楽しかったんだよね？今なら分かるよ。　〜私を忘れた父〜

とにかく頑固。ヘンクツって言葉が合うかな。母によく怒鳴っていた父。子供の頃は嫌でした。いや、大人になってからも気難しい父と距離を置きたかったのが本心ですね。とても可愛がってもらったのだけど。愛されているのは充分分かっていたのだけど。

父は42歳で脱サラして会社を作りました。父の夢だったのでしょう。事務所を作り、人を雇い、会社名を決めて、それはそれは身を粉にして働いていました。当時中学生だった私は、働くことの大変さを目の当たりにして、「社会人になる」というのはこういうことかと思っていました。

そこから30年以上、父はひたすら走り続けました。私はずっと、帰宅した父はいつも心底疲れ果てている……と思っていました。

その間、私も社会人になり、結婚して二児の母になり、そして40歳で教室を開校しました。個人事業主です。奇しくも、父とほとんど同じ人生をたどり始めました。

それから13年。今なら分かる。

お父さん、仕事楽しかったんだよね？疲れ果てて帰ってきてたけど、楽しくて楽しくて仕方なかったんだよね？頑張りたいことを頑張りたいだけ頑張ったんだよね？分かるよ、お父さん。だって、今の私、同じことをしてるから。
私も疲れ果てて帰るけど、楽しくて楽しくて仕方ない。あれもやりたい、これもやりたい、仕事場がパラダイス!!

当時の父のことがわかるようになり、「同士」として話ができるようになった途端、父が認知症になりました。
大切にしてきた会社のことも分からなくなり、私のことも記憶から消えました。最愛の母のことすら、誰なのか分からなくなる瞬間まで出るようになり、今年施設に入所しました。

「思い切りやれ。お前ならできる。お前は周りの人に恵まれながら生きてきた。これからもそれは続く。お前が凄いんじゃない。周りの人たちが凄いんだ。それを勘違いしなければ、お前は成功する。」

本当にその通りだったよ、お父さん。勘違いなんかしない。私を取り囲んでくれる人たちは、本当に凄い。このまま走るよ。思い切ったこともやってみる。できなかったら………できるまでやってみるよ。

このブログを父が読むことはないだろうけど、ここに残すことで、父への感謝と尊敬、私の今後の決意表明にさせていただきます。

あ、1つだけ父と違うところに気がついた。
父は人生の中で、野球に没頭した高校時代が一番楽しかったと言っていたけど、私は今が一番楽しい。ちょっとだけ、父に勝った気分(笑)。

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