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千葉雅也『ツイッター哲学—別の仕方で』を読んで

はじめに

 千葉雅也『ツイッター哲学——別の仕方で』 (河出文庫)を読んだので感想を書きます。文庫で安いし持ち運びも楽です。一つの文章が140字以内なので読むのを再開しやすいのがいいですね。本質を突いたと思えば特異な観点も140字で書いてあり、刺激になりました。

『音楽』

 「リトルネロ」としての音楽の「領土化」機能。
 志村けんが自著でコントのBGMはいくつものシチュエーションを演じるコント番組では一発で状況を伝える重要な役割があると言っていた。演者に対しても効果があるらしく現場で流しっぱなしでやることもあったらしい。
 音楽によってその空間が切り取られて意味付けられる。

『遅延の劇』

「プロレスとは、男同士のセックスを回避し続ける遅延の劇に他ならない。」
 総合格闘技で寝技が下手くそな選手同士のグラウンドを見ているときを思い出す。ガードポジションをうまく崩せず息を荒げながらただ密着してただ時間が過ぎていく。プロレスが「劇」なら総合格闘技はなんだろう。「ライブ」とかかな。
 北野武がインタビュー本でほとんどの映画が前戯でしかない旨のことを答えていたのを思い出した。これを読んでから映画を見ると途中で前戯映画だと気付いてしまいだめになる。その点、パシフィック・リムはよかった。
 世界は前戯でしかない。

『ドライ』

 スタミナ源たれはドライ。ベル焼肉のタレは甘い。ステーキ宮のタレはドライだった。

『教育』

「……狂人の妄想にも内的論理がある。詩人の自由連想にも内的論理がある。」
 「内的論理」というフレーズがいい。思いやりでも、相手の立場になってみるでもない点が。
 一度、相手の「内的論理」を探って潜ってみる。それから離れて論理的に組み直したものをぶつける。その過程が重要だと思う。もちろん、そんなことをする意味がないものも当然ある。

『抽象性』

 日本酒の抽象性。
 日本酒の抽象性というより米の抽象性に行き着く。果実と比べて量的に捉えられがちだからか。
 日本酒は生産された地域との結び付きが強いという意味では具体的だと思う。
 テーブル席で日本酒のおすすめを店員に聞きながら注文していたとき、となりのおじさんが「会津の酒は~」と語ってきたのを思い出す。お互いに酔っていたので不快ではなかった。三月のライオンでもあったな。ちなみにその日本酒は覚えていない。
 日本酒は水も米もその土地のものを使って作る分だけ地域との結び付きが強くなるんだろうか。もちろん他の酒もそうなんだろうけど。

『根本的な権威性』

 理系は計算。文系は権威。
 理系出身のプログラマが法律に「書いていない」ことを理由に法律そのものの不備を主張するのが定期的に流行る。
計算するには全て書き込まれていていなければならないと考えていることにこの発想の根本がある。まさに理系は計算。でもそういつもうまくいかない。
 そのときに「書いていない」ことから解釈すること。権威を引っ張ってきてうまく説明すること。ここに文系の意味がある。

『即興』

「即興パフォーマンスに必要なのは自分をマジで神秘化する気合である。」
 パフォーマンスしている最中は自分って最高におもしろいってなる。終わると恥ずかしくなる。常にマジで入っている人を見ると羨ましくなる。


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