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読書からの学び

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ビジネス書、歴史書、哲学書を中心に年間120冊程度の本を読んでいます。その中から、これからのビジネス、人生の中で学びになると思ったことをご紹介していきます。
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記事一覧

彼らと比べて有利な点が一つある。彼らの前例があるという点だ。

先週、「ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか-民主主義が死ぬ日」という本を読んでみました。本書は、「ヒトラーはなぜ戦争を始めることができたのか-民主主義国の誤算」と合わせてドイツ・ナチスの歴史を語っているものであり、本書はその前半史になります。そのテーマのイメージからは読みにくそうですが、意に反して読みやすい本でした。   なぜヒトラー、そしてナチスは政権が取れたのか。第一次大戦に敗れはしたものの、その当時でも世界有数の工業国であり、かつカントやヘーゲルなどの哲学者を生みだした

おまえら、もっといかがわしくなれ!

先週、「起業の天才!:江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男」(東洋経済新報社)を読んでみました。本書は本当に面白い本で、あまりビジネス書をお酒を飲みながら読まないのですが、本書はお酒に酔いながらでも楽しめる本でした。内容もさることながら、著者の大西康之さんの表現力も高いと感じます。   さて、江副浩正さんが創業したリクルート。私たちの世代(団塊ジュニア世代)にとって、政界に多くの未公開株をばらまいたリクルート事件は思春期に流れていた大きな政治スキャンダルでした。当時は今

ロシアで繰り返される、融和のあとの強権。中庸は難しい。

1週間後の3月17日にはロシアの大統領選挙が予定されており、プーチン大統領の5選が確実視されています。直近でも政敵ナワルヤナ氏が北極圏の監獄で亡くなるなど、その強権ぶり、専制ぶりは健在と言わざるえません。   ロシアは、プーチン大統領に限らず、 歴史上に強権的、専制的な君主、リーダーが多数いました。 ロシア帝国時代の皇帝であったピョートル大帝、エカチェリーナ女帝、またソ連時代のスターリンなどは有名なところです。   先日、講談社から出版されている「興亡の世界史」シリーズの「ロ

面白ければ、新聞やインターネットで読めても、書籍でも読みたくなる

新聞やインターネットで読める内容なら本で読まなくてもよいと思いそうですが、そうでしょうか。 本当に面白い内容だったら、新聞やインターネットで読んだあとでも、本で改めて読みたくなることはないでしょうか。   日経新聞にて22年3月から23年3月まで土曜日の教養欄に連載された、直木賞作家の佐藤賢一さんの「王の綽名(あだな)」というコラムがありました。これは、ヨーロッパの昔の王のあだなと、あだなの由来となった王の生涯を紹介するものでした。「肥満王」、「単純王」、「修道士王」、「金袋

不本意な環境を受け止めて名首相となったお話し

名宰相(首相)として歴史に名前を残した人でも、不本意な時期が過去にあり、そんな時期の経験が後の活躍に役立った。転じて、不本意な環境でも前向きに受け止めて懸命に取り組めば、その後につながることを感じさせるお話しです。   先日、敗戦直後の1946年から日本の独立を実現して1954年まで首相をつとめた吉田茂氏の回顧録「回想十年」を読んでみました。1956年くらいから書かれたものなので、さぞかし読みにくいものかと思いましたが、びっくりするくらい読みやすい本で、現代向けに大きく編集し

物語づくりとビジョンづくりには通じたものがある

先日、「物語の作り方」(新井一樹著)を読んでみました。筆者の新井さんはシナリオセンターさんという、シナリオライターや小説家などを養成する学校を主催していて、本書を通してシナリオづくり、物語づくりの一端を紹介しています。なお、このシナリオセンターさんはジェームス三木さんはじめ、多くの著名人を輩出している老舗のようです。   本書を読んでいて感じたのは、企業のビジョンや戦略づくりも、「物語づくり」に通じていて、似ているものがあるなあ、ということでした。 物語のテーマは企業のミッシ

「家康、江戸を建てる」の主人公は家康ではない

先日、直木賞作家の門井慶喜さんが書かれた「家康、江戸を建てる」を読みました。数年前にNHKでドラマ化されてから気になっていましたが、やっと原作を読むことができました。   タイトルからは、寒村であった江戸が大都市に成長する礎を築いた徳川家康が主人公のようにも感じます。 しかし、この小説の主人公は徳川家康ではないと思います。主人公は、家康の江戸の町づくりを支え、貢献した人たちです。   江戸が沼地とならないように利根川の流れを変えた人。貨幣を新たに作った人。 江戸の人たちが飲む

