~試合での外傷・障害~100回記念誌から考える高校ラグビー の外傷・障害傾向
先日、関西ラグビーフットボール協会から発刊された
「全国高等学校ラグビーフットボール大会100回記念誌」
購入しました。後から知ったんですが、限定販売だったそうで。
通称「花園」の歴史がぎっしりと詰まっていて、第1回が3校で開催されたところからの推移、また試合ごとの公式記録も記載されています。お世話になっている先生や、今や名将として活躍されているコーチの方の足跡をたどることもできます。
外傷・障害記録
さらに外傷・障害調査やマッチドクターを始めとしたメディカル体制の変遷についても記載されています。大会を通じての受傷率は昭和45年度の第50回大会から、また1試合あたりの受傷件数やポジション別・部位別・原因別件数は81~90回大会分と91~100回大会で区切られた報告がされています。
1試合あたりの受傷件数
81~90回大会に比べて91〜100回大会では減少しています(1.6件/試合→1.1件/試合)。実数では825件/503試合→580件/516試合。
さらに準決勝・決勝になるとその割合がさらに低くなっています。優勝チームで1件も負傷者が出なかったときもあるということも報告されています。
部位別割合-学校安全給付との比較
部位別の割合は大きく変わっていないようです。学校安全給付データで報告されている、高校ラグビー(体育的部活動)での報告件数と比較してみました。調査方法などにも違いがありますので同等に扱うことはできませんが参考までに。
随分と傾向が違っています。頭・顔・頸部での割合が高くなっていますが、その中で特に顔部が高い割合になっています(26%,27%)。頭部も19%,17%と全部位での上位を占めています。
1.顔部・2.頭部・3.肩/鎖骨部
81-90回に比べて91-100回で増加しているのは肩/鎖骨部(10→14%)
原因別
原因別ではタックルに絡む部分がやはり大きくなっています。全体の6割~7割がタックルによるもの。
改善要因
講評の中にある通り、フィジカルレベルの改善が発生件数の減少に繋がっていると考えられる点はあります。体格面で見ても以前に比べて随分と改善されています。ベスト8進出チームの先発データでみても大きくなっていることが確認できます。
もちろんこれだけではく、技術的な向上やコーチングの浸透、普段からの安全対策などもその支えとなっているはずです。
このように花園では減少傾向にあることはわかりましたが、ここに該当しないチームではどうなのか。花園に出ていないチームや各地区大会での1回戦、2回戦といった部分ではどうなんでしょう。
花園での体制を地方予選でも
花園での制度にも色々と課題や改善の余地もあると思います。ただ、地方予選でのサポート体制はそこにまだまだ追いついていません。
技術的にも未熟であることや格差が大きい中で行われているのが予選。
受傷件数ももっと多いはずです。
リソースの面では「地方だから楽」ではないことは想像できます。それでもリスクの高いところにも整えられた制度が普及してほしい。
タッチライン際で同様に活動している方はいます。しかし、その数が多いわけではないしある程度固定されているようにも感じます。
全国を目指しているわけじゃないからそこまでは、、、
ってことを言われることもあります。
いやいや、そこよりもよっぽど危険で必要なんです。
ということはもっと活動する中で広げていかなくてはいけないし、自分がそこにいることが停滞させる要因になってもいけない。
特に昨今の状況にそれを突きつけられています。
突然サポート出来なくなる場面も出てくる。
それは自分の身だけではなく周囲の状況によっても。
昨年はそこまで考えが回らなかったけれど、今年はそれを特に感じています。
まとめ
刊行物ですし、フリーアクセスではないので詳細までは省略しますが、
・ここ10年での試合中の発生頻度・割合は減少している。優勝チームでは負傷者が出ていないチームも出てきている
・タックルに関連する発生が6割〜7割近くに達している
・部位ごとの発生割合は昔と大きく変わっているわけではないが、肩/鎖骨部の割合は増加している
参考資料
「我々の医務活動」全国高等学校ラグビーフットボール大会100回記念誌.2021.pp513-520.
「学校管理下の災害」日本スポーツ振興センターhttps://www.jpnsport.go.jp/anzen/kankobutuichiran/tabid/1961/Default.aspx
高校生ラガーマンと“怪我”〜データでみる負傷部位・種類の傾向〜
https://note.com/ken_kohira/n/n2d4a8f08106f?magazine_key=m31f55045ba1
高校ラグビー15年間での体格変化~【花園】ベスト8チーム~https://note.com/ken_kohira/n/n96f8ab100585?magazine_key=m31f55045ba1c
読んでいただきありがとうございます。日々の雑感やスポーツ、運動にまつわる数字を眺めてまとめています。普段はトレーニングサポートや講義を行なっています。