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稲盛和夫さんは、「憐れみの心」が深いリーダーだったのでは

稲盛和夫さんの講演をまとめた『経営 稲盛和夫、原点を語る』(ダイヤモンド社)を読み終わりました。600ページを超える大著のため、約2週間弱かかりましたが、読み応えがある本でした。
 
成功の方程式(能力×熱意×考え方)、アメーバ経営、フィロソフィ、、、稲盛さんが経営において持たれていた軸は明確であり、それは生涯に渡ってぶれなかったことが分かります。その考えは、京セラという枠を超え、KDDIやJAL、そして稲盛さん主催の勉強会、盛和会を通じて世の中の多くの企業に広がっていきました。それも国内だけでなく、米国や中国など世界中に広がっていきました。本書からはそのことを余すことなく感じることができます。
 
これは著書『リーダーは日本史に学べ』で少し触れたことなのですが、私はリーダーには「憐れみの心」が大事ではと考えています。「憐れみの心」とは、他人の苦しみや困りごとに対して共感する心です。
実は、稲盛さんはこの「憐れみの心」が深い人だったのでは、と私は勝手に考えています。それは次のようなことからです。
 
京セラさんの経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」です。
これは、京セラさんの創業当時、入ったばかりの社員たちが待遇改善を求めて稲盛さんの自宅に押しかけたことを通して、会社とは「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ものだと思われたからだと稲盛さんはお話しされています。
 
このお話し、私は省略されていることがあると思うのです。社員が待遇改善を求めて押しかけただけで、自然に「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ものだと考えるでしょうか。私はそうは思いません。
この間には、「社員たちは、このできたばかりで、小さな会社に入社したことに対して不安があり、苦しいのだな。かわいそうなことだ。そうした不安をもたないような会社にすることが自分の役割なのだ。」と稲盛さんは思われたからこそ、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」と考えられたのではないでしょうか。
 
社員がもつ将来に対する不安に共感し、そうした不安がないような会社にしようとしたことが、稲盛さんの経営者としてのエネルギーとなり、京セラは成長していったのです。
この「社員がもつ将来に対する不安に共感」こそ、まさに「憐れみの心」なのです。
 
もし社員が将来に不安をもつことなんかに共感しなければ、恐らく京セラは稲盛さんがお金持ちになれば十分程度の会社で終わっていたのかもしれません。
これが、稲盛さんが「能力×熱意×考え方」のなかで「考え方」が一番大事と言われていた真髄ではないでしょうか。
 
他人の苦しみや困りごとに対して共感する、稲盛さんのような「憐れみの心」が深いリーダーこそ求められているのではないでしょうか。

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