ブッククオリティさんと出会えてよかったです

今日は去年の2月から7月に通った出版ゼミ、ブッククオリティさんの5周年パーティーが丸の内であり、参加してきました。うまく写真が撮れませんでしたが、いろいろな催しもあり、また期を超えた交流があり、とても楽しい会でした。 年間120冊以上は本を読むくらいの本好きながら、今まで自分が本を出すという発想が(残念ながら)ありませんでした。 それが変わった一つが、現在勤務している小宮コンサルタンツが書籍を出すことを薦めてくれる環境であったことはあります。そこについては会社にとても感謝

行き過ぎた効率化が「魚離れ」を加速している

先週は「魚ビジネスThe FISH BUSINESS」(ながさき一生著)を読んでみました。魚ビジネスに多角的に関わる著者が、日本の魚ビジネスの現状や問題・課題をできるだけ網羅的に分かりやすく書かれたものでした。   本書を読むなかで、なぜ「魚離れ」が進んでいるのかについて考えさせれました。 その理由として、一般的に考えられているような食の多様化(特に肉食化)や、料理の簡素化が志向されるなかで、調理の手間がかかる魚が避けられることはあると思います。   しかし、本書を読んでいる

なぜ社長が新事業・新商品開発を自ら進めないといけないのか

先週、中小企業の経営コンサルタントとしてカリスマ的存在であった一倉定先生の「一倉定の社長学 第4巻 新事業・新商品開発」を読んでみました。この「一倉定の社長学」は、各巻とも具体的な事例が豊富であり、また本質的なところで現代でも通用することが多く、いつも学び多いものです。   本巻は「新事業・新商品開発」がテーマですが、一貫して書かれていることは新事業・新商品開発の展開にあたり、社長自身が先頭に立ち、直接お客様や得意先様の声を聞いて、事業・開発を進めることの大事さです。新事業・

「本離れ」はこのまま進んでいくのか

2024年の最初の読書として「読書と日本人」という本を読んでみました。これは西暦400年頃に中国から書物が入ってから(ちなみに日本に一番初めに入った書物は「論語」です)、約1600年超の日本の読書史について書かれた本です。 特に20世紀(1900年代)は「読書の黄金時代」として厚めに書かれています。   これを読んで感じたのは、1990年ころまで右肩上がりで伸びてきた読書人口は90年代に減少に転じ、今も減少し続けているものの、まだまだ書籍には可能性があるのではないか、というこ

現代にも読まれて欲しい昭和初期の講義録

先週、戦中から戦後の教育者として高名であった森信三先生の「続修身教授録」を読みました。「続」とあるように本編としての「修身教授録」があります。こちらは当社の今年の人間学講座のテキストだったこともあり読んだところ、心に大変響く本でしたので、本編に続けて続編を読んでみました。   本書は、森信三先生が「修身」の授業でお話しされたことを伝えている講義録です。 「修身」とは現代の道徳に相当する科目で、森信三先生は学校の先生を目指す学生に対して修身を教えていました。有名な哲学者である西

興味が尽きない安田善次郎の生き方、姿勢

最近、みずほの前身の一つの富士銀行や、損保ジャパン(安田火災)、明治安田生命などの金融グループだった安田財閥を設立した安田善次郎に強い興味をもっています。 もっと安田善次郎を知りたいと思い、「銀行王 安田善次郎」(北康利著)を読んでみました。   本書を読み進めると、安田善次郎が鉄道、港湾や工業などの社会基盤整備に金融面から積極的に貢献したことを知るとともに、そんな大業を成し遂げながらも、生涯に渡っての地道な勤勉さ、質素さ、謙虚さが印象的です。   そうした安田善次郎の生き方

高校時代に気になっていたガリバルディというおっちゃんについて

高校時代に世界史を勉強していた時、19世紀まで分裂していたイタリアが1861年に統一する中で気になっていたことがありました。 イタリア王国が生まれるにあたり、北部はサルディーニャ王国という国を中心に統一が進んでいたのですが、南部は両シチリア王国という勢力が強いために南北統一が難しいと考えられていました。 そこに、ガリバルディという人物が現れ、両シチリア王国を征服し、イタリアは南北統一できたのです。   「なんだこのガルバルディというおっちゃんは、唐突に現れて」と高校で世界史を