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写真との出会いは標高3000m ep.4

エピソード1はこちらからどうぞ!

富士山はジグザグに登る。
左斜めに進んでは、道が折れ、右斜めに登っていく。
ロープで進むべきルートが区切られているので、迷うことはない。
ひたすら、前の人に続き、登っていくだけだ。

道は基本的には赤土だけど、ところどころ大きな岩が点在している。
ここに足を取られたり、大きな石を蹴って下から登ってくる人に当てたりしないように注意して登らなければならない。

よく晴れていたうえに、ここは森林限界。
紫外線をもろに受ける。
サングラスと日焼け止めで防護していたけど、肌にはジリジリと太陽光を感じる。

暑いけど、登って標高が上がるほど、見える景色が違ってくる。

30分くらい登り、水分補給をする。
ふと、自分の来た道のほうを見ると、靴紐を結び直した広場が遠くに見えた。
まだ見ぬ頂上を目指し、見えないゴールに向けて登っていたけど、振り返れば確実にゴールに近づいていると勇気づけられた。

水分補給と深呼吸をして体を整えて、再出発する。

息を切らして登っていると、すぐ横を軽やかに半袖半パンの海外の人が通過する。
ペリーが来航した時の日本人もこんな感じで日本と諸外国の差を感じたのだろうかと無駄なことを考えた。

その次に僕らを追い越して行こうとした30代ほどの男性。
大きな登山リュックにチャイルドシートみたいなものがついていて、男の子がちょこんと座っている。
どう考えても10kg以上背負っているその姿に脱帽した。
視線を下に下ろすと、馬のような脚の筋肉をしていた。
なるほど、確かにあの筋肉を持っていれば、何でもできそうだ。

その後も何人かに追い越された。
追い越される度に少しゴールが遠ざかってるんじゃないかという気がして悔しかった。

それでも、やっとの思いで登り始めてから最初の山小屋に辿り着いた。6号目だ。
友達とひとまずの中間地点に立つことができたことを称え合う。
そして、まだ標高としてはスタートから300m, 残り600m程あることを確かめて苦笑いした。

水分補給をして、軽食のチョコレート羊羹を食べて、次の地点までのエネルギー補給をした。

チリンッチリンッ
またあの音が聞こえた。
その音は山小屋に吸い込まれていった。
音を追って、山小屋の中を覗くと、ジュッと何かが焼ける音と芳ばしい匂いがした。
よく見ると、赤く光るまで熱せられたハンコ型の鉄のようなものが杖に数秒間押しつけていた。
その職人の横の案内を見ると「焼印200円」
どうやら、そこまで登った証として、杖に焼いてもらうことができるようだ。

その横には「金剛杖1000円」

記念になって良いなぁという羨望の眼差しと帰ったら、あの杖邪魔だろうなぁという論理的思考がしばらく戦っていたが、論理が勝ってしまった。

呼吸も整ったところで、再度足を日本最高峰に向けて進める。
次に目指す7号目の山小屋が遠くにうっすら見える。
また200mほど登ることになるけど、どんな景色になるんだろうかと期待を胸に一歩一歩進む。

20分ほど登った地点で休憩することにした。
5キロ以上あるリュックを下ろし、中から飲み物を取り出す。
喉が渇いていたのか、ゴクゴクとそれなりの量を飲んで、視線が飲み口から、登ってきた道のほうを見ると…

つづく

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