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お客様、申し訳ございません!-I’m sorry の真意


To apologize or not to apologize, that is the question!
謝るべきか謝らざるべきか、それが問題だ!


冒頭からシェークスピア調ですが、今回は「謝罪」についてのお話。これ本当に難しい問題でして…。

私は外資系航空会社のCAとして勤務しています。外資系の会社で働いていると、当然のことながら日々、文化、習慣や考え方の違いに遭遇します。なかでも私自身が最も違いを感じているのが「謝罪」に対する考え方です。


思えば機内というのは潜在的に謝罪のタネの宝庫。どんなに注意していても、狭い機内の通路でお客様と通りすがりに肩が触れる、突然の揺れで飲み物をこぼしてしまう。また搭載数の関係でご希望の食事が差し上げられない、天候その他の理由で出発が遅れる等々・・・

枚挙にいとまがありません 涙。


我々日本人はわりと良く「すいません。」って言いますよね。道でちょっと人にぶつかった時、誰かを呼び止める時、はたまたお店で店員さんを呼ぶ時にも「すいませーん!」って。これなんてほとんど「こんにちは。」くらいの意味合いですよね。このようにちょっとした謝罪から、人の注意をこちらに向けたいときまで「すいません。」を使うシーンは多岐にわたります。


しかし、外国人( 少なくとも私の勤務先の国 )の同僚は滅多のことでは言いませんよ”I’m sorry.”って。彼らにとってI’m sorryとは自分の非を認めて詫びるということ。ひとたびこの言葉を発すると、その言質を取られて責任を負うことになるーそこまでの意味を含んでいるようなのです。


長らく今の会社で仕事をしていますが、事実今までに、私が会社の上司、同僚や、プライベートの友人が謝罪の意味のI’m sorryを口にするのを聞いたのはほんの数回、数えるほどです。その時のこと、今でもはっきり覚えてますもん。「あっ、この人今謝った!」って。


それくらい本当に稀なことですし、それだけに彼らが口にすると、心から詫びているんだなと。こちらもちょっと居住い正して、その人の謝罪を重く受け止める気持ちになるほどです。


機内で我々日本人が、お客様に対してお詫びする際には「申し訳ございません。」と言うことになるのですが、これも「申し訳ない気持ちが強すぎて言葉にできません。」と言っているだけで、非を認める、いわんや責任をとるまでの意図はないわけで。
そもそも、「申し訳ございません。」や「すいません。」と”I’m sorry.”の意味するところが違うのです。



でももし冒頭にあげた「機内あるある問題」により、残念ながら日本人のお客様が立腹された場合には、まずは謝罪ありき。謝罪してはじめて関係改善に向けて話し合うことができる。謝罪の言葉なくしては何も始まりません。


例えばこんなケース。
日本人のお客様が「外国人のクルーに水をこぼされたのに謝らない。それどころか”It’s only water.”( ただの水ですから。)とまで言った。」とそれはそれはご立腹! 当然です。水をこぼしたことへの謝罪が無く、そのうえ「ただの水だからね!」って立ち去ったわけですから。



一方、このクルーの”It’s only water”の真意は「これは水です。赤ワインでもトマトジュースでもありませんから跡がつきませんよ。」と心からの親切で言っているんです。事実を伝えて相手に安心してもらうという考え方。


謝罪ひとつをとってもこれだけ考え方が違うんですよね。異文化のコミュニケーション、いやはや奥が深いです。

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