見出し画像

医師ですがデザインが好きすぎてデザイナーになりました。

ごあいさつ

はじめまして、株式会社CureAppで治療アプリのUI/UXデザイナーをしています、精神科医師の小林と申します。昔からデザインが好きで独学しており、どうしても医療とデザインをつなげるなにかがしたいと思い、今の仕事にたどりつきました。

noteデビューなので、自己紹介として医師がデザインの仕事に就くまでの紆余曲折をお伝えします。

医師がデザイナーとして就職するまで

昔からデザインが好きで、PhotoshopやIllustratorを趣味でさわっていました。精神科医の実務を経て大学院に入学し、医療者向けのスライドデザイン講座を開いたことをきっかけに、もっとデザインの力で医療に貢献したいと考え始めました。
とはいえ病院や大学の中でデザインばかりができる仕事は当然なく、デザインの実務経験はないため、いきなりデザイナーを名乗るわけにもいきませんでした。

大学院生のころに作ったポスター。いろいろ甘いですが味わいがあります。

学会ポスターやスライドのデザインで身内に「いいね👍」とチヤホヤされていましたが、プロの作るデザインとは明らかに見劣りすると感じていました。そうなると医師である経験を活かしつつ、デザインの実務ができる仕事がしたい、ネクストステップとしてそんなビジョンを抱き、どこかいいところはないかと探しました。

そんな就職先はありませんでした。理由は単純で、デザイン専門の現場では特に医師のスキルが必要なく、医療の現場ではデザイナーの需要が少ないからです。自力での起業もよぎりましたがそこまでイバラの道に踏みこむ勇気も出ず、なかなか答えはでませんでした。

悩んでいても勝手に時間は経ち歳もとります。そんなとき大学院の医療統計学の授業でいっしょだった知人から「CureAppで医師の知識を活かしてプロダクトデザインを手伝ってもらえませんか?」と声をかけてもらいました。こんなありがたいことがあるかと、すぐに飛びつきました。医療統計をとっていて本当によかった。

CureAppといえば日本のDTxの本丸のようなベンチャーで「アプリを治験で通す」という無茶なこと(本当に大変)を真正面からやる会社です。臨時での業務を経て2021年4月に正社員としてデザインの部署に配属してもらいました。
ちなみに私は京都に住んでいますが、パンデミックを経てフルリモート推奨になっており、そのあたりもねがったりかなったりの好条件でした。

CureAppのミッション https://cureapp.co.jp/

「デザインできない人」としての日々

さて、デザイナーとしての業務が始まりました。これまでデザインの勉強はそれなりにしてきたし、人に教えてもいたので、なにかしら役に立てると考えていました。

甘かったです。すべてのジャンルにおいてプロの世界をなめてはいけませんでした。いくつか仕事をして突きつけられたのが「小林さんはデザインができない人なので、デザインを習得してください」でした。

これはまいりました。自分ではできると思っていたのに組織から無価値であると断じられた絶望感。なんとか見返してやろうとどんな小さい仕事でも受けて提出しましたが、そのたびに根本的なところからフィードバックを返され、しまいには文字を組むことも恐ろしくなり思考停止寸前になりました。

治療機器を扱う会社で研究もガッツリ行っているので、医師としてのキャリアを重点的にいかせる部署もありました。おそらく願い出ればそちらに移ることもできたのですが、そこはデザインをする場所ではありません。研究者としての実力もたいしたことないし、なにより自分はデザインをしたくて入社したのでデザインをしなければ意味がありません。

なのでとりあえずかんばりました。自分がよくできていると思うアプリや資材をトレースし、オンラインのデザイン実習をこなし、先輩から受けたフィードバックに全部応えました。
このとき本当に感謝しているのは、先輩方が常に真正面から指導してくれたことです。「40過ぎてデザイナーになりたがっている医者のおっさん(しかもたいしてデザインできない)」なんて最高に気を使うしめんどくさい存在だったと思いますが、とにかく戦力になるかどうかだけに重点をおき、丁寧に鍛えてもらいました。

そんなこんなで今ではデザイナーの立場で仕事も任され、医療の知識も活かしながらどうにかやっています。この経験を通して学んだことは「デザインを知っているだけではデザインはできない」です。デザインは技術であり理論であり表現でもあるので、自ら頭と手を動かし、デザインのエキスパートから適切なフィードバックをもらわなければ良いデザインはできません。
医療現場を知らない人間に医療ができないことと同じで、本を読むだけでプロにはなれませんでした。

noteではデザインと医療の可能性について考えたい

デザインと医療の実務を通じ、改めてこのふたつを組み合わせることのおもしろさと難しさを実感しています。デザインは医療に対してなにができてなにができないのか?デザインのどの領域と医療のどの領域を組み合わせると新しい価値が生まれるのか?医療にとって良いデザインとは何か?
DXが進む医療領域でデザインは重要な要素であり、デザインにとっても医療はまだまだ未開拓な世界です。

デザインに関心のある医療者、医療に関心のあるデザイナー、その双方にささるなにかを伝えられるよう、つれづれと書きつづっていきます。よろしくお願いします。

追記
2023年2月6日に「医療者のスライドデザイン プレゼンテーションを進化させるデザインの教科書」を出版しました。医療がデザインに関心を持ってもらうきっかけになるよう努めていきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?