CTI Co-Activeコーチング シナジーコース修了
2021年2月28日、コーチングスクールCTIの「Co-Activeコーチング応用コース」の最終段階あたるシナジーコース3日間を終えました。これで合計104時間の学びを修了することができました。
今回のシナジーコースで学んだことについて、自分の学びをまとめておきたいと思います。
カラダで感じる・表現する -Embodiment-
今回のコースの中で、言葉を使わないコーチングの演習がありました。2人一組になって、提示されたクライアントの成長テーマについて、コーチが体の動きだけで伝えたり尋ねたりする試みです。外から見れば2人の大人がヘンテコな舞踊をして、かなり怪しいように映るでしょうが、実際やってみると一言の言葉なしでも相手がどのようなことを感じているのか何となく感じることができる不思議な体験でした。
Co-Activeコーチングでは体を使って感じたり表現することが多くあります。正直なところ自分も最初はかなり怪しげに思っていましたが、自分自身がクライアントとして経験していくことで「カラダで感じる」インパクトを理解できるようになっていきました。
今回のコースでは、このような体験がありました。
1日目、プロコーチによるデモンストレーションにクライアントとして手を上げ、「思いきり」をテーマにコーチングしてもらいました。自分のコーチングとしても人生の生き方としても「思いきり」に課題があると感じている僕に、コーチは「思いきりがもっともっと発揮されている状態」をカラダで表現するように求めました。自然と出てきたのはスカイダイビングのように落ちていく感覚です。実際にヘリコプターから飛び降りるような