デスクの上には今日もお吸い物

とある企業で働いていた時の話。向かいのデスクに座っていたのは社会人2年目の後輩。

相手先との電話での会話が聞こえる距離感である。その後輩は社会人2年目ということで、慣れない敬語を頑張って使おうとしていた。

ある時から突然、私のデスクに"お吸い物"が運ばれてくるようになった。「お出汁は何だろうか?煮干しかな?カツオ節かな?昆布かな?味噌というのもあり得るな。」そんな事を考えるのである。

まだ飲みきりもしないのに、次のお吸い物が運ばれてきた。「次は何のお出汁だ?一緒なのか!?」デスクのスペースも限りがあるので、これ以上持ってこられても作業効率が落ちてしまうのが気掛かりだ。

ほどなくして、また次のお吸い物が運ばれてくる。「いや、どんだけ持ってくるねん!?」デスクの上もお吸い物がかなりの面積を占めるようになってきた。

ハッと気づく。向かいの後輩が慣れない敬語で電話の相手先と会話をしている。

後輩「・・・メールをお出ししておきます。・・・」

私 (お出し!?おだし、・・・お出汁!?)

お吸い物を運んで来ていたのは向かいのデスクの後輩だったということが分かった。

指摘してあげるのも優しさかもしれないが、自分で気付かせてあげることが本人の成長のためかなと考えつつお出汁を飲むのである。お出汁が出なくなる日を楽しみにしておこう。

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