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[無料]位置送信デバイスについて登山者として総括する

こんにちは、ジオグラフィカの松本です。

IBUKI GPS、GPS.bot(第1世代)、conecoの3種類の位置送信デバイスを主に登山で使ってみた感想などをまとめたいと思います。

conecoは定型文の送信と自由文の受信も出来る。あとの2機種は位置情報だけを送る。

どの程度位置情報を送れていたのかなどは、3回のレポートにまとめてあります。

どの程度位置を送れていたのか?

3種類の位置送信デバイスは、全てdocomoの回線を使用しています。GPS.botは古い第1世代なのでFOMA(3G)回線で、IBUKI GPSとconecoはdocomo LTE-Mを使用しています。

LTE-Mにもいくつか種類がありますが、今回の2機種はLTE-M(Cat.M1)を使用しています。超ざっくり書くと、スマホのLTE電波帯域の一部を使って低速で長距離通信を行うという通信規格です。

LTE-Mの説明を読むと10km程度離れていても通信できるとされています。が、各種機器の通信実績を比べると10kmまでは飛んでいないようです。およそdocomoが公表しているサービスエリアと一致しており、サービスエリア外で通信できたのは稀でした。

おそらく原因は、

  • 山の地形に電波が阻まれた。

  • 省電力とのトレードオフで電波出力を上げられない。

  • 省電力とのトレードオフで頻繁に電波を探すことが出来ず、わずかにある通信可能エリアも、通信が確立する前に通り過ぎてしまった。

などかなと推測しています(あくまで推測です)。

奥多摩のヨコスズ尾根から都県境尾根、タワ尾根を歩いた時のIBUKIの通信実績。

IBUKI GPSはトレラン用ですが、GPS.botとconecoは元々街で子供を見守るための端末です。街用のデバイスなので山中のサービスエリア外で通信できなくても、それは仕方ないかなと思っています。

sigfox(省エネ長距離通信の規格)を使うデバイスはまた違うのかも知れませんが、これまで使ってきたdocomo回線の端末はこの様な結果になりました。

位置の精度は?

位置情報の精度は、各端末ごとに測位に対応している衛星システムの種類やA-GPSの有無などが違うのですが、そこそこ正確でした。谷では変な位置にプロットされてしまうこともありましたが、尾根など空が開けた場所では正確でした。

ただ、今時のスマホと比べてしまうと測位精度はやや落ちます。ハードウェアのサイズ、価格、バッテリー容量などの制約が多いからだと思われます。実用上は問題ない誤差ですが。

登山にはどの程度役立つのか?

山中でのリアルタイム位置送信の結果は芳しくなかったのですが、登山口からしばらくと、下界に降りる少し前には現在地を送れていました。少なくとも「どの山のどのコースに行ったのか?」は伝わるかと思います。

GPS.bot第1世代の、雲取山三峰コースの通信実績。赤が位置を送れたエリア。

登山で行方不明になる人の一部には、どの山に行ったのかすら分からない人がいるそうです。登山口や、その先の行動が一部でも残っていれば捜索はしやすくなると思います。位置送信デバイス+ココヘリがあれば非常に探しやすくなるでしょう。

※ただし、登山計画書を出しておくのが基本です。行き先をテキストで家族や友人に伝えておきましょう。

山奥に入ってしまうと位置が送れないことが多くありました。スマホが圏外になる場所では位置送信デバイスも位置を送れていませんでした。位置送信デバイスで山中の移動をリアルタイムに追うのは難しそうです(地形やエリアに依ると思います)。

逆に、スマホがギリギリつながっているけど、位置送信デバイスが全滅ということはよくありました。

接続率から言えばスマホの方が繋がっていた

最近自作のアプリ「ジオグラフィカ」にクラウド機能を付けまして、グループ単位で位置情報の共有ができるようになりました。

ジオグラフィカクラウドのグループデータリンクで現在地を共有している様子。電波は4Gが1本。

クラウド機能のテストでスマホを機内モードにせずに使い、どの程度位置を共有出来るかをテストしてきました。結果としては、位置送信デバイスより多くの場所で現在地を送信できてしまいました。

奥多摩のヨコスズ尾根から都県境尾根、タワ尾根を歩いた時の、スマホ(mineo dプラン)の通信実績。
川苔山でのdocomo(mineo dプラン)の通信実績。赤い部分がオンラインだった。

