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2021年まんが雑記

 読んだ漫画たちが飽和しているので、ちびちびと漫画の備忘録を綴るページを作った。卒論の気分転換に、と約1か月ほど継ぎ足し方式で書き続けていたら1万5000字を超えた。
 老舗の飲食店にあるような秘伝のタレも継ぎ足し続けた末に「秘伝の」タレになった訳だし、「継ぎ足す」という行為によって、通常と異なるサイズ感の何か(視覚的に限定せずとも)が出来るんだなあと年の瀬にしみじみした。秘伝のタレと雑味満載の文章を同じにしてはいけないけども。
と同時に70年継ぎ足してきた秘伝の○○とか、もう神話と名乗っていいのではないかと思うに至った。70年間オリジナリティのある同じ組成の液体が存在してるとか、全細胞がびっくりだよ。あのiPhoneのアプリアイコンが長押しでカタカタってするやつみたいになるよ、人体の不思議かな。

以下、ゆるゆるのルールに則って2021年の漫画メモリーズを書き綴った。

【ゆるいルール】
・2021年読んで面白かった作品を列挙する。
・昨年以前から連載を読んでる作品も含める。
・読みかけ、読了に限らず列挙する。
・極力ネタバレを避ける。
・ほぼアニメで摂取した作品も追加する。
・ビバ散文。あっぱれ駄文。
・列挙する作品は順不同。
・◎は特におすすめしたい作品。

以下、目次を参照。

◎進撃の巨人

昨年末にはじめ社長のチャンネルのアニメ公開をきっかけにシーズン3まで一気に視聴。
→続きが気になり、残りの漫画を全てレンタル
→コミックを追うだけでは飽き足らず、マガポケに課金して最新話を常に追い始める。
まさか自分が最終話をリアルタイムで追う人間になるとは思わなかった。
しっかりズブズブにはまった。

単に巨人が人を食らう「巨人vs人間」の二項対立の構造にとどまらず、神話的、政治的、社会的な複合的な要因が絡まってそれぞれの正義が衝突する。みんな口をそろえて言う先の読めない展開に、考察が止まらない。
ある登場人物にとって好ましい展開になったとしても、決して誰もがすっきりする訳ではなく、かと言って別の登場人物視点でそうなったとてしかり。誰もが幸せになれる解は存在せず、戦争が繰り返される理由をお話を以て突きつけられている気がする。ゆくゆくは人間と人間との衝突が話の主軸になっていくが、「巨人が人を喰らう」という人命の脅かされる世界観によって前述の政治的摩擦や社会格差たるものの深刻さがくっきりはっきりして見えて、現世に至る人類史を俯瞰しているような心地になることがあった。

最終回は話の修正を求める署名活動が起こり、海外で1万5千以上も集めたらしい。個人的には、納得のいく展開と余韻だと思っていただけにびっくり。
アニメも楽しみ。

◎ヒストリエ

レンタルして最新コミックまで読了。
アレキサンダー大王の書記官として名のあるエウメネスの生涯を描いた歴史物語。
描き込みがとっても細かくて古代ローマの色彩を持たずしての豪華さと、その裏側の時代背景としての残虐性(奴隷制度や、戦闘シーン、スキタイ人の一連の描写等)を描きながら骨太な人間ドラマも展開される。太古の時代の個性的な登場人物たちに、ちゃんと紀元前にも人は生活していたんだなと、当たり前のことをしみじみと感じざるを得ない。
エウメネスの聡明で柔軟かつ思い切りのよい人柄に惹かれて何度も読み返したくなる。人間性で運命をあれだけ切り開けちゃうのは激動の時代とはいえ、すごい。凡人ながらに知的生産性を上げたいと思わざるをえない内容。
ただ、2、3年に1巻のペースで新刊が販売されており、連載20年が経とうとしている現在においてもなお、アレキサンダーが王に即位していない。主人公がやっとフィリッポス前大王の書記官として職務を全うする青年期を迎えたところ。作者は最後まで描ききると明言しているらしいけども、ちゃんと完結するのか。とりあえず続きが読みたい!!史実を調べるだけでは物足りない体になってしまった。


インベスターZ

各学年で一番秀才な生徒が集い、学校の資産運用を極秘で行う「投資部」が存在する中高一貫校が舞台のなかなかクレイジーな設定の漫画。
ドラゴン桜と同じ作者のため、投資についてのハウツーを、キャッチーで語気の強い印象的なセリフとともに分かりやすく学べる。

経済史と絡めて投資の成り立ちや必要性を説いていたり、単にお金を巡らせて個人資産を増やすことだけに留まらない展開があって面白い。

就活における企業分析を絡めたページを見て気になって読んだ。
ゆえに、途中までしか読んでない、読みたい。


マザリアン

シュールなSFギャグマンガ。
「ひずみ」という小さな竜巻のようなものが発生する、物騒な現代が舞台。
ひずみに巻き込まれてしまった人や物は共々フュージョンしてしまう。顔の半分が猫になったり、頭にフライパンが刺さったような見た目になったり。
設定も何とも言えないし、セリフも淡々と変化球が飛んでくるのでくすっと笑えて面白い。
打ち切りなのか、不思議な終わり方をしていて寂しい。


