▼医療 岩手県のSmoke-freeに期待

神子田朝市の「前向き」な禁煙徹底
グローバルに有名になりつつある神子田朝市が営業時間内の場内禁煙を徹底しました。その一連の動きと関連記事をここにまとめます。

一連の動きのポイント
公共施設の受動喫煙防止対策の徹底が進む中、今回の件は下記の3点において重要であると認識します。
・朝市が場内禁煙を前向きにとらえていること
・運営は民間組合であっても朝市は「多くの人が集まる場所=公共の場」であること(保健所の指導あり; 「声」2/16付より)
・保健所の指導があったにせよ、読者の声に呼応して禁煙が徹底されたこと
・ Smoke-freeに理解のあるメディアに取り上げてもらったこと

ここまでのいきさつ
・2月2日、岩手日報の読者欄に、朝市の禁煙マナーについての指摘があった
・同日、朝市組合長が新聞記事をみた保健所から指導を受けた
・翌日、朝市組合長は営業時間内の場内禁煙の徹底を朝市組合員に周知した(組合長は以前から禁煙徹底しなければと思っていた)
・2月16日、岩手日報の読者欄に、禁煙を徹底したという組合長の投稿記事が掲載された
・2月19日、同記事の経営者の前向きな姿勢に感銘を受け、読者欄に投稿した
・2月27日、朝市組合長に独自取材を行った
・3月8日、取材班の記事が岩手日報に掲載された

掲載記事の本文から削除されたが、投稿原文にはSmoke-freeという用語を使用した。Smoke-freeはWHOも推進している。
また、今回、公共の場においては健康増進法に基づいて保健所が禁煙の徹底を指導することがあることも勉強になった。

法律の見直し
ここでもう一度、改正健康増進法の受動喫煙対策の項目を見直してみると
●学校、児童福祉施設、病院、庁舎など第一種施設では「敷地内禁煙」(2019年7月1日施行)
●事務所、宿泊施設、飲食店は屋内の「原則禁煙」(2020年4月施行)。但し、2020年4月時点で現に存して敷地面積が100㎡以下の飲食店については「経過措置」をとることができる
●屋外や家庭では、子どもや患者等に「配慮」することとされている(2019年1月24日施行)
となっている。

この「前向き」な動きが岩手県内・全国に広がることに期待
事例をもとに、どのようにしたらこの「前向きな」動きが全国各地で広がるかを思考実験する
筆者の事務所の近くにオガールエリアがある。オガールエリアの禁煙マップは下図の通りである。

このマップに着目すると、オガールエリアは改正健康増進法を遵守している。

しかしながら、以下の3点が課題であると感じる:
●喫煙スペースが実際と異なると考えるので、マップの更新が必要である
●その喫煙スペースが家族連れを含む多くの人が利用するスペースに隣接している。よって、子どもへの「配慮」がなされているとは言い難い。
●オガール広場などオガールプラザやオガールベース、および役場庁舎に囲まれたエリアも、家族連れを含む多くの人が利用する。したがって「配慮」が必要である。しかしながら、禁煙を呼びかける標識や掲示物が必要であるが、実際にはない。ただし、これら標識を立てることはせっかくのオガールの景観を損ないかねない。

課題解決に向けて
これらの課題、特に後半2つの課題をどう解決すればよいのか。
それはオガールエリア全域の禁煙徹底である。全域とは、飲食店、広場、スポーツ施設を含む全域である。但し、駐車場は喫煙可能スペースとしてよいだろう。

但し、先に述べたように、既にオガールエリアは改正健康増進法を遵守している。したがって、改善を実施するための法的根拠は、既存の別の条例を遵守するために改善策を講じるするか、または新たに条例を設ける必要がある。

まず、既存の協定には「オガール景観協定」があるため、これを利用する可能性を考える。オガール景観協定の具体的な内容はインターネット上では公開されていない。しかし、景観協定で指定されている地区は下図の通りであり、オガールタウンも含まれている。

また、景観協定が準じている法は景観法である。その目的は、「この法律は、日本の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境創造及び個性的で活力ある地域社会実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする」(第1条)。

まだ日本では高く評価されていないように思うが、WHOの提唱する概念の1つにHealth in All Policiesがある。この概念に基づくならば、上記の「国民生活の向上」は公衆衛生を意味すると捉えることが出来る。実際に、上記の表現は、医師法の第一条「医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」と通じるところがある(筆者はこの観点から禁煙の動きが広がることを期待している)。

また、新たに条例を作る場合に参考となるのは、東京都の子ども受動喫煙防止条例である。これを各自治体で制定し、より具体的に身近に、特に子どもなど将来世代のために禁煙の意識を高めていくのが良策だと考える。

ただ、上記の協定や条例の制定だけでは喫煙者を排除することにつながりかねない。そこで、喫煙者が禁煙できるような支援体制も必要である。禁煙治療は昨今目覚ましく発展しており、そのうちの1つとしてスマホ上で禁煙治療を行うアプリ「Cureapp」があり、つい最近禁煙補助として保険適用となった。このアプリを利用するための補助金を国や自治体から支給しても良さそうだ。喫煙者個人の人格までを排除するのではなく喫煙者もSmokeーfreeになるということである。

以上、禁煙の動きをオガールでも広げるためのアプローチを紹介した。しかし、紫波町やオガールがこれらを実践できるかどうかは、法規制に基づいて行動できるかどうかではなく、そもそも大前提として、誰もが安心して暮らせるまちづくりのために何を実践できるかというオガールの「哲学」にかかっている。

紫波町だけでなく全国の自治体で、慣れ親しんだまちを将来世代に渡って住み心地の良い場所にし続けるために、今できることに取り組んでいきたい。

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