見出し画像

立場が違ったら

 立場が違うなんて、彼らには信じられないようです。

 皆で家にいる時には、俺様達も譲り合ってそれぞれの意見や話題等を言い合う。皆もそれぞれの話題もあるが、仲良く譲り合うのが神谷家だ。
「私のお話よ。」
 この時も私の話と言ってから、穂香が話し始めた。
「美咲ちゃんの想像のお話にも、兄弟姉妹が多い家族がいらっしゃるの。」
 穂香も言うように、美咲も兄弟姉妹が多い家族の話を想像していて、それらも俺様達にも他の皆にもよく話す。兄弟姉妹が多い家も大家族も、昔は普通だったが、核家族が多くて子どもも少ない現代には貴重な存在だ。
「美咲も家族の話が好きだぜ。」
 俺様も皆が思う以上に、美咲も家族の話が好きとも思う。美咲も誰かの家族にも詳しいのも、また誰かの家族を知ることで皆が育ってきた環境、家族や家庭の文化、存在感等を多面で見ているのもあるだろう。
「そのお宅のお兄様が、俺様なお兄様じゃないの。温厚で誠実なお兄様で、慎也さんにも近いの。」
「俺様じゃないぜ。慎也に近いぜ。」
 穂香も美咲の想像の家族の兄貴が俺様な兄貴ではないとも、慎也に近い温厚で誠実な兄貴とも言った。
「桃子ちゃんも、お兄様と慎也さんの立場が違ったらって気にしていらっしゃったの。」
 美咲の話にも、桃子も俺様と慎也の立場が違ったらと気にしていた。こちらも兄貴が好きな桃子だ。
「桃子は将人が好きだからか、先輩の男性もちゃん付けで呼ぶの。兄貴を晃ちゃん、慎也を慎ちゃん、孝彰をたかちゃん、健太を健ちゃん、俺を諒ちゃんって呼ぶの。」
「桃子も先輩の男性もちゃん付けで呼ぶぜ。優里奈とも風花とも同じだぜ。」
 年上の男性が好きだからか、桃子は俺様を晃ちゃん、慎也を慎ちゃん、諒を諒ちゃん、孝彰をたかちゃん、健太を健ちゃんと呼ぶ。桃子も先輩の男性をちゃん付けで呼ぶのも、優里奈とも風花とも同じだ。
「もし俺様と慎也の立場が違ったらどうなるんだろうな。」
 俺様と慎也の立場が違ったらどうなるのかも気になってきたので、俺様も勝手に想像してみた。
「もし俺様に弟と妹一人ずつしかいなくて、慎也に兄弟姉妹が多かったら・・・。俺様と諒達が一緒じゃねえなんてありえねえ。」
 俺様に弟妹が一人ずつしかいなくて、慎也に兄弟姉妹が多数いる。慎也も良い兄貴なので悪くはないが、俺様が諒達と一緒じゃないなんてありえない。
「もし俺様と慎也の仕事が反対だったら・・・。慎也が優秀なゲームエンジニアでも、俺様に俳優は無理だぜ。」
 俺様と慎也の仕事も反対。慎也がゲームエンジニアで俺様が俳優。慎也がどんなに優秀なゲームエンジニアでも、俺様が俳優として他者を演技するなんて無理だ。
「もし慎也が諒達に慕われて、神谷家に俺様の立場がねえ・・・。そんなの信じられねえ・・・!」
 慎也も俺様の同級生としても諒達にも慕われるのは良いが、神谷家に俺様の立場がないのは嫌だ。神谷家で仲良く育ってきた俺様達には、慎也が慕われて俺様の立場がないなんて信じられない。
「神谷家の兄貴は俺様、山崎家の兄貴は慎也しかいねえ!立場が違うなんてありえねえ!」
 俺様も想像してみたが、神谷家の兄貴は俺様、山崎家の兄貴は慎也しかいない。孝彰も将人も健太も皆兄貴だが、それぞれの家庭で育ったから今の皆がいる。兄貴同士で立場が違うなんてありえない。
「慎也。」
「山崎慎也です。」
 俺様は慎也に連絡した。慎也も俳優なのに、仕事の合間かすぐに出てくれた。
「神谷晃助だぜ。俺様、もし俺様と慎也の立場が違ったらって想像したんだぜ。」
 俺様も、もし俺様と慎也の立場が違ったらと想像したのを慎也にも伝えた。
「美咲が兄弟姉妹がたくさんの家族を想像したんだぜ。その話にも慎也みたいな兄貴がいるぜ。」
 兄弟姉妹が多数の話を想像したのは美咲とも、その話にも慎也のような兄貴がいるとも、俺様も付け足した。
「美咲ちゃんの想像のお話か。俺達の立場が違うって、晃助が淳志と麻衣のお兄ちゃんで、俺が神谷さん家のお兄ちゃんなの?」
 慎也も美咲の想像の話かも、立場が違うのは俺様が淳志と麻衣の兄貴で、慎也が諒達の兄貴かと詳しく聞いた。
「そうだぜ。でも慎也がゲームエンジニアになれても、俺様はとても俳優にはなれねえ。他者は演じられねえ。」
 俺様も慎也がゲームエンジニアでも、俺様が俳優にはなれないとも付け加えた。
「俺様と慎也の立場が違うなんて信じられねえ。俺様もゲームエンジニアで神谷家の兄貴だぜ。」
「もし立場が違ったらって想像するのもあるけど、俺も晃助と立場が違うなんて信じられないな。俺も俳優で山崎家のお兄ちゃんだ。」
 俺様も慎也も、お互いの立場が違うなんて信じられないとも、それぞれの仕事を頑張る兄貴とも言い合って話を終えた。
「兄貴同士で立場が違うなんて信じられねえ。今の俺様達が最高だぜ。」
 もし俺様と慎也の立場が違ったらと想像したが、お互いの立場が違うなんて信じられない。皆それぞれ違っても、やはり今の俺様達が最高だ。俺様も今をきちんと捉えた上で、次なる未来にも進んでいきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?