死役所

LINEマンガで読める範囲の話まで読了。
死んだ人自身が死後の手続きを登録すべくやって来る「死役所」でのオムニバスストーリー。それぞれのお話では生前からどう死に至ったのか、取り残された人のお話等が語られる。
必ずしも報われるわけではないんだな、と思うような突然優しい人が亡くなってしまう話や、いろんな人を傷つけた末に死後冥土の道を永遠に彷徨うような因果応報な話もある。基本的にモヤァっとなる話が多い。
人の死を巡って、いろんな人の死生観を含む人間性が浮き彫りになる。
表題や表紙を見ても、誰が亡くなるのか分からない話もあるので、冷や冷やしながら読んだりしていた。
自分では周りとごく平凡な人間関係を築いていたと思っていた矢先、実は主人公が誰かの恨みを買っていて殺されてしまったお話「幸せな男」という話が特に最近読んだ中では印象に残っている。死役所で自分の人生はさんざんだった、挙句の果てに刺殺されてなんなんだ、と嘆く主人公。どうやら聞いた話によると元妻との結婚生活が最悪だったらしい。自分が病気でもろくに看病もせず、育児に参加もさせてもらえず、口げんかの末に暴力を振るい、浮気までする話し合いのできない奥さんだったと回顧する主人公。しかし、本当の被害者は奥さんで全部この人が都合よく書き換えた記憶だったというオチ。都合が悪くなると被害者面をしてしまう人の末路をリアルに描いていて、読んでいてうわあ、、、となった。でも、自分の都合の悪い部分を隠して何かを話してしまうことはなきにしも非ずで、他人事には思えないようなキリキリとした痛みの残る話だった。自分の落ち度やできないことを客観視して、同じように他人を受容していくことの難しさを考えこまずにはいられない。家族とかより内輪な関係になればなるほど難しくなりそう。ちゃんと己が非を自他ともに認めあえる関係が理想だと改めてかみしめる話だった。
シムラさんも過去編の最新話が気になって仕方がない!

「子供を殺してください」と言う親たち

LINEマンガにて途中まで拝読。
家庭で問題を起こす子供の移送型ケアマネジメントサービスを行っている押川さんという実在の方が実際に対応した案件をベースにしている。
「家庭で問題を起こす子供」とは言えど、問題があるのは子供ではなくて親が与えてきた価値観や教育の歪みが浮き彫りになる回もある。
そして、ひとえに「子供」とは言っても年齢は10代から40代以上まで幅広い。
押川さんは、すべての依頼を無条件に受け入れる訳ではない。子供の先の親を見て依頼案件を受けるか受けないかを決めている。そんな一幕を描いた「依頼が成立しなかった案件シリーズ」は、実の子供との向き合い方における反面教師とは何なのか、わだかまりの残るストーリーによってリアリティを持って知ることができる。
センセーショナルなタイトルながら、こんなパッパラパーでも「・・・読んどいて勉強になったな・・・」と言葉を失いつつも思えるノンフィクション。


◎恋癖

コミコで連載中。
恋愛漫画を何かおすすめして、と言われたら迷わずこれを推薦したい!
都内の総合大学を舞台にした、恋愛にちょっと難ありな大学生たちの群像劇。
ワードセンスが斜め上のキレキレで、ギャグのターンの命中率が個人的に高い、ツボ。ラブコメディなので、恋愛の話が進むときは、ちゃんと甘い展開が用意されている。と思いきや、先が読めないミステリーが繰り広げられていて、毎週の更新が待ち遠しい。
登場人物が結構たくさん出てくるにも関わらず、それぞれが一癖あって憎めないだけでなく、話の展開に一役買ってるのですぐに覚えられる。
コミコでコメントを読むまでがワンセット。


光と影

コミコでシーズン2が連載中。
武功を挙げる程の戦の名手だが暴君と名高い侯爵、イーライに「使用人」という身分を隠して令嬢の身代わりとして嫁ぐことになった主人公のエドナ。
鋭いイーライには身分詐称があっけなくばれてしまうが、そのまま夫婦として新婚生活を送ることになる。
でも、共に暮らして見えてきたエドナの立ち居振舞いは、明らかに身分の低い人のそれではなさそう。一つ一つの挙動が慎ましやかで品があり、侯爵の妻として民を先導する先見性と気高く気迫のはる眼差し。
この女性何かあるぞ!とエドナを訝しげに思うイーライ。
もちろん、エドナには複雑でスケールのでかい過去があって、訳あってそれを隠しながら公爵夫人を務めあげようと奮闘するのだが、、、

エドナやイーライの登場人物の過去が気になりすぎて、読み進めるのが止まらなかった。個人的に、主人公にまた会いたい!と思うのが好きな漫画の条件でもあるので、エドナの聡明で勇敢なパーソナルが好きすぎて、ちゃんと読んだ。
シーズン2はエドナとイーライの息子のアレックスが主人公のストーリー。これも面白くて毎週読んでいる。


