内閣改造・自民党役員人事から感じる、人事の基準はトップの権力を維持することなのか
今週の日本政治の最大のトピックは内閣改造・自民党役員人事でした。
私は、今回の経緯をみていて、ふと24年前の1999年の自民党総裁選、及びその後の内閣改造のことを思い出しました。
1999年は当時の小渕首相が再選を目指した総裁選の年でした。小渕さんは無投票再選を望んでいましたが、これに待ったをかけたのが加藤紘一さんでした。加藤さんは派閥・宏池会を継承しており、最有力の将来の首相候補と言われていました。客観的には小渕さんの再選が確実だったものの、将来に向けた布石として加藤さんは総裁選に出馬されたのです。
当然のごとく現職の小渕さんが圧倒的勝利をおさめました。
しかし、このあと、人事で異変が生じたのです。まず、加藤さんが推薦した人材を小渕さんはことごとく拒否し、その代わりに加藤さんと対立する人材を登用しました。加藤さんの最大のライバルだった河野洋平さんを外務大臣にしたのは象徴的でした。
この人事に驚いた加藤さんは小渕さんに抗議したところ、小渕さんは「だって君は私を追い落とそうとしたじゃないか」という趣旨を加藤さんに言われたのです。まさに報復人事で、加藤さんつぶしでした。適材適所以上に小渕さんのすざましい権力への執着を感じたできごととして記憶に残っています。
そこで今回の内閣改造、自民党役員人事です。役員人事でフォーカスがあたっていたのは、岸田さんの来年の総裁選再選に向けて、幹事長を留任させるのがよいかどうか、ということでした。結局は幹事長を留任させたものの、その牽制として幹事長のライバルが選対本部長に就任したのは報道のとおりです。
また、内閣改造についても、前回の総裁選で対立候補となった閣僚が留任したことも、来年の総裁選に向けて語られるものもありました。外相の交代については、林さんは宏池会ホープとして岸田さんも期待しているのでB級ネタでは感じましたが、外相を長期間やることによる人気上昇を総理が警戒されたとの報道まで流れていました。ここまでくると、総裁選再選に向けて、が人事の最大の基準ではと感じてしまいます。
現実の世界として、トップの権力維持に人事が使われることはあるものの、ここまで総裁選再選が軸で語られると、この国の将来や政策についてはどのように考えられているのかと心配になります。また、こうした人事の濫用?は、有為な人材を失うもとになりかねません。
実際、小渕さんの加藤さんつぶしは、その後の「加藤の乱」につながり、加藤さんが首相としてリーダーシップを発揮する機会を失いました。
将来の日本をどのようにしていきたいのか、またどのようなリーダーを次に育ているのかがが人事の中でみえないと、政治はますます国民の信頼を失うと思います。