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幕末・明治維新の変革期から考えるリスキリング

昨今、リスキリングということが言われていますが、歴史を振り返る中でも、学びが多い人は時代の変化を乗り越えやすい、ということがしばしばあります。
 
歴史学者の磯田道史さんが書かれた「武士の家計簿」という本があります。歴史書としては異例のベストセラーとなり、映画化もされました。
この本は、幕末期の加賀藩士であり、会計処理の役人であった猪山直之、成之の親子を描いた作品になります。
 
江戸時代は武士の時代であり、武士は元来軍事が重んじられる為、同じ武士でも会計処理の役人というのは軽んじられる立場でした。
 
しかし、江戸時代が進んでいく中で幕府や藩財政が厳しくなる中で、このような会計処理の役人は大事にされるようになります。こうした流れの中で、猪山直之は加賀藩の中でも地位を高め、出世していきます。
 
更に特筆すべきは、その子供の成之です。成之は幕末から明治維新に移行する中で、会計処理や事務処理能力の高さを買われ、明治政府の海軍の高官となっていきます。その出世ぶりは、没落する加賀藩の旧武士たちから羨ましがられたほどでした。
 
ここで磯田さんは面白い事象を書かれています。それは幕末から明治維新への移行期において、没落した旧武士と、成之のように時代の変化に対応でき、中には出世した旧武士の違いです。
それは、累代の重臣の家の出身という立場にあぐらをかいていた旧武士は没落し、学問をおさめ、何かしらのスキルを付けていた旧武士は時代の変化に対応できた、という違いです。
 
時代の変化とともに、世の中や社会の構造は変わってきます。その為、社会の構造のみを前提としたポジションにいると、その社会の構造が崩壊した瞬間にポジションを失います。
 
しかし、時代の変化とともに生まれるニーズに対して、学び、スキルを付けて行けば、世の中や社会の構造が変わっても生き抜く事ができます。
 
現代とは状況は異なるとはいえ、「武士の家計簿」からは、現在の人への投資、リスキリングに繋がる、時代を超えた本質を考えさせられます。

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