だから私はメイクする

とある百貨店のBAさんを中心に繰り広げられる、お化粧にまつわるオムニバスストーリー。
綺麗になることに迷いがなくなって、より一層中身もろとも美しくなった人々と沢山立ち会える、自己肯定感爆上がり漫画。
自分の好きなように見た目に磨きをかけることにそれっぽい理由はいらないはずなのに、知らず知らずのうちに、出ない杭として小綺麗にするための「手段としての化粧」をしてばかりだったのでシンプルに響いた漫画。

◎寄生獣

実写映画もアニメも観たことがなく、ミギーが主人公の右手に生えてくることしか知らない状態でマガポケにて読了。
人間を喰らうパラサイトと人間の攻防戦が細やかな心理描写とともに繰り広げられる。
生態系全体を俯瞰して見たら人間の生存戦略はたくさんの命を犠牲にした上に成り立っているから、人間の絶対数を減らせば害を被る生物が減って生態バランスが向上するんじゃない、みたいなパラサイトの究極の俯瞰論にうなる、人間。

ただ何の脈略もなく人間を捕食して終わるのではなく、人とパラサイトが共生を軸に人間の様々な営みについて立ち止まって考える機会をくれる漫画。
「生命維持」や「子孫繫栄」に必ずしも直結する訳ではない、多くの人間の営みに対して疑問を持つミギーが、新一との暮らしでその意味を見出していく。もちろん寄生獣サイドだけでなく、人間サイドの感情描写を通して、自分が当たり前のように享受していた愛について、ズシンと突きつけられる。

新一が涙を取り戻した回で涙と鼻水が滝水のように止まらなくなった。その話だけ5周読んだけども、5分の5で号泣芸人になっていた。5回号泣とかただの塩分過多。

名前も呼ばないあのひとと

LINEマンガにて掲載中。
結婚式でたまたま同席した男女4人のドロッとした恋愛もの。人をもやもやの渦に巻き込んだまま話を展開させるムーブメントにまんまと乗ってしまった、こんな不安になりながらキュンすることあるんだと思える漫画。
今の展開がしんどすぎてしんどいのに、続きが気になって読んでしまう。
日本語が乱れるくらいしんどいが飽和しているのに絵柄が可愛いから話に救いを見出そうとしてしまう。

◎マイホームヒーロー

マガポケにて最新話まで読了。来年から最終章が始まる予定で、その準備に向けて現在は休載中。
今年最も手に汗握った漫画。何といってもこの漫画の宣伝文句は、「ジェットコースタークライムサスペンス」。つまりざっくり直訳すると、クライムとサスペンスが時速150キロでやって来る、アップダウンのめっちゃ激しいストーリー展開ということになる。まさにジェットコースターにずっと乗せられているかのような息もつく暇のない展開が畳みかけられる。

主人公は、42歳の中小企業営業職の哲雄。妻、娘と3人家族で穏やかな日常を送っていたが、あるとき娘の麗花の交際相手が半グレ組織に所属しており、妻の歌仙の実家の資産を狙っていることが発覚。何とか妻と娘を守ろうと哲雄は奮闘するが、取り返しの着かない事件を起こしてしまう。哲雄と歌仙は、娘を、そして家族の平和を守るために半グレ組織と水面下で紙一重のバトルをすることになるのだが、、、というお話。

戦う相手が頭脳派の半グレ組織で、証拠を残さずに人を追い詰めたり、抹消したりするのが得意なトンデモ組織。哲雄は自身で執筆するくらいにミステリー小説の熱狂的なファンという事もあって、その一歩先の巧妙な工作を仕掛けることがとても上手い、つまり両者互角で命スレスレギリギリの攻防がずっと続く。哲雄vs半グレの抗争が、落ち着いたと思ったらすぐに次のヒヤヒヤが発生して、止まらない。そして、そんなガチもんの集団に挑む哲雄と歌仙の肝の据わり方が尋常じゃない。え?なんでそんなに落ち着いてられるの?って何度も思った。
でもバトルはこの話のテーマではなくて、家族愛を貫くための手段。そのため、娘を守るためにここまでやっていいのか、という葛藤や肝は据わっていれど冷や汗をかいてしまう人間らしさの描写も細やか(たくさんコマを使って微細な表情の変化を表現したりするのがゾクッとした)で、読むと心がぎゅーっとなる。

いろんな人にお勧めしたい。いっしょにジェットコースターに乗ってくれる人を探しています。第一章で手汗が止まらなくなり、第二章のオーバーヒートに脳天が飛んだ。

満州アヘンスクワッド

満州で戦争に徴兵されていたが目のケガで除隊になり、農民としてコキ使われながらも家族を養っている勤勉で朴訥な青年、勇が主人公。
ある日、農作業をしていると隠しアヘン畑を発見する勇。緻密な独学を経て極秘でアヘンを製造し、中国のマフィアに単独で乗り込み販売を試みる。そこで勇が作ったアヘンを吸った客が骨抜きになり強烈な中毒性を催すことが判明。極上のアヘンの作り手としての彼に興味を持ったのは中国の巨大マフィアのドンの娘、リーファ。タッグを組んで大規模なビジネスをしないか持ち掛けられ、病気の母を救うために勇はアヘン製造を続けることになるのだが、様々な裏社会の組織達との危険な抗争に巻き込まれていく話。

