見出し画像

制服の是非

岐阜県のある高校で、制服以外の服装が校内で認められると校則で規定されました。式典の日以外は、基本的に制服を着てもそれ以外の服を着ても自由だということです。校則で服装自由化が規定されるのは県内初めてだとのことです。

今日は教員の自分がこのニュースをどう捉えたか、また今後の学校と制服(および校則)との関係性、生徒の代表者である生徒会についても考えていきます。

上記のニュースのコメント欄には、時代の変化に即した改革だとして高校側や生徒を称賛する声がたくさんありました。

以下に服装を自由化したことのメリットデメリットを挙げます。

■服装自由化のメリット

・季節およびその日の気候に合わせて服装を選択でき、常に快適な服装で過ごせること→学生の本分である学習に集中できる効果が期待される

・LGBTの生徒が柔軟に服装を選べる→多様性への配慮がなされる

・服装に関する生徒指導の必要性がなくなり、教員の負担軽減になること。(服装指導は線引きが難しく、教員間での共通認識がズレやすいため教員とすれば大変な業務だった)

■服装自由化のデメリット

・服装は時に生徒の家庭の経済格差を映し出すため、場合によってはそれを発端としたいじめにつながる可能性があること→保護者としては衣服代が制服購入以上にかかる可能性があること

・校内に在学生以外が紛れていても気づかない可能性があり、防犯面では危険があること

教員から見た制服の功罪

自分がこの高校の生徒の立場であれば、おそらく大喜びでこの校則改革を喜んだでしょう。基本的に好きな服を着ていけるし、服を考えるのが面倒であれば(あるいは私服を毎日用意できる経済的余裕が家庭になければ)制服で行っても別にいいわけですから。

しかし教員の立場から考えてみると、上記に挙げたメリットデメリットで特に目を引くものが1つずつあります。

  メリット「服装の生徒指導が不要」

たとえば私の現在の勤務校の制服では、「シャツは第一ボタンまで留めなければいけない」という規則があります。確かに第一ボタンまで留めたほうが多少真面目に見えるのでしょうが、そのこと以外「第一ボタンまで留めなければいけないこと」の論理的な説明がなかなかできません。服装に限らず、校則の中には論理的な説明が難しいものが今なお残っています。

また、多少の校則違反の服装には寛容な教員と非常に厳しい教員がおり、「あの先生は何も言わないのにこの先生は厳しい」と生徒が不公平感を感じています。学校全体として統一の見解が示せないというのは不満を招きやすく、生徒(保護者)と教員の信頼関係が損なわれる原因になります。

生徒指導は教員の仕事で一番神経を使う難しい業務ですので、服装自由化によって服装指導が実質なくなるということは教員にとっては心理的な意味で非常に大きなメリットだと考えます。

  デメリット「防犯面」

一方で、デメリットとして目を引くのが在学生以外の校内侵入を防げるのかという防犯面の問題です。

学校は来客も多く、生徒が体育等で外に出るため生徒玄関は施錠されていない場合があるなど悪い意味でオープンな空間です。教員が全生徒の顔を覚えているわけではありませんので、学生くらいの年代の外部の人間が在校生の顔をして校内にいたら気づかない可能性があります。

制服や校則の今後

以上のことを総合的に踏まえた教員としての私の服装自由化への考えは、現状の学校システムを前提で考えるならば正直なんとも言えません。学校が一番担保しなければいけないのは生徒が学校にいる間の生徒の身の安全ですので、防犯面のデメリットの重大さを考えると服装自由化には二の足を踏んでしまいます。

ただ、もし警備員が全学校に配置されたり、玄関にセキュリティシステムが設置されるなどハード面の改善がなされるのであれば服装自由化は生徒にとっても教員にとってもメリットのほうが大きいのではと考えます。

学校はあくまでも「勉強をするための場所」であり、「ブラック校則」と呼ばれるような説明できないルールで生徒を縛りつけることは学校がすべきことではないと思います。生活ルールの指導は家庭でしていただき、教員は学習指導に専念するというのが本来の姿です。

生徒会の在り方

ニュースになった上記の学校が素晴らしいなと思うのは、この改革が教員主導ではなく生徒会主導で行われたということです。学校HPに経緯が記載されていますが、生徒会が生徒の要望を吸い上げて学校側に提案し、学校との幾度もの交渉を経て改革が承認されました。生徒会が本来の機能を果たし、よりよい学校生活になるよう働きかけた結果だと思います。

これからの時代、教員が生徒にルールを課すのではなく、学校の主体である生徒が自分たちで学校について考え、深め、変化を起こしていくという流れが学校には必要です。その過程で生徒は意見をまとめ、発表し、他者と合意形成を取る術を身に着けることができ、社会に出た時に大いに役立つ経験になるでしょう。

教員側としても生徒からの改革案を「無理」と突っぱねるのではなく、真摯に向き合って生徒と教員にとってWin-Winの環境を作り上げられるといいなと思います。(「ダメなものはダメ」は教員の常套句でしたが、もうそれは通用しないでしょう)生徒たちのアイデアや姿から教員が学ぶこともあるはずです。


今日は制服の話を題材に、校則や生徒会についても考えました。本日も最後まで読んでいただきありがとうございました!