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メルヘン猥談BAR

20代前半の頃
僕は洋服好きの倉田と飲みながら街を徘徊していた。
倉田という奴はいわゆる ぶっとんでる奴だ。

いきなり叫んだり、海に飛び込んだり。
キャッチのお兄さんの真似をして数キロ纏わりついてきた事もあった。

面白い事には顧みずになんでもやってくれるので
刺激不足になるとコイツと遊んでいた。

今回の徘徊の終着点はメルヘンなBARだった。
キリンやらゾウやらワニなど まるでインフルエンザにかかった時に見る
変な夢のようなアートなお店だった。扉は開ける勇気など微塵もでなかった。

倉田は違った。 飲むっしょ‼️
なんの躊躇もなく常連のように来店した。

倉田は元気な声で2名でー❗️
僕はこいつハート強いなと思った。
店内はなぜか女子だらけ。倉田はどんな状況だろうと臆することはない。

店内は暗めでこじんまりしたカウンターと
奥にソファと ステージマイクがポツンと設置されていた。


深夜1時 僕と倉田はハイボールを注文した。

青のニット帽がよく似合う店主がボソっと 今日女子のイベントなんだよ
ニヤニヤした店主が わ、い、だ、ん! 今日は週に一度の猥談BAR!
お兄さん達も楽しんで行って❗️
ぼくは嫌だ恥ずかしい帰りたいと思った。

倉田はニヤニヤしていた。
もうこれは止められない。 覚悟した瞬間でもあった。


20代の子達と男二人。
それぞれのエロエピソードをマイク越しに発表した。
すごく清々しい気分だ❗️開放感がすごくて なんでもできるような気がした。

倉田はエロエピソードなくて嘘ついてたが たのしそうだった。

帰り際に店主が一曲作った曲を披露してくれた。

ポロンポロンとギターが鳴り響く 心地よい気分。

それから5年たってお店に立ち寄るとメルヘンな外観の店は
跡形もなく無くなっていた。
本当に存在したのだろうかと思うくらいなにもなかった。

あんなに話した倉田も 疎遠になった。
あいつとここで話した内容ももう何一つ覚えていない。

最近過去を何かのトリガーで思い出すけど

あれは本当に過去で存在したのか 区別がつかなくなることがある。

そんなことを思いながらもう活気のないシャッター街をトボトボ歩いた。


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