絵がリアルで、それぞれのキャラが立ってて面白い。数話に一回ぐらい、日本兵か中国マフィアかロシアンマフィアとやり合ってる気がする。

中国のアングラ界隈でこんなにも裏社会の組織が交差してやり合ってるとは思わなかった。
アヘンの売りさばき方とかそれを通じた縦横のつながり方とか、満州の過酷な格差社会など、学校でばっちり学習した歴史の中に中々学校では知られないことが描かれているので新鮮だった。

スインギンドラゴンタイガーブギ

戦争で精神的に虚脱状態になったお姉ちゃんを救うため、定期的に単身上京して、姉の虚脱のヒントとなるウッドベースを不器用に弾き鳴らしながらジャズを歌い、彼女の思い人を探している主人公のとら。
とらの歌声に目を付けたジャズバンドの青年たちとのひょんなトラブルや邂逅によって、とらちゃんの人生が一気に変化して、お姉ちゃんとの謎も紐解かれていって~というお話。
音楽がテーマの漫画で心が惹かれるのは演奏シーンのことが多い。この漫画もしかり。ただ、すごくどきどきしてしまったのは、ウッドベースの演奏シーンの表現。大きな文字がものすごい力強い筆致に乗って「でん。でん。でん。」と描かれている。絶対何かあるぞ、何か起きるぞ、でもなんも分からん、そんな漠然としたそわそわと、どことない色っぽさを一気に凝縮させた「でん。」の威力がすごい。「体に電流が走った運命的な音楽に出会いました!」の説得力がその1コマに集約されている。

◎ダブル

LINE漫画で3巻分読了。
演劇において天賦の才を持つが生活能力ゼロの多加良とロジカルな努力家で世話好きの友仁の二人のバディでありライバルであり、恋人のような家族のような、その不思議な関係性と演技の描写が劇画のような写実的な絵で迫ってくるし、こっちも掴まれたら離されないような吸引力のあるエネルギーのすごい漫画。陰影の描き込みが細かくて、嫉妬やら憤怒やらの精神をすり減らすタイプの感情を表してるときの顔を見てこっちも同様に情緒をグラっと崩されたような気持ちになるくらいに絵の説得力が恐ろしい。
二人は同じ劇団に所属し、住まいも共同生活。その健康的と不健康的の狭間の共依存状態の描写にぞわっとする。

多加良は演じる役において、友仁さんの解釈やアドバイスを100%受け入れてそれを200%にして輝かせる。そんな彼にひそかに嫉妬する友仁。ちょっとした表情に背筋が凍ってしまいそうになるし、演技のシーンは本心の独白シーンと連動して絵と言葉の説得力がこちらに殴り込んで来ているような気分になるし、もう、語彙力が足りないのが悲しい。

ファンタジーやバトルものではないので非日常的でスケールの大きなことは起きない。ただ「演じる」「話す」「こじれる」「くっつく」そんなことの繰り返しなのに、精神的にダイナミックなぞわっとする余波が読後に到来する。
この感覚を誰かと共有したい。

おとなになっても

志村貴子さんの絵がすごく好きで読んだ。
既婚女性と独身女性の不倫の話。でも、絵柄がきれいで可愛くて話が淡々と進むので、どす黒い感じがしなくて清潔感がある。

この表紙のピンクの服を着たおとなしめな人が既婚者なんだけども、青い服の人に出会ってからすごい自分からぐいぐい来てイチャイチャし始めたのに、次会うときにしれっとドタキャンして青の人のお店に旦那さんと行って既婚者カミングアウトするし、旦那さんには「女性が好きになったから報告だけするね」って宣言するし、どっち着かずで酷な感じがもう、昔の文豪みたいなやり口。
不穏なことをしてるのに、透明感のある絵をしてるからぬるっと読み進めてしまった。

あせとせっけん

同じ石鹸会社に勤める同僚同士のラブストーリー。めちゃめちゃ鼻が利く企画部のエース、名取さんと汗っかきなのが悩みの経理部の麻子さんが主人公。なんだか表紙がちょっと色っぽいけど、とっても平和なラブコメディ。
端的に言うと二人は恋人関係になるのだが、汗っかきなのを理由に幼いころにいじめられた経験のある自己肯定感の低い麻子さんが、恋人と一緒にいるときの自分を受容していく過程がとっても温かくて好き。

恋愛漫画であると同時に、恋人や同僚に限らず相手を一人の素敵な他人として受け入れる、寛大な登場人物たちによって、将来こういう心の広さを持っている人でありたいと、ある種道徳の教科書のような存在になりかけている。それぐらい登場人物に嫌味な人がいない。

