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今月の「私の履歴書」

今月の日本経済新聞の「私の履歴書」は、住友信託銀行(現在の三井住友信託銀行)で社長を務められた高橋温さんの連載でした。高橋さんは1998年の長銀破綻の直前、政府より住友信託が日本長期信用銀行(長銀)を救済合併することを求められながら、長銀の経営実態が明らかにならないと合併には応じられないと頑として合併を拒否された方でした。その一徹ぶりが今でも記憶に残っていたため、今月1日からの連載を欠かさず読んでいます。

特に長銀との合併破綻に至る経緯はこと細かに書かれていて、最後は当時の小渕首相からも合併を求められたものの、合併に向けて必要と考えられた原則は変えず、最終的に合併話しが無くなった様子が描かれています。当時は今では想像できないくらい金融機関に対する行政の影響力が大きかっただけに、その対応は本当に勇気がいることだったと思います。

もちろん、住友信託が長銀を救済合併していたら、その後の金融を含む日本経済の展開が異なっていた可能性もゼロではありません。しかし、一民間銀行のトップである高橋さんにその責めを問うのは筋違いというもので、むしろバブル崩壊後の混乱の中で比較的健全に住友信託を経営させたことを評価すべきでしょう。

実は過去、住友信託銀行さんとはお仕事でご縁があることもありました。前々職では多くの銀行関係の方とお仕事することがありましたが、銀行業界の中では住友信託の社員さんは非常にフラットで気さくだった印象があります。そうした権威ばらない社風も、外部の権威に対する高橋さんの毅然とした態度に繋がったのかもしれません。

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