか、と私なんかは思います。知らない単語に遭遇しても、なるべく意味は類推することにして、調べるのは後回しにする方が良いでしょう。(もしくはlong manのような英英辞典を参照するに留めます。)

 私は、その辺の分野の専門家でもなんでもないので、科学的根拠で以って説明することはできないのですが、私個人に関して申し上げれば、その”切替”の感覚を掴めるようになってから、一気に読字スピードが上がりました。

 では、おすすめの小説を三つだけ紹介させてください、、、(読み飛ばしていただいても結構です^^;)

Travis Thrasher『Solitary』

 両親の離婚をきっかけに、シカゴから田舎町のSolitaryに引っ越して来た高校一年生のクリスは、転校先でジョセリンという女の子に出会う。その子の抱えた後ろ暗い秘密は、町全体の闇と繋がっていた、、、
 日本語訳がまだ出ていないので、もし僕が作家になれたあかつきには、是非とも翻訳させていただきたいシリーズです。中高生向けに書かれていることもあって、文章は平易で読みやすく、程よく捻られていて面白いです。いつだったか忘れましたが、この小説の書き出し部分が駿台の東大実践模試に出題されたらしいです。(つまりは、受験勉強にも結構使えるのではないでしょうか??)

She's beautiful.
 She stands behind tow other girls, one a goth coated in black and the other a blonde with wild hair and even wilder smile. She's waiting, looking off the other way, but I've already memorized her face.

(彼女は綺麗だった。彼女は二人の女の子の後ろに立っていた。一人は真っ黒なゴスロリファッションに身を包んでいて、もう一人はワイルドな髪型をした——そして、さらにワイルドな笑顔をした——金髪の子だった。彼女はそっぽを向いて何かを待っていたのだが、僕はもうすっかり彼女の顔を覚えていた。)

J.D. Salinger『The Catcher in the Rye』

 言わずと知れた名作。私ははじめに野崎孝の訳で読み、惚れ込みました。その後、原著を読み、村上春樹の訳も読みました。
 先ほどのSolitaryと同じく、主人公は高校一年生くらいの男の子です。退学になって男子寮から飛び出し、実家に帰り着くまでの三日間の出来事を、語り口調で書いたものです。挑発的な書き出しが、僕は好きです。ちょっとイラッとしますが笑

If you really want to hear about it, the first thing you'll probably want to know is where I was born, and what my lousy childhood was like, and how may parents were occupied and all before they had me, and all that David Copperfield kind of crop, but I don't feel like going into it. In the first place, that stuff bores me, and——

(もし本当に僕の話が聞きたいってんなら、君が最初に知りたがるのは、僕がどこで生まれたのか、とか、僕のしょうもない子供時代がどんなんだったのか、とか、僕が生まれる前に両親がどんなことをやって来たのか、とかなんとか、そういうデビッド・カッパーフィールド的なあれこれなのかもしれないけれど、僕はそんなことを話したい気分じゃないんだ。第一に、そんなのは退屈だし、——)

F. Scott Fitzgerald『The Great Gyatsby』

 個人的な見解ですが、フィッツジェラルドの書く小説はむしろ”詩”に近いように感じます。とにかく、音韻やリズムが優れていますので、できれば英語の原著に触れていただければと思います。(そことのころを頑張って村上春樹氏は訳してくださっているようですが、やはり、原著読まなければ分からない素晴らしさもあります)
 この作品は、ラストから引用することにしました。

So we beat on, boats against the current, born back ceaselessly into the past.

(ゆえに我々は抗うのだ。流れの中にあるボートのように、絶え間なく過去へと押し流されながらも。)

 リズムや音韻の良さが伝わりますでしょうか??Bの音が連続し、最後、Pになります。それが、まるで一編の詩を読み終わった後のような、浮遊感をもたらします。最後の単語で、スッと、現実に優しく着地させてくれるような、そんな読後感を与えてくれるわけです。

 他にも紹介したい小説はたくさんあるのですが、私の趣味に寄りすぎてもいけないので、このくらいにしておきます笑

リスニング

 リスニングは、内容が聞き取れてさえいれば何の引っかけも捻りもなく、当然のように正解が選べる、という問題が多い印象です。ですので、問題演習を数多くこなすことに、あまり意味はないのではないかと思います。(ただし、東大の二次試験は一つのパラグラフが非常に長いので、それなりに訓練を積んでおいた方がいいのかも知れません。)