また、営業部の同期の男性が長年付き合っていた彼女と別れたエピソードで、「彼女を養い過程を持つほどの仕事の裁量や実力が自分にはなく、結婚を先延ばしにし続けてた」切実な気持ちと、別れた後に知った彼女の「専業主婦を確かに希望しているが、ただずっと一緒に過ごせるだけで十分」という本音のすれ違いに、今は共働きが多いけども結婚を見据えた時の恋人同士の思考や価値観の違いは絶対に何かしらあって、時間が説得力を増す材料になる訳ではないんだな、と世の中のどこかに存在するであろうリアルを感じた。

◎チ。

マンガワンで最新話まで読了。
大げさではなく、感動で背中が鳥肌に覆われる感覚を味わった。
地動説が正しいと証明するために、命を懸けた人々のお話。

自分が正しいと思う言説を普及させる原動力とは何かを考えたときに、「正義感」や「義務感」、「自信」などが元になって旧来の考え方を持った人を変えたいという欲求が芽生えるものだと思っていた。
でもここで描かれているのは、ものすごく純粋な部分で、ふっと星空を見上げた時の「感動」だったり、数式としての究極の「美しさ」だったり、信じていた宗教をひっくり返すほどの「哲学」だったり、本能の部分でぐっと惹きつけて離さないものだった。これらに出会ったときに、強烈なまでに「後世に残さなくてはならない」と知ってしまった人たちの、命すれすれの行動と、一言一言の言葉の重み、この全てを嚙み締めたいがために次のページを中々めくりたくないと思うような場面が何度もあった。

このタイトルの「チ。」は単に地動説の「地」から拝借したものではなく、何重もの意味合いを持つ。それが本書中の、神学を重んじるキリスト教の宣教師や、天動説を生涯かけて追究した学者、淡々と拷問を行う異端審問官など、地動説のために奔走した人だけでなく話の中で化学反応を起こす様々な登場人物の丁寧な描写に繋がっており、単純な一読者には皆格好よく見えてしまう。

一巻だけでも、口が延々とあんぐり開きっぱなしになるような余韻が味わえるので、読んでほしい。

天国大魔境

気になって一巻のみ読んだ。謎が一方的にばらまかれてソワソワしたまま終わっているので続きが読みたいところ。

話が少し複雑で、主に一つの世界の中で2つのストーリーラインが展開されていた。一つは、未来の荒廃した東京でアドベンチャーをする男女の話、もう一つは「私を離さないで」のような隔離された無機質な施設に住み外の世界の存在に疑問を持つ男女。
二つの世界のそれぞれの主人公の顔立ちが同じで、何かが起こりそうな感じがする。
可愛いめの絵柄なのに、ちょっとした人間のどす黒い顔つきが怖い。突然の変化球による不穏な空気に面食らうことがしばしばあった。

それにしても未来の東京あんなんだったら嫌やわ。

それでも町は廻っている

LINEマンガで序盤まで読了。
女子高生が主人公で、おばあさんの喫茶店でメイド服着ながらバイトするギャグマンガ。
作者が上記の「天国大魔境」と同じ。ギャグあり、恋愛あり、ミステリーあり、ホラーあり、感動ありのすごい余韻の作品らしい。まだそこの真骨頂までたどり着いておらず。

オムニバス形式の話になっていて、特に主人公が死にかけて冥土の国に迷い込む話がしんみり面白い不思議な感覚になった。
主人公の歩鳥が愛すべきバカでかわいい。

ルックバック

チェンソーマンの作者による今年すごく話題になった例の短編。
自分よりも才能のある人に遭遇してしまう、無言の劣等感の圧に胃がキリキリした。

何を書くにしてもネタバレになってしまう。情緒が忙しくなるタイプのお話です。上記リンクでご一読をお勧めします。

blossoms

LINEマンガで最新話まで読了。
人間とモンスターの異種間恋愛オムニバス。

どのエピソードもほっこりする。モンスターとしての幼き頃からの苦労やトラウマが丁寧に描かれていて、異種間だからこその分かち合うことの難しさを伝えながら、それを超えたビッグラブがドカーンと読者ごと包み込みそうな勢いで素直に描写されている(ように見えた)。

どの話も結果として浮かれポンチな感じになるので、ニヤニヤしながらこっそり読んだ。

私たちが恋する理由

LINEマンガで最新話まで読了。
これ何で読み始めたのか覚えてないけど、一回読んだらカップル成立まで見守りたい老婆心が芽生えてしまった。
甘々のオフィスラブだった。絵がきれいでみんな顔が良い。
漫画だからそりゃそうなんだけど、顔が良い。

プロミスシンデレラ

今年ドラマ化された、アラサーのお姉さんと男子高校生のラブストーリー。
気付いたらマンガワン掲載当初の3年前くらいから、ちゃんと追っている数少ない漫画の一つになっていた。

不器用でも筋はしっかり通す二人を応援する読者の一人になって早3年。新章に突入してよくわからんライバルが登場してもダレない、テンポの良さがある気がする!

