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中一継子の三者(二者)面談

私が夫と継子に八つ当たりして家庭内別居を結構してから、かれこれ二週間が過ぎたでしょうか。

今回は、いつもと違って、二人が納得するような理由があってキレた訳ではないので、向こうも理不尽な思いを抱えているでしょうし、私もこれをどう収束させたらいいだろうかと考えあぐねています。

そもそも、ツムギの生きづらさを時間をかけてでもなんとかしてやりたいと私が勝手に思っていて、三歩進んで二歩下がるを繰り返している状況に私が挫けそうになるところを、夫にサポートしてほしいと言っていることがなかなか伝わらず(一応、方針については、理解を示してくれているから尚更)、上手くいかない状況に苛立っているだけなので、この家庭内別居も、言ってみれば、三歩進んで二歩下がるの歩みのひとつと言えるのかもしれません。

それなのに、夫はいつものように、大人らしい対応として、何事もなかったように話しかけてきたり、なんならご飯を作ってくれたりして、気づいたら仲直りをしているという状況を作り出そうとするので、なんだかこっちが大人げなくなってきて、そろそろ自分にも嫌気がさしてきています。

嗚呼、このままだとまた、まんまと夫の作戦に負けてしまいそうだ。

と、出かかる笑いを無理矢理引っ込めて、私はあなたたちと一緒に生活はできません!を続けています。

ツムギは更に、今回自分はこれほど怒られるようなこともしていないし、(たぶん)父親からも勝手にしろというようなことを言われるし、何がなんだかわからないけれど、どうにもできないことは嵐が過ぎるのを待っとけと、部屋に篭っているのでしょうから、可哀想に。

でも、勝手にキレててなんですけど、そろそろ、こんな状況になったときに、なんとか打破してみようと、変化を見せてほしいのですけれど。


まあ、そんな状況の中、ツムギの中学校最初の三者面談の日が刻々と近づいてきていました。

先月、面談日程のアンケートが配布されたとき、「まだ、シフトがわからないからどうしようか?」と夫が言ってきたので、「え?私行く気でいたけど、あなた行ってくれるの?」と返事をすると、どうやら、都合がつけば、自分も私と一緒に同席しようかと言うことだったようです。

「中学生だし、三者面談だし、もう、どちらかが行けばいいんじゃないの?あなたが行きたいなら、任せるけど?」と聞くと「じゃあ、お願いできる?」

なぁんだ。
最初から行かないつもりの「どうしようか?」だったのね。

「わかった。行ってくるよ」

そう言って、面談の日が決まったのでした。


二、三日前になっても、前日になっても、当日になっても、誰もこのことに触れることはなく、面談の早朝、夫は何も言わずに仕事に出かけてしまいました。

私は、暑さもあってその日は、一日在宅勤務にして、昼前の面談に中抜けで行こうと、リビングでパソコンを開いていましたが、何時になっても、ツムギは部屋から出てきませんでした。


寝ているのか、起きているのかさえわかりませんでしたが、私が少し早めに学校に向かおうと玄関を出ると、案の定、それを合図に部屋からノソノソと出てきた様子が、リビングのホームカメラに映っていました。

結局私は、ツムギには声をかけずに三者面談に向かうことにしたのです。


教室に着くまでの間、何組かの親子とすれ違いました。

私はまるで、二者面談と間違えて来てしまった母のように見えたでしょう。


教室の中から「どうぞお入りください」と先生に声をかけられたので、一歩教室に入ると、「先生、今日、本人がいなかった場合どうなりますか?」と聞いてみました。

先生はまだ、状況を飲み込めずにいたようですが、「いなくても大丈夫ですよ。提出物は別途持ってきてもらうようになりますが」と仰ったので、「それなら、本人の自主性に任せてもいいでしょうか?」と重ねて質問をしました。


これは、私の作戦でもありました。

小学校三年間の面談は、教員と保護者だけだったので、我が家の家庭事情とツムギの発達障害のことについては、情報共有しておいてほしいと、三人の担任の先生には伝えていました。

中学校はいきなり三者面談なんだな。

それはそれで仕方がないけれど、これから思春期の娘がどのような問題を抱えていくかわからないからこそ尚更、先生には知っておいてほしい気持ちがありました。

もし、先生の答えが「三者ではないと意味がありません」だったとしても、電話をかけて呼び出せば、10分とかからずに来ることができたでしょうし、それだけの時間があれば、私の心配事くらいは、充分に伝えられると踏んでいたのです。


結局、ツムギは来ませんでした。

もしかしたら、もしかしたら、大慌てで、汗ダラダラ流しながらやってくるのではないかと、少しだけ、期待をしていたのですけれど。


その分、たっぷりと先生に話を聞いていただくことができました。

午前中、最後の時間帯だったことが私にとっては幸いでしたが、先生の昼食の時間を奪ってしまっていたかもしれません。


他校から転任して学年主任を務めているだけあって、先生の言葉には、厳しさと正しさが備わっていて、そして一切の無駄がないように感じました。

その先生が、「こんな言い方をしてはなんですが、お父さんがもっとツムギさんと向き合ってほしいですね。実の親なんですから」

男の先生でも、そんな風に言ってくださるんだ。

嬉しかった。
純粋に嬉しかった。

なんだか、中学校はもっと学業中心で、生活態度や思春期対応などは各家庭でお願いしますというスタンスなのかと勝手に思っていたので、一気に捲し立てるような私の話を聞いてくださるだけでも充分に嬉しかったのに。


私が話したツムギの諸々は、先生にとってはまったく初耳だったそうです。

そう言われてみれば、思い当たる節はあるようでしたが、学校では上手に隠せているというのが先生の感想でした。

「逆に隠せているのだとしたら、そのストレスが爆発したときが心配ですね」

私もそうだと思っていました。

一旦は、上手に隠せてると言った後に先生は、「周りの友達は、ちょっと普通と違う子だと感じているようなところもありますね」と、夏休み前の教室の様子を思い出したように空を見つめた後、付け加えて仰いました。


「次回、12月の三者面談にはお父さんに来てもらいましょう」

半年後の我が家の状況がどうなっているか予想もつきませんが、ぜひ、そうしようと思いました。

日頃、親にも友達にも悩みを明かさず、ひとりで抱え込んでしまう夫には、第三者からの言葉が必要だと思っていました。

自分と同年代の男の先生から言われる言葉は、きっと、女性の私たちから言われるそれよりも、心に響くことでしょう。


何がどう解決したわけでもなかったけれど、理不尽にキレて作り出してしまった今の家庭の空気に、少なからず罪悪感を持ちながら、重い荷物を降ろせずにいた私は、ようやく一旦足元に置いて、深呼吸することができたように思いました。


その日の夕方、部活も休んでしまったツムギと話をするために、先生は私の携帯電話に連絡をくださいました。

全部は聞こえなかったけれど、ツムギがモゴモゴ言い訳をしているようだったので、面談に来なかったことは先生なりに注意をしてくださったようです。


一人で抱えるのはやめよう。

家庭内の恥なんて、晒したっていい。

こどもはみんなで育てるものなんだから。

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