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『& Juliet』(&ジュリエット)陽キャすぎる舞台が世界を救う

12/27 14:00
Stephen Sondheim Theatre

【ニューヨーク2022①】
ロンドンで2019年に開幕したヒット作が10月にブロードウェイ上陸。1本目は何か明るく元気な作品を観ようと、『K-POP』と『& Juliet』のどちらかにするか迷っていたら、『K-POP』は突然のクローズ。というわけでソンドハイムシアターへ。

ブリトニー・スピアーズやケイティ・ペリー、テイラー・スウィフトらへの楽曲提供で知られるヒットメーカー、マックス・マーティンの楽曲を散りばめたジュークボックス・ミュージカル。この形態は『マンマ・ミーア』のあと乱発されてことごとく敗れ去り、以降は『ジャージー・ボーイズ』のように楽曲を手掛けたアーティストそのものを描くパターンの作品が増えていたが、『& Juliet』はジュークボックス・ミュージカルの可能性を改めて証明した。

そしてタイトルが示すように、この作品は『ロミオとジュリエット』を改変したもの。『Romeo & Juliet』と書けばタイトルの意図が良くわかる。もしジュリエットが、ロミオの後を追わず新たな人生を歩んだら・・・?という「別の世界線の後日談」を描く。

導入は若者たちが『ロミオとジュリエット』の上演準備を進めている場面から始まり、1973年の映画「ジーザス・クライスト=スーパースター」を思い出させる。ジュークボックスで、劇中劇で、一種のパロディーで・・・といろんな演出の「型」をぎゅうぎゅうに詰め込んだバラエティーに富んだ舞台だ。

同時に「女性はもっと自由に生きられる」というメッセージを中心に、さまざまなテーマを含んだ作品でもある。そして観ているうちに、女性だけにとどまらず、いまだ多くの人を苦しめている各種の内的抑圧からの解放を高らかに歌った賛歌、応援歌にも見えてくる。

こう言うと、またダイバーシティの話か、ブロードウェイはこればっかりだな、と辟易する人もいそうだ。その見方には賛同しかねるが、もしそういう発想の人だったとしても、この作品はたぶん楽しんでもらえる。何しろ、そうした演出の妙やメッセージ性をはるかに凌駕する、徹底した「明るさ」がこの作品の魅力だ。音楽も、セリフも、衣装も、照明も、とにかく明るい。残念ながら英語のニガ手な自分は笑わせるセリフをほとんど理解できなかったが、大笑いしているまわりの観客につられて笑っていた。また洋楽に詳しい人には「ここでこの曲使う?!」というジュークボックスならではの笑いも盛り込まれていた。

ちょっと引いてしまうほどの陽キャすぎる舞台。だがこの2年半、縮こまって生きてきた人類にとってこの明るさは救いだ。掛け値なしに楽しい、この作品を1本目に選んだのは大正解だった。

『& Juliet 』公式サイト
https://andjulietbroadway.com/


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