これは二人がくっつかないもどかしさやらお邪魔虫へのモヤモヤやら、突然のキュンキュンターンを素直に、時折面白おかしく吐露するコメント欄を読むまでがワンセット。
1章にでてくるあの怖い女の人のことを蛇女とあだ名されていたせいでそれにしか見えなくなった。

ひともんちゃくなら喜んで

マンガワンにて連載中、試読中。
人事コンサルティング会社の広告塔をになう天使のようにかわいい主人公が、ブラック企業を立て直すべく人事コンサル業務に挑むお話。顧客の企業にはブラック企業をブラック企業たらしめている四天王と呼ばれしすごいDQNがいるらしく、その人らとの真っ向からのバトルを中心に描かれている。

会社という一つの組織に入る中で、利益を増やすことや何かしらの社会需要を満たすことの前提に人と関わることがあるからこそ、不穏な人間関係は避けたいよな~という気持ちが輪郭を帯びて加速度的に強くなった。四天王は大げさに描かれているけども、世の中厳しくも複雑だからこそこういう人間性を持つのは紙一重なんだろうな、気を付けないとな、と反面教師鑑賞会のような心持ちにもなった。

社会で対人関係を築く上で必要な心構えや、人事評価や人間性を見る上で大切なことが分かりやすく描かれていた。とはいえ、ほぼ忘れた。これ社会人になる前にもう一回読みたいな、と思う内容だった。
主人公と社長の二人のやりとりも面白い。主人公のすっぴんがツボで、とってもかわいい。

付き合ってあげてもいいかな

マンガワンで最新話まで読了。
女子大学生同士の恋愛模様が中心かと思いきや、それを取り巻く登場人物それぞれの内面や価値観を丁寧に教えてくれるだけでなく、やりきれないモヤモヤ加減が丁度いいので読んでしまう。
「付き合ってあげてもいいかな」のタイトル通り、120%の全力の恋愛の延長線でねんごろになっている訳ではないのがこの話のミソな気がする。

東京リベンジャーズ

映画化とアニメ化でことあるごとに無料で読めるので、その無料の限界まで読んだ。ゆえにドラケンとヒナを救出しようとしてるあたりで終わっている。ずっとみんなかわいそう。
「誰か悲惨じゃないやついる?いねぇよな?!」

◎BEASTARS

2021年の初めにLINEマンガで最終巻の前の巻まで全部無料だったので、清々しいまでの一気読みをした。
ズートピアのような動物が住人となって暮らす世界が舞台。ある高校で発生した食殺事件の犯人を突き止めるべく主人公のオオカミ、レゴシが暗躍する話。

肉食動物と草食動物、全ての動物の共存と繁栄を願う世界を謳っていながらも、結局のところ抗えない力関係や本質的な欲求が存在していたり、いろんな動物の立場の生きにくさややるせなさに寄り添っている丁寧な心理描写から人間社会とリンクするものを感じた。
この全動物ダイバーシティ社会にシフトするための工夫や綻びを反映した舞台設定がすごく細かくて面白い。主人公の在学する全寮制の高校では、寮が肉食動物、草食動物で分かれているだけではなく、それぞれのライフスタイルに合わせるべく「イヌ科」「ネコ科」「鳥類」等々、詳細に部屋が割り振られている。そして、配給される食事も草食動物はサラダ盛り合わせ、肉食動物は大豆製ミートになっていたり、「食殺」というタブーの上に構成されるギリギリの多様性特化型の世界が展開される。
しかしながら肉食動物である以上、食肉に対する根源的な欲求はなかなか拭えないのが現実。人間界において中毒性のある違法物が裏社会に蔓延っているのと同様に、ビースターズの世界には「闇市」が存在する。人身売買をされた草食動物の肉が売られていたり、金銭的に困窮した草食動物が自分の指を「食べていいよ」と売っていたり、暗黙のルールを破ってもいい裏社会が存在する。

この生物学的にどうしようもない力関係がある世界だからこそ、草食動物は警戒心をマナーとしてわきまえていて、肉食動物はそこに同情しつつもちょっとした居心地の悪さみたいなものを感じている。人間社会においても誰もが生きやすい社会として多様性を強調しつつも、生まれつき持つものによってあたりまえとして持っていなきゃいけない諦念やら妥協みたいなものはあるんじゃないかと、個人の主観ではあるが思う。でもそれを発信して社会を疑うと「差別」だの「排他的」だの現世に抗っている人として扱われて厄介なことになる。そんな元々もやもやと感じていたものが動物世界という明らかに根源的な対立が発生する世界で描かれていて、世界観にどっぷりとはまり込んだ。

