【屋久島】激闘!風雨、猿、鹿、鼠そして人との出会い(3日目その1)
走り始めたからには走り切らないとな、と思うので頑張ります。
屋久島旅行記 兼 山行記録を記した三回目。
山行としては二日目のこの日。
ようやく本格的に山をガッツリ登ることになる。
さて、前日ヤクシマヒメネズミなる可愛い怪物を、
神風の如く現れたイビキによって何とか退け、夜半ごろから睡眠がとれた。
今日の対戦相手は猿!鹿!
対戦よろしくお願いします。
■遅すぎた起床
五時頃に目が覚め、あたりを見渡すと、あの中国ソロがいない。
とっとと寝て、とっとと出発したクチか。
丁寧に寝袋などはデポしている。
(宮之浦岳に登ってピストンで戻ってくる予定だと前日に聞いていた)
今日下山するだけの中国夫婦はまだ寝ていた。
伸びをして体を起こしながら片付けをする。
縦走なので荷物は置いていけない。
持参していたどら焼きを朝食にして腹ごしらえを済ます。
外は、、、何とか曇天または小雨といった模様。
ここは電波がないので最新情報は知る由もないが、早めに出たほうがよさそうだ。
テント場ももぬけの殻で、山頂を目指すのに馬鹿みたいに眠っていたのは自分だけのようだ。
6時前には出発した。
テントがなければ片づけは楽だ。
夜の間も雨はあまり降っていなかったのか、あまり地面は濡れていない。
寝起きの体に鞭を打って登り始める。
ヤクスギランドはかなり綺麗に整備されていたので、それと比べると劣るが
それでも登山道としてはかなり整備されている。
木道や木の階段がいたるところにある。流石世界遺産。
■ほぼ素通り花之江河
しばらく眺望もなく黙々と登ることになる。
花の江河の手前に少し眺望が開けた場所があった。
真っ白な空。まだガスはここまで上がってきてないが、どんどん近づいてくる風がある。
湿地として有名な花の江河もそこそこに先を急ぐことにする。
植生がまた変わったような気がして、木の生え方や草の生え方に色々とカメラを向けたくなるがすっかり億劫になってしまった。
情けない。
■水滴るシャクナゲ
黒味岳への分岐を過ぎたあたりで眺望が開けた箇所ががあり、そこで少し休憩。
シャクナゲは今日最盛期を迎えたように懸命に咲いており
しかし、雨に濡れそぼる姿は何かもの悲しい。
青空が似合う花だと思うが、これも別種の趣がある。
この時点で、小屋からおそらく300mほど標高をあげてきたことになりそうだ。
少し急いでいたのもあって疲れが出ている。
やはりテント装備を担ぐと体力が心もとない。
もう少し体力づくりをしなければ。
小雨が徐々に強くなるのでトラベル傘を差しながら登る。
ストックも使う。
この状態でカメラを構えるのは一苦労である。
傘をいずこかへ置くか何かして、
カメラをキャプチャーから抜いて、
レンズキャップを外して、
ようやく撮影が開始できる。
再び歩き始めるにはまた同じ動作を逆再生する必要がある。
濡れながら。
職業カメラマンの大変さはこういったところにあるんだろう。
さらにカメラを構えるのが億劫になる。
■ホワイトワールド
頂上まであと一時間というところまで来たとき
とうとうガスに追いつかれた。
丁度開けたところにいたので、憎たらしくこちらに姿を見せて追い抜く様を見せられたようだった。
急に、というわけではないが、速度を増して雨が強くなる。
木が減り、岩と笹が増えた。
目いっぱいに水を纏った笹が、花道の客のように手を伸ばして水滴を押し付けてくるので、傘を差そうが関係ない。
真横から直接攻撃で撥水効果がすでになくなったレインウェアを濡らしてくる。
視界もどんどん悪くなるが、分岐などはなく、道もわかりやすかったので迷う心配はなかった。
真っ白で、濡れている山道を登る。
雨の中の行軍なので楽しみが全くない。疲れる。
早く終わらせたい。速く歩きたい。疲れているから速く歩けない。
■ホワイトアウト登頂
という形で、ぜーぜー登っていたらぬるっと頂上へ到達。
まsssssssssssっしろ!
