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民法総則 時効総則(144-161)

(時効の効力)
第百四十四条 時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

第145条(時効の援用)
 時効は、当事者(消滅時効の場合は、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

【判例】大判M43.1.25
当事者とは時効により直接に利益を受ける者、すなわち権利を取得し、消滅時効により権利の制限又は義務を免れる者をいい、間接に利益を受ける者は当事者ではない

【判例】大判T12.3.26
時効の援用を裁判上で行使する場合は、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。

【判例】大判S14.3.29
時効を援用せずに後から別の訴訟で援用をすることは許されない。

【判例】最判S61.3.17
時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずる。

第146条(時効の利益の放棄)

 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

第百四十七条(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)

1 以下の場合には、その事由が終了する(確定判決等で権利が確定することなく中途で終了した(訴えの取消し等)場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 和解・調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は「裁判上の請求等」が終了した時から新たにその進行を始める。

第百四十八条(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)

1 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続又は同法第二百四条に規定する第三者からの情報取得手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

第百四十九条(仮差押え等による時効の完成猶予)


 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分

第150条(催告による時効の完成猶予)

1 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

第百五十一条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)


 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。

第百五十二条(承認による時効の更新)

1 時効は権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。(債務の一部弁済、支払猶予を求めること)
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。

第百五十三条(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)

1 第百四十七条又は第百四十八条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
2 第百四十九条から第百五十一条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
3 時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

第百五十四条 

第百四十八条第一項各号又は第百四十九条各号に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第百四十八条又は第百四十九条の規定による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない。


(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
第百五十八条 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
第百五十九条 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(相続財産に関する時効の完成猶予)
第百六十条 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(天災等による時効の完成猶予)
第百六十一条 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。



(最判平成11年11月9日)。
 破産免責決定の効力を受ける債権については、債権者において訴えをもって履行を請求しその強制的実現を図ることができなくなるため、『権利を行使することができる時』を起算点とする消滅時効の進行を観念することができない。したがって破産者が免責決定を受けた場合には、その免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することはできない。

(最判昭和10年12月24日)
時効期間が満了していれば、いつでも直接時効の利益を受ける者は裁判上たると裁判外たるとを問わずいつでも時効を援用することができ、いったん援用があると時効による権利の取得は確定不動のものとなる。

(最判平成13年7月10日)
 時効の完成により利益を受ける者は、自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができる。したがって被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の1人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎない



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