◎ゴールデンカムイ

アニメをシーズン2までNetflixにて観て漫画をパラっと読んだ。
極寒の地、北海道にて隠された金塊を探す命スレスレもスレスレのサバイバルストーリー。加齢の概念をぶち壊したのかなっていうくらいに強い土方歳三おじいちゃんが登場する、ゆえに時代は明治。
主人公は日露戦争の激戦で壊滅的になった軍隊の中で唯一生き残った杉元佐一。どんなに詰んでいても生き残る、生への執着心とエネルギーが人一倍に漲っている武勇伝を多く持つがゆえに「不死身の杉元」の異名を持つ。
そんな杉元が自ら兵士としてのキャリアを退き、旅路の末に知ったのは巨額の金塊の存在。金塊のありかは網走監獄を脱獄した囚人たちの体にいれられた入れ墨に記されている。金塊を探し出そうとした道すがらに目的は違えど利害の一致したアイヌの少女アシリパと共に、金塊を手に入れるべく囚人を探し出す旅が始まる。

生きるか、死ぬか。奪うか、奪われるか。常に究極の2択を迫られる、異次元の危険と隣合わせの局面の数々に冷や汗が止まらない。今まで自分が見ていたそれとは異なる北海道の顔を沢山知ることができる。
アイヌ民族の民俗文化における描写がとても丁寧で、言葉や狩りにおける価値観、極寒の北海道を生きる上でのハウツーをアシリパが教えてくれる。杉元がアシリパのことを常に「アシリパさん」呼びして、アイヌにリスペクトを持った姿勢が一貫しているからこそ、より魅力的な文化に映っている。特にアイヌ料理がどれも美味しそうで、ヒンナヒンナ(アイヌ語で美味しいの意味)言いながら食したい気持ちでいっぱいになった。
そしてシリアスな爆裂サバイバル攻防だけでなく、ギャグ路線で全力で突き抜けていくスタイルも本作の魅力。ギャグの畳みかけ方と放送ラインギリギリのグレーな線引きには銀魂に近いものを感じた。アシリパさんの変顔、いるだけで面白い白石とだんだん扱いが雑になっていく谷垣ニシパがツボだった。

◎ヴィンランド・サガ

アニメをシーズン1までNetflixにて観て漫画をパラっと読んだ。
11世紀の北欧の地で、残酷かつ豪快な振る舞いでその地を踏み荒らしたヴァイキングの生き様がテーマになっている。
主人公のトルフィンは、かつて「ヨームの鬼」と恐れられていた元ヴァイキング、トールズの息子。しかしある日、アシェラッド率いるヴァイキングの一味に手によって、トールズは息子をかばった末に殺されてしまう。目の前で父親を殺され、6歳ながらに復讐心に燃えるトルフィン。紆余曲折の末、アシェラッドの一味としてヴァイキングに加わり、本人公認の中復讐の機会をうかがいながら共に旅をする。(第1部あらすじ)

トルフィンとアシェラッドの関係性が単に「恨む人と恨みを買った人」に留まらず、利害関係の一致から共闘したり、戦士としての生き様を学んだり、反発するトルフィンよりもアシェラッドが常に一枚上手の親子のような不思議なつながりを持って描かれ、ストーリーを進める原動力の一つになっている。戦士として頭一つ分抜けた秀でた剣術のスキルを身に着けたトルフィンだが、いざアシェラッドとの決闘の機会となると、復讐心で理性を失い、いつも敗れてしまう。そんな彼の姿を、見守りながらヴァイキングらしく一撃を以て冷静に対峙するアシェラッド。大切な誰かの死の喪失から心底憎い人がいても、その人を恨むだけに時間を費やしていては身を滅ぼしてしまうだけ、そんなメッセージをトルフィンはアシェラッドから暗示されているような気がした。

本作でヴァイキングという存在を初めて知ったのだが、こんなにも残酷非道な暴君だとは思わなかった。船旅の末に行きついた集落の住民を皆殺しにして、食べ物や生活用品を強奪して休暇を過ごす、恐ろしき正面突破スタイル。もちろんトルフィンもそのスタイルのお手伝いをするのだが、齢14歳にして住民を騙し強奪に加担する様は見ていられなかった。

そんなヴァイキングの生き様を以て、トルフィンの父親トールズは「本当の戦士には剣などいらない。誰にも敵などいない。」とトルフィンを説いていた。この「本当の戦士とは何なのか」がこの作品の一つのテーマになっており、トルフィンが様々な身分を転々とする中で自分で解を探し出していく物語になっている。
ゆえに、トルフィンの顔つきがライフステージごとに驚くほど変化する。復讐に燃えた目に光の消えた少年から一変、奴隷編では農業に勤しむ精悍でどこか悟りを開いたような顔つきになっている。
同じ人間だと分かるのに、人相の変化でその人の人となりや生き様を表現する細やかさに驚くと同時に、これからの人相は今の積み重ねなんだとこちらも悟る。