雨も強くなってるし、眺望はないしで、感慨は少しあるものの
留まる理由があまりなかったので、すぐさま移動。
早く小屋に着きたい。もう雨いや。
少し行ったところに巨岩の陰で風雨を少しよけれそうなところがあったのでそこに座り込む。
スナックやエナジーバーで栄養補給。
体は疲れているが、気持ちは急いている。
屋根になっているわけではないため、あまり長時間動かずいるのも体力の無駄な消耗な気がして、すぐに立ち上がる。
■dear, deer
稜線歩きみたいな緩やかな傾斜の道ではあるが、雨が降りしきるなか
クマザサも容赦なく行く手を阻むし、体を濡らしてくる。
と、そこに現れる鹿!
これも特有の種でヤクシカと呼ばれるらしい。
突然姿を現したので、びっくりしたが、向こうはひどくまったりしている。
とりあえず距離を詰めていくとすぐによけてくれる。いい子いい子。
突然襲い掛かってこないかと内心びくびくしながらも通り過ぎる。
本日の初戦は見事スマートな勝利を得た。
■膠着する戦争とマトリックス
次に現れたのは猿!しかも3匹いる!
その名もヤクシマサル。
鹿のではなさそうな糞を見かけたんだよな~と合点しながら身構える。
こちらも距離を詰めれば逃げるだろうと5mくらいのところまでくるが全く動かず。。
どんどん険しくなる猿の表情。
狭い道の真ん中に居座り「いつでもやったんぞ?お?」みたいな顔でこちらを見ている。
心の中で「話せばわかる!話せばわかる。。。!」と念を送るが届いている気がしない。
完全にストップしてしまった歩み。
見つめ合う両者。降りしきる雨。
途方に暮れる俺。
そうこうしているうちに茂みから、何やら一回り大きい猿が現れ、4匹対1人になってしまった。
なぜか思い出されるのはマトリックスの最終決戦ネオ対エージェントスミス。(共通点は雨だけ。)
一度引き返し、姿が見えなくなるところまで行ってみた。
その後もう一度猿ポイントに行ってみると、さっきと変わらずそこにいるエージェント猿たち。
猿の爪って鋭いのかな痛いのかなとか考える。
埒が明かないので意を決して近づいていく覚悟を決めた。
来るなら来い、俺は無抵抗を貫くぞ!と意気込んで
なるべく目を合わせず、そして焦らずゆっくり近づいていく。心臓が高鳴っている。
意外にもアッサリ茂みに退いてくれえたが、いつ茂みからとびかかってくるかとまたびくびくしながらゆっくりと離れた。
これで本日の2回戦も勝利でゲームセット。
ほっと一息も、どっと疲れがやってくる。
■故障する青歯
雨の日の下りは、滑らないようにすごく気を遣うのでいつもより疲れる。
ウェストベルトをきつく締めてバランスをとりながら下る。
景色の楽しみがないので、イヤフォンを片方だけさしてダウンロードしたポッドキャストを聞いていたが、突然切れた。
まあまあ、落ち着きなさいよと、電源を入れなおしたり
ペアリングをやり直したりと四苦八苦してみる。
どうやらだめらしい、少なくともこの雨の中で復活する見込みはないだろう。
イヤフォンをポケットの中に突っ込んで、聞き飽きた雨の音をBGMにするしかなくなったようだ。
雨はどんどんと激しくなって、小屋に着くころには強めの雨になっていた。
何とか小屋に12時ごろに着いた。
朝から歩いてここまで6時間越え。おそらく5時間くらいは雨の中だったのではないか。
本日泊まるお宿は新高塚小屋。
当然ここも無人の山小屋なので、屋根と壁と床があるだけ、というようなもので
この天気では昼間でも薄暗い。
小屋には老齢の男性が一人と
昨夜、淀川小屋でテントを張っていた若夫婦の二人がいた。先行していたので早くついていたのだろう。
男性は本日荒川登山口から上がってきたが、雨のため明日まで停滞して降りると言っていた。
若夫婦は寝ているので、できれば静かにしてやってくれということも言っていた。
なんて気づかいのできる人なんだ。
ザックを下ろして、靴とレインウェアを脱ぐと、
もはや汗なのか雨なのかわからない液体で覆われた衣服と体が現れる。
不快なにおいを放つ俺。
小屋に備えてあるハンガーと張ってあるロープを使って濡れた服や荷物なんかをことごとく吊るしていく。
皆自分の魔法陣を描くように縦横無尽にものを吊っている。
半日雨が続き、そして皆が思い思いに濡れたものを吊るしているので
小屋の湿度は多分90%以上だったと思う。
乾くことは期待しないほうがいい。
ちょっと長くなりそうなので3日目はこのくらいで切ります!
例のアイツと再戦!?というアツい展開もこの後あります!
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