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電気のおはなしその74・電気通信(2)電話

電流の断続、すなわち電信によって遠隔地に瞬時に情報が届けられるようになれば、次は電話、つまり人間の声をそのまま遠隔地に届けることで、直接通話したいという欲求が生まれます。初めて電話の実験に成功したのは1876年、アレキサンダー・グラハム・ベルだと言われています。ベルは、電磁石による電磁誘導を利用し、音声を電流の変化に変えて送り、そして電磁誘導によってスピーカーを駆動することで音声を伝えたと言われます。

この頃、多くの国で多数の研究者が同様の実験をしていたので、恐らく同時多発的に同じような実験を成功させた研究者が居たようです。歴史上本当に初めて電話の実験を成功させたのはベルではないという話もありますが、特許戦略などの上手さなど様々な要因もあり、今では一応ベルが初めてだということになっています。

ちなみに、ベルがこの実験を成功させたとき、たまたま日本人が研究者としてベルの研究所に派遣されていたため、世界で二番目に電話で通話を行ったのは日本人であり、またベルが発明した電話機が最初に輸出されたのは日本であるという逸話も残っています。

さて、ベルが最初に発明した電話は、マイクやスピーカーの性能が低く、実用という点ではまだまだでしたが、エジソンが高性能なマイク(カーボンマイク)を発明するなど技術革新が進んだ結果、実用的な電話が誕生します。
「電流の強弱を音声によって変化させ、その電流によってスピーカーを駆動して音に戻す」というのは、現代の我々にとっては当たり前の話ですが、百数十年前の人たちにとっては、「電流の強弱を変化させて音声を載せる」という概念そのものが理解しがたいものであったはずです。

1800年代終わり頃から1900年代前半は、人間が電気を利用するという技術の革命が続いた時代です。最初は「電流の断・続」を利用した電信に始まり、音声に電流を載せる電話、そして真空管の発明による信号増幅、ついには電波の利用と、革命的な技術が次々と発明・発見されました。

「電波」というのは空間を伝搬する電気なのですが、マクスウェルが電波の存在を理論的に証明したのが1864年、ヘルツが電波の存在を実験で証明したのが1888年、マルコーニが大西洋横断の無線電信通信に成功したのが1901年ののことです。今や大多数の人たちの生活に欠かすことが出来ない携帯電話ですが、120年ほど前には携帯電話も何も、電波が空間を飛んでいく、という概念すら未知の世界だったということから、如何にこの百数十年の進歩が凄いかということが分かります。

タイタニック号沈没事故は1912年の出来事ですが、この頃船舶に装備されだした無線通信装置により遭難信号が発せられ、それを聞いて救助に駆け付けた船によって乗船者の1/3程が救助されています。

というわけで、しばらくは電波の話をしていこうと思います。放送の開始や変調、デジタル通信など書きたいことがいっぱい有ります。

以上。

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