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狩猟未経験者に、リアルな狩猟の世界を

本稿は『けもの道 2017春号』(2017年刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。

【ご注意ください】狩猟を行なうには狩猟免許の取得、猟具等の取得・所持の許可、狩猟者登録などの手続きが必要なほか、狩猟期間や猟法、狩猟できる区域や鳥獣の制限等があります。狩猟制度に関する情報については「狩猟ポータル」(環境省)等でご確認ください。

岐阜県を中心に狩猟ツアーなどを開催している猪鹿庁合同会社(安田大介代表・岐阜県郡上市)が、狩猟の世界に新たな人材を呼び込もうと企画した「ハンター倍増計画」の第二弾。

インターネットが発達し、好きな情報が手に入れられる現在も、やはり敷居の高い「狩猟」と「猟友会」の世界。これらを同時に体験できるという、狩猟未経験者には垂涎のイベントだ。若手プロハンターの瀬戸祐介さんの指導の下、リアルな狩猟の世界を垣間見た非狩猟者(=参加者)たちの心境の変化やいかに!?

瀬戸祐介せとゆうすけ氏。猪鹿庁・捜査一課所属。年間出猟300日、150頭を捕獲するプロハンター。20代前半にアラスカの原野にてボウハンティングなどの原始生活で得た経験を、現代狩猟に活かしている

写真・文|佐茂規彦
取材日|平成28年11月19・20日


狩猟を “体感” する2日間

今回のハンター倍増計画は2日間の日程で行われた。初日は小雨で、スケジュール変更が発生。本来であれば、瀬戸さんと山を歩きながら獲物を探すアニマルトラッキングから開始するはずが、冒頭の参加者同士の挨拶終了後、括りわなに掛かった鹿を回収しに行くことに。鹿の足跡を探しつつ徐々にテンションを上げていくという余裕など参加者には与えられない。

急展開への対応は、自然を相手にする狩猟活動そのものにも直結する。鹿の捕獲後は、剥皮・解体まで行い、夕方にはBB弾を射出する玩具のエアソフトガンを使った射撃大会、そして夜は地元の飛騨猟友会青年部のメンバーを交えての懇親会が行われ、同年代の実猟家から狩猟を始めるに当たって重要な人脈作りなどを教わりつつ、ジビエ料理に舌鼓を打つ。

2日目の朝食には、参加者自らが前日に解体した鹿肉が、低温ローストされテーブルに並ぶ。午前中は、瀬戸さんの猟場を一緒に歩き、山の中で獲物の気配を探りながらハンターの気分を味わった。

充実の2日間の “体感” で、参加者たちの狩猟への「興味」の多くは、「意気込み」へと変化した。ハンターが倍増する日も近い。

鹿の捕獲から解体までを一気に

瀬戸さんが止め撃ちした鹿は、参加者自らが当日の雨で出来た沢でその体を洗い、捕獲場所から搬出した。

山裾では参加者が見学する中、瀬戸さんによる鹿のハラ出し(内臓摘出)が行われ、宿舎に戻ると今度は参加者も一緒になって剥皮から解体までを済ませる。動物を肉に変えていく作業は非常に淡々としたものだ。

この作業を受け入れられるか否かが、狩猟の世界に入る際の関門の一つであることは間違いないだろう。

写真で体感するハンターの世界

▲括りわなに掛かった鹿。オスで約2才と予想される。ケモノ道の「テッカリ」(「照りが出るほどよく踏んでいる」の意)に掛けるのがポイント。山奥に行けば獲物と出会う確率は高いが、引き出しや回収のことまで考えて場所を選ばなければならない。

▲首に止め撃ち後、すぐに血抜きを行う。

▲勢い良く血が吹き出るのは、的確に動脈を切った証拠。肉を美味しく食べるために必須の最初の処理となる。

▲右の円内がサベージの止め撃ちの痕で、左の円内はナイフによる血抜きの痕。まだ心臓が動いているうちは、心臓ではなく、首の根元から動脈を切った方が抜ける血の量が多いという。

▲捕獲した鹿は、参加者の手で山裾まで運ぶ。もちろん息絶えた大型動物を見るのも触るのも初めてという人がほとんどだ。狩猟経験者からすれば「大人数なので運ぶのがラクだ」と一種の喜びを感じる場面だが……。

▲沢で内臓を取り出す瀬戸さん。初め遠巻きに眺めていた参加者たちも、恐る恐る近づいていく。中には積極的に足を持つ “即戦力” の有望株の姿も見られた。

※残滓は埋設など適切に処理し、肉は販売しておりません。

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