 私個人に関して申し上げれば、センター試験と二次試験の両方で満点をとっていますが、特に問題演習をやっていません。(せいぜい模擬試験や、過去問数年分くらいです。)
 その代わりにやって来たのは、洋楽やオーディオ・ブック、講演会の録音などを繰り返し聞いて来たことです。特に私は洋楽が好きで、たぶん百曲くらいは歌詞を丸暗記してるんじゃないかと思います。それで、けっこう聞き取れるようになるものだと思います。the Beatles, maroon5, Backstreet Boys, Katy Perry——挙げればキリがありません。(そのうち、noteでちびちびと好きな洋楽についての記事を書いていこうかな笑)

 というわけで、ご紹介できる参考書は一冊もありません、、、^^;

ライティング

 冒頭にて「なるべく学校に頼らずに」と書きましたが、この分野に関しては、私はけっこう学校に頼っています。エッセイのようなものを英語で書き上げ、それを添削してもらっていました。ときには俳句も作っていました。(音節の数を揃えます)

※ただし裏技あり

 この分野は、一人でこなすのは難しいのかも知れません。ただ、いくつか文章の塊を丸暗記しておけば、題材に応じて少しいじるだけで立派な作文(らしきもの)が書けたりもします。東大の二次試験の筆記では、そんな漠然としたテーマの作文がちょくちょく出題されますので、準備しておいて損はないんじゃないかと思います。

 特に環境問題に関する、30 ~ 50語程度のパラグラフを丸暗記しておくと非常に便利です。その理由を、2019年と2017年の英作文の出題を例に説明します。

2019年 東大二次試験 2(A)より

「新たに祝日を設けるとしたら、どのような祝日を提案したいか(60~80語)」

 ここで、

「私は”地球環境デー”なる祝日を提案する」

と書き始めるわけです。そこから先は、

「なぜなら環境問題は深刻で——」

 というふうに、すでに丸暗記しているパラグラフに接続することができます。そうすれば1から文章を捻り出すよりもずっと早く、楽に、正確に書くことができます。それでは、もう一つ、応用例を。

2017年 東大二次試験 2(A)より

「2(A)自分が試験を受けているキャンパスについて気づいたことを述べよ(60~80語)」

「電気がつけっぱなしだ」
「暖房にムラがある」
とか、そんなポイントを挙げて、環境問題に接続すればいいわけです。その上で、「これはけしからん」とかなんとか、結論めいたものにつなげる。

 あまり大ぴらには言えませんが、この裏技はけっこう使い勝手がいいと思います。環境問題は、世の中のありとあらゆるものに結びついている(だって、”環境”ですからね^^;)ので、大抵の作文のテーマに連結可能です。

 その他、全体の構成等を含めたパラグラフの書き方を説明した参考書にも目を通しておいた方がいいかと思います。Introduction, Body, Conclusionと分けてそれぞれ訓練するやつです。(私はやっていません、、、)

スピーキング

 私は特に”スピーキング対策”を銘打った参考書を読んでいません。また、大学入試においても、スピーキングは一切関係ありませんでした。ですので、この分野については特に書けることがありません。わざわざ章を設けといて、申し訳ないです。

 ただ、これまでに書いて来た、

・ミニマム・フレーズの丸暗記
・好きな洋楽の丸暗記
・いくつかのパラグラフの丸暗記

を組み合わせれば、即興でもそれなりには話せるものだと思います。少なくとも、外国人向けのフードツアーのガイドをしていた頃の私は、そんな感じで頑張っていました。

 せっかくここまで読んでいただけましたので、私なりのコツを申し上げさせていただくなら、とにかく、困ったときには脊髄反射的に" It is 〇〇"と言い切ってしまうことです。そう発音している間に、次の言葉を探します。

"It is fabulous to/that □□——"

 こんなふうに、とにかく言葉を捻り出して、間を持たせつつ、単語をつなげていきます。そうするうちに、ちょっとずつ話せるようになっていくものなのではないでしょうか??^^;

まとめ

 以上、最後までお読みいただきありがとうございました。かなり、普通のやり方から外れているかもしれませんが、役に立つ情報がありましたら、拾って活用していただけますとありがたいです。
 繰り返しになりますが、英語は圧倒的に”量”に傾倒した科目だと思います。とにかく、触れる機会を増やすことが重要だと思います。

 興味を持って接することができる”何か”を介しつつ、日本のちょっと特殊な入試英語の事情にチマチマと合わせる、というやり方が最も効率がいいと思います。

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