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独裁者が示す方向性のこわさ

先日、ドイツ史の専門家である大木毅さんの「独ソ戦」(岩波新書)を読みました。
独ソ戦とは、第二次世界大戦において1941年-45年にかけてドイツ(ナチスドイツ)とソ連が戦ったものであり、人類史上でももっとも悲惨な戦争と言われています。どれほど悲惨だったかというと、ドイツの犠牲者が1,075万人、ソ連の犠牲者が2,660万人にものぼったのです。大戦では日本も多くの犠牲者がでましたが、それでも310万人です。もちろんこれも大変な犠牲者数ですが、独ソ戦がどれほど壮絶だったかがうかがえます。

本書の中では独ソ戦を多面的に検証していましたが、私が一番印象に残ったのはドイツのヒトラーの戦争指導の姿勢でした。ソ連領内で戦争が行われているなか、戦場から遠く離れた地からかなり細かいことまで作戦の指示を出していたのです。現地の状況について間違った認識のもとに指示したり、現地の司令官の意見を取り入れずに指示したことが敗退につながったりしました。
また、共産主義を極度に敵視していたヒトラーは、ソ連を壊滅することにとらわれ、戦術上も必要な撤退さえ認めませんでした。こうしたことがさらなる悲劇を生んだのです。

その現地にいないトップが細かいことまで介入し、指示したことが裏目にでた典型のように感じます。
大きな方向性を示しつつ、現地のことは現地の状況を踏まえた判断を尊重し、方向性と違うときだけ指示する。そんなリーダーが理想かもしれませんが、

そもそも、ヒトラーが目指す方向性がソ連を壊滅することであり、この方向性が間違っていたことが、戦争全体を大きな悲劇に向かわせたのです。本当に独裁者が示す方向性のこわさを感じさせる戦争です。

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