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「文化祭」 - オトナルホウヘ -01

2006年、茹だるような暑さが落ち着いてきたある日。

その日は地元の中学校で文化祭が行われていた。

「お前、暇か?」

と近所のお兄ちゃんに渋々連れられ、小学校6年生だった僕は中学校の体育館へ。

脚が床に届かないパイプ椅子に座り、様々な催しものをみた。



そして「バンド演奏」の時間がやってきた。

演奏項目はスピッツの「チェリー」と「ひばりのこころ」だった。


クラス全員、

といっても10人弱といったところ。

ステージの端から端まで横並びに並んだ楽器たち。

今から何が始まるのかという期待。

大半が楽器初心者だったそうだ。

ハンドマイクを持った2人が交互に、ボーカルを務めていた。

僕にとって、これが人生初めてのライブ体験だった。

たった10分にも満たない時間で、僕を釘付けにした楽器。

それが「ドラム」だった。


手を交差させ、しなやかに動く両腕。

シンバルが揺れると、余韻が体育館中を響き渡る。

時折飛び出す、ダイナミックな動きと意表をつくフレーズ。

そのすべてが、11才の少年の心を奪ったのだった。

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