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「本離れ」はこのまま進んでいくのか

2024年の最初の読書として「読書と日本人」という本を読んでみました。これは西暦400年頃に中国から書物が入ってから(ちなみに日本に一番初めに入った書物は「論語」です)、約1600年超の日本の読書史について書かれた本です。
特に20世紀(1900年代)は「読書の黄金時代」として厚めに書かれています。
 
これを読んで感じたのは、1990年ころまで右肩上がりで伸びてきた読書人口は90年代に減少に転じ、今も減少し続けているものの、まだまだ書籍には可能性があるのではないか、ということです。
 
長い時間軸でみると、日本人は教育環境の整備にともなって識字率は高まり、特に明治以降は学校制度によって識字率はほぼ100%となりました。その後も高学歴化、知識の大衆化などにより、敗戦なども乗り越えて日本人の「知識欲求」は膨らみ続けてきたのだと思います。
 
その知識欲求に対して書籍が最大限対応できたのは1980年代なのです。もちろん当時からテレビや映画もその知識欲求に対応していましたが、こうしたメディアは人々が豊富な選択肢から選べるものではありませんでした。知識欲求に対して豊富な選択肢を提供していたのは書籍だったのです。
 
しかし、1990年代の後半あたりから大きな異変が生まれます。それはインターネットの出現です。インターネットはこれまでのテレビや映画にはないボリュームの情報量を提供することにより、それまで書籍が対応していた知識欲求に対応しはじめたのです。
 
この結果、1990年代以降、いわゆる「本離れ」が進んでいるのは周知のとおりです。しかし、このまま「本離れ」は進むのでしょうか。
 
私が仮説として考えたのは、「「本離れ」は進んでいるものの、知識欲求は減少していない。むしろ、あふれる情報に触発されて知識欲求自体は膨らんでいるのではないか。そして、知識欲求自体が膨らんでいるのであれば、書籍がその欲求に対応できれば、まだまだ書籍には可能性がある」ということです。
 
そのために書籍が取るべき戦略は、書籍が「インターネットや動画とどう差別化するのか」と、「インターネットや動画とどう補完関係をつくるか」ではないでしょうか。
前者はインターネットや動画が断片的な情報を提供するのに対し、書籍が体系的な情報を提供できる強みをどう活かすかです。また後者は書籍も知識欲求に対応する1ソリューションに過ぎないと考え、同じ情報発信のなかでも、書籍とインターネット、動画をどう組み合わせて情報発信するか、ということです。
 
この2つの戦略はどちらを取るか、ということではなく、状況に応じてうまく組み合わせるべきではないでしょう。1600年を超える書籍の歴史は大きな転換点を迎えているかもしれませんが、知識欲求に対応できる大きな可能性がまだまだあるように感じます。

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