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ADHD・ASDの娘に、中1数学を教える

「夕食が終わったら、勉強を教えてくれる?」

珍しくしおらしい顔をして尋ねてくるツムギ。

「いいよ。何の教科がわからないの?」

その日は夫もいたけれど、私にお願いしてきたんだもの(たぶん)、可愛いとこあるじゃない、と、ちょっと嬉しかった私。

まあ、教えたがりは夫も一緒で、結局横から口を出してくるから、ツムギにとっては最終的に、うるさいなぁとなるのでしょうけれど。


食事が終わると、数学を教えてと、教科書、ドリル2冊、プリントをドサっとテーブルに持ってきて、えっとね、えっとね、と、必死にドリルとプリントをめくり出しました。

「何がわからないの?」

「えっとね、自然数とか絶対値とかわかんないし、こーゆー式は通分するタイミングがわかんない!」と、わからないこともとっ散らかっている様子。

なるほどね。
算数から数学に変わって、急に難しくなって、ついていけなくなっているパターンね。


「わかった。じゃあ、まず言葉からね。自然数は教科書のどこに出てくるの?」

「わかんないよ!だって授業はプリントでやるから、教科書なんて見ないもん!」

ほう。

『自然数』やら『絶対値』やら、急に言われても何だったっけ?ってなるし、中途半端なことを教えてはいけないと、パラパラ教科書の中を探します。

「ノートとかないのかよ?」
案の定口出ししてくる夫。

「ないよ!だいたい黒板に書かないんだから、ノートに書くことないじゃん!」

ツムギの口調はすぐにキツくなるので、最近の私の口癖は「ツムギさん、言い方!」

するとツムギは、その低く野太い声のまま、「ありませんですわよ。黒板には書きませんから」と言い直します。(そーゆーんじゃねーんだけど笑)


「いい?数学は特に基礎の積み重ねが大切だからね。まずは言葉をしっかり整理して理解するよ?」

『整数』『少数』『分数』『自然数』…小学校の復習を兼ねて図解していくうちに、ツムギは自分が知りたいことを手早く教えてもらえないことにイライラし出します。

「あー、わかったわかった。だからこの式の解く順番を教えてよ」

(+5/6)−(−8/9)+(+3/8)

みたいな式。

なんじゃこれー?

「なんでさぁ、プラスにカッコがついてんだよ!」

問題にイラつくツムギ。

「ついてる意味ないって思ったんでしょう?そうしたら、最初の5/6はプラスもカッコも外してみたら?」

「違うんだよ!カッコは外さないんだよ!」

順番を尋ねてきたはずのツムギに叱られる。理不尽。

「あー、確かに、カッコ外すのは最後だねぇ」
ドリルの解答を見ながら夫もツムギに参戦してくるので、私はもう一度教科書に戻って考えます。

「正の数って、自然数でしょ?」

自分の思いついた疑問だけ、投げかけてくる。

「ツムギさん、それは違う物差しの話だよ」

そう言いながら気づきました。

カッコは正の数か負の数かをわかりやすくするためにつけているもの。

その間のプラスとマイナスは、加法と減法の意味の演算記号。

意味が違うのに、同じ形をした記号がひとつの式に混在するとわかりにくいから、わざわざカッコをつけているんだね。

「わかりにくいねー。私たち、こんな風に習ったっけ??」

ツムギはもう、私たちの話は聞いていません。

聞いた話の中で、自分の疑問が解決できたと思うと、自分のペースで次の問題に取り掛かってしまうのです。

「それとね、えっとー」

授業で使ったプリントは、20枚ぐらいあったでしょうか?
A5のプリントを1枚ずつ全部、丁寧に中表に2つ折りにしてあり、それを1枚1枚めくって、次の疑問を探しています。

「ねぇ、そんなに探すなら、外向きに折っておいたらいいんじゃないの?」

「いいの!ツムギにはわかるからこれでいいの!」

(わかってねーじゃんよ!)

あー、これは先行き不安だなぁ。

想像はしていたけれど、数学はこのまま行くと更に挫折するなぁ。

この子いったい、普段の授業はどんな風に受けているのでしょう。
そこまで極端に悪い点数を採ってきたことはなかったと思うけれど、学校の勉強についていけなくなる日も近いだろうなぁ。

これは宿題なのか?って夫が聞いたら、ページをめくって、ドリルの見開き2ページが宿題だと、午後10時半に。

それなのに今度は、折り畳んだプリントを広げて、1枚ずつクリアファイルに入れていくのに夢中になっていて。


余計なお世話だと思ったけれど、最後に一応言ってみました。

「ツムギさん、索引って知ってる?
数学の教科書には索引があって、わからない言葉はだいたい索引を見れば、掲載ページが書いてあるのよ。
ページを開けばその言葉は太字で書いてあるでしょう。
わからなくなったら、こうやって教科書を見てね」

なんでも否定派のツムギが珍しく言いました。

「え?そうなの?知らなかった」


学校の授業もずいぶんと変わってきているのでしょうね。

発達障害の特性が見られる子がクラスに1割ぐらいいて、それだけではなく、教え方も、教わるこどもの育ち方も変わって、先生も大変なことでしょう。


もう、親が勉強を見てあげる時代ではないのかもしれませんが、聞かれたときぐらいはこちらも学び直そうと思っています。

もうすぐ最初の定期試験です。

さて、ツムギはまたひとつ成長するのでしょうか。

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