アラバスター

Kindleで1巻無料のため試読。
表紙のちょっと怖い顔色の彼が主人公。黒人アスリートとして社会的に理不尽な扱いを受け、恋人にも裏切られて劣等感がピークに達した主人公ジェームズ。すべては黒い肌が原因なんだと己の人種を恨んだ果てに、怪しい人体実験を行い秘密の光線を作り出した博士の研究室へ忍び込む。彼の狙いは皮膚が透明になるレーザー光線。自分の容貌に嫌悪感を抱いたアラバスターがその光線を許可なく浴び、透明な皮膚から血管のみが浮き上がった見た目に変身。
実質的に人種という枠組みに属さなくなった彼は自らをアラバスターと名乗り、世の中の見せかけの美しさを心の底から憎み、制裁を加えていく物語。
人体実験の弊害で全身透明になってしまった女の子、亜美を「世界一美しい」と称賛し、入れ込んでいく様子がオペラ座の怪人のよう。指でナッツを弾いて敵を攻撃していくスタイルが彼の主流らしく、弟子にナッツ飛ばしを訓練している場面はシュール。

MW

Kindleにて1巻無料だったので試読。
主人公は、軍の化学兵器MW(ムウ)の漏出事故による島内の大量殺人事件で運よく生き残った2人の男性、結城と賀来。
過去の事件のショックによる精神倒錯から良心とモラルを失い、表の顔は銀行員ながら裏の顔は凶悪な知能犯となった結城と、過去に救いを求めるように神父になった賀来。政府と軍が二人の運命を決定づけた過去の漏出事件を隠蔽したことから、結城は政府や軍の重鎮を巧妙に貶め、賀来に懺悔と称して体を求め、殺害に協力させる。
1巻は「自らの行いに救いを求める」という結城と賀来の行動としてのアプローチはあれどストーリーは救いようがなくて、最近読んだ漫画の中でもトップクラスのしんどさがあった。

きりひと讃歌

Kindleにて1巻無料だったので試読。
身体全体が毛におおわれて犬のような見た目に変貌した果て死に至る不治の病、モンモウ病の謎を突き止めることに尽力する青年医師、小山内が主人公。「モンモウ病がウィルス性の感染症ではなく、地理的な条件に依存する風土病である」という主張を立証すべく罹患者がいる徳島県の村へ赴いた末に、小山内本人がモンモウ病に罹患してしまうところから物語が始まる。
実は小山内が徳島の村へ派遣されたのは、院長の座を狙うべく「モンモウ病が感染症だった」と都合よく結論付けた論文を発表しようとしている上司の策略で、案の定小山内は死んだことにされてしまう。
見た目によって拒絶され、医師として戻る術もなく、挙句の果てには台湾マフィアご用達の見世物小屋に売り飛ばされるまでに落ちぶれて人生が激詰みする主人公。1巻はとにかく詰みまくって終わった。
進撃の巨人の序盤の人間側の絶望感を一人で背負っているくらいに詰んでいる、気がする。

話の途中に別のモンモウ病患者で南アフリカで修道女として働いていたが、牧師によって幽閉されてしまった女性エレンが登場する。
二人のモンモウ病患者が社会的に虐げられる中で、「救済の最適解」のようなものを探し求めていく、かなり壮大なテーマを背負ったヒューマンドラマの要素がちらっと顔を出した状態で1巻は終わる。
医療現場の闇を描いているだけではなく、四面楚歌の極限の状況に陥った人の救済がキリスト教のモチーフと共に描かれていた。

王様ランキング

よく広告で表示される漫画。primeで配信中のアニメが面白かったので漫画をLINEマンガで読み進めている真っ只中。
話せない、耳が聞こえない、人一倍優しい心の持ち主の一国の王子、ボッジが主人公。

可愛い絵柄の穏やかなおとぎ話だと思ってアニメを視聴してみたら、話が思わずところで二転三転し、味方だと思っていたキャラクターが意外な立ち回りを見せる。(逆もしかり。)
ものすごく複雑な世界観がある訳でもなく、こうした予想外の展開が当たり前のように展開されていてアニメの配信スピードでは飽き足らず、漫画を読むに至る。
ストーリーを端的に言えば、ボッジが逆境に抗いながら精神的にも肉体的にも強くなっていく話なのだが、起承転結の「起」の部分からネタバレに値してしまうようないい意味で拡散しにくいお話なので詳細は控える。

登場人物それぞれの行動規範の根本が「誰かのために」という自分以外の大切な「誰か」が幸せになれるかを基準にしており、時には自己犠牲も厭わない姿勢で行動を起こす。ゆえに、敵味方の裏切りはあれど優しい世界観が一貫しており、読んでいて心が浄化されるような内容になっている。

おわりに

読みかけの漫画を読みたい。「花束みたいな恋をした」という映画で、社会人になり忙殺された男の子が「映画も本も頑張っても頭に入ってこないんだよ」と吐き捨てるセリフがあり、劇中で最も戦慄した。
自分が好きだった娯楽に浸りにくくなる状況を生み出してしまうくらいに社会という荒波は厳しいらしい。荒波サーフィンに全力投球する未来があれど、今楽しんでいる娯楽や思い出がゆくゆく自分の帰って来る場所の一つのままであればと思う。そんな「おかえり」を実感できる場所を作るような気持ちで雑筆に至る。



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