大雑把に書くと、

  • 山中でも尾根やピーク、鞍部などで周りが開けている場所

  • 現在地と街の間に高い尾根やピークなどの障害物が無い

  • 街まで5km程度の距離

という3つの条件を満たす場所なら、スマホの通信が繋がりやすい様です。

鞍部は前後をピークに挟まれていますが、尾根上は左右が開けているためトラバース道よりは電波状況は良くなります(ピークがベストです)。奥多摩の長沢背稜では埼玉側からの電波がよく飛んできたようでした。

スマホは位置送信デバイスよりも筐体が大きく、バッテリーの容量も大きいので通信をする上でハードウェア的に優位なのかも知れません。価格も位置送信デバイスよりだいぶ高いですし。

位置送信デバイスを登山に使う意味

スマホの方が繋がるのなら、位置送信デバイスを使う意味は無いのかというと、そんなこともありません。山中でスマホを機内モードにせずに使うとバッテリーを多く消費します。

例えば、これまで機内モードにしてログを記録した場合に40%使用していたなら、機内モードにせず位置送信機能を使うと80%減ります。ざっくり2倍使うと思ってください。

位置送信デバイスを使うと、スマホを機内モードにしていても自動で現在地を送ってくれます。よって、バッテリーの節約という点では有利になります。私もこれまでその様に使ってきました。

これまでより大容量のモバイルバッテリーを持てばいいのですが、そこそこ大きくて重かったりします。

位置送信デバイスを使うことで、スマホのバッテリーを温存することが出来ます。

また、ジオグラフィカクラウドの位置共有とIBUKIは送信開始の操作をする必要がありますが、conecoとGPS.botは常に自動で位置を送信しています。操作を忘れて送信していないミスをなくせます(充電は要確認)。

  • スマホのバッテリーを温存できる。

  • 常に位置を送信している端末は送信忘れのミスがない。

意味がまったくないとは思いません。

街での見守り端末の意味

GPS.botとconecoは本来、街で子供を見守るための端末です。特に、まだスマホを持たせるには早い小さな子供に持たせるものとして作られています。

conecoは定型文の送信と、見守りスマホからの自由文の受信が可能で、まさに「スマホを持たせるには早い子供のため」の端末です。大きさ、形、色使い、ユーザーインターフェースなど、とても良くできています。

試してはいませんが、他社も同様の端末を作っています。

子供を育てたことはありませんが、この様な端末で位置がわかれば行方不明を防ぐことも出来るかも知れません。元々の、子供の見守り用としては、必要な機能が無理なく実装されていると思います。

登山者の見守り用途は目的外使用なので、山中で使えなくても仕方ないですね😅。スタートとゴールが分かればまぁ、十分でしょう。

スマホを持っている同士ならGoogleマップの位置共有がお手軽

ちなみに、スマホを持っている家族同士で位置情報を共有したいのならGoogleマップの位置共有を使うのが簡単です。

  1. Googleマップの右上に表示されている「自分のアイコン」をタップしてメニューを出す。

  2. 「現在地の共有」を選ぶ。

  3. 「新たに共有」をタップ。

  4. 共有期間と共有相手を設定して共有する。家族なら「自分で無効にするまで」でよいでしょう。

お手軽に位置を共有できるので、スマホを持っている家族同士で位置を見守りたいのならおすすめです。

まとめ

  • 位置送信デバイスは、山中で期待したよりは通信が繋がらなかった。

  • 登山口や下山口の近くでは位置を送れたので、「どの山に行ったのか?」は分かる。

  • 位置送信デバイスはスマホのバッテリー温存、位置送信操作忘れのミス防止の点では意味がある(そこに月額払いの価値があるかは各自判断)。

  • 今のスマホは山中でもけっこうよく通信できる。ただし、バッテリーは機内モードにしてログを取った場合2倍使うので大容量モバイルバッテリーが必須。

  • 手軽に位置を共有したいのならGoogleマップの位置共有機能が便利。

なお、GPS.botは古くなってきたり電池の持ちも悪くなってきたので解約しました。解約したらリアルタイムですぐ使えなくなりました。早いですね…。conecoは2ヶ月約束で借りていたので返却となります。IBUKIはどうしようかな?もうちょい使ってみる?

わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。