おなべとは
自分自身を「おなべ」と言い表している私ですが、おなべって差別用語じゃないの?そもそもおなべってどういう人の事を言うの?など一般的には謎多き言葉ですよね。
社会的な「おなべ」の意味は「職業上、男装して男性のように振る舞う女性水商売従事者や、女性同性愛者のうち男性的な出で立ちで男性的に振る舞う人に対する呼称」だそうです。ネットで調べました。
ただ実際は「元々女性として性を受けたが、社会的に男性として生きている人、その特性を活かし職業としている人」を指している場合が多いかと思います。オナベバーなど夜のお店で頻繁に使われています。
夜のお店以外でこの言葉が使われているのはあまり見たことがありません。一般的には差別用語という認識が強く、実際に相手に使用したら失礼にあたるということから使わない人が多いのでしょう。
私はそんな差別的な言葉をなぜ自分に使っているのか。自虐ではありません。強いこだわりがある訳でもないのですが、強いて言うとずっと夜の世界で働いてきて馴染んでいるのと、何となく曖昧な言葉感が強くて使い心地が良いのかもしれません。
もう1つ似たような言葉で「FTM」があります。
FTMとは、Female to Maleの略。出生時の身体性が女性で性自認が男性であるトランスジェンダーの中で、性別適合手術を受けて男性へ性転換した者を指す。
だそうです。ネット情報です。
実際には当事者間では、性別適合手術を受けて男性へ性転換した者とは一体どの範囲の人のことを言うのか、物議を醸してます。
一般の方にも分かるように性別適合手術について説明すると、男性ホルモン注射を打ったら個人差はありますが、生理が止まり、筋肉質になったり髭が生えたり変声期を迎え声が低くなったり、見た目は男性的になります。胸や子宮は手術で摘出しなければどうにもなりません。男性器を自分の腿か腕の筋肉を使って作ることもできますが性的な機能はありません。立ちションはできるようになります。戸籍上の性別は子宮と卵巣を摘出しなければ男性に変更することはできません。ちなみに男性器は作らなくても大丈夫です。
こんな感じで性別適合手術にも段階がいくつもあり、最後まで完璧に全て行う(男性器を作る)人は少ないと思います。
だいたいのFTMの人の最終目標は戸籍を男性に変更することですが、子宮と卵巣を摘出する手術はお金もかかり大変なのでそこまでできる人も多くはないかなと思います。
ちなみに私は、男性ホルモン注射を打って、胸の摘出は済んでいます。社会的には男性として過ごしていますが、戸籍上も下半身も産まれたままの女性。今の状態が完全体の自分、子宮も卵巣も摘出したくないですし戸籍上の性別も変えたくありません。
このように結局は適合手術をどこまで進めるかは人それぞれなのですが、例えば「見た目が男性的でない人はFTMを名乗るな」「戸籍を変更するつもりがない、女性的な要素を残すならFTMを名乗るな」など当事者間での差別が目立ちます。
結局LGBTQなんてジャンルも一般目線で定められたもので定義は明確ではなく曖昧なものです。人それぞれの解釈が生まれ、当てはまれば救われますが、そこにさえ当てはまらない人も多いでしょう。
本来は苦しみを分かり合えるはずなのにいがみ合うのは悲しいですね。
私は一般的な言葉の中に、一言で自分を言い表せる単語は無いと感じています。無いからこそジャンルにはこだわらない。男でも女でもFTMでもおなべでも何でもいい。この中だと自分に近くて、わかりやすく、一般的な解釈がより曖昧で、インパクトが強めな「おなべ」というワードをよく使います。ということです。
私という人間を知るには「おなべ」や「FTM」の意味をネットで調べるのではなく、私が自分自身を説明する言葉を聞いてもらった方が早いですし正確です。普通と違うため分かりやすく説明するにはかなり長くなってしまいますけどね。
時間が限られている場や自分にさほど興味がない人の前、SNSでの発信やタグなど、手早く伝えなくてはいけない場面では、簡易的な意味として性別のジャンルを使わざるを得ないですが基本的にはあまり使いたくないです。完璧に当てはまるものがないので。
全ては人それぞれ、私自身も相手のことをジャンルで括って理解した気にならずに、相手の話しを聞いてその人はどういう人間なのかを判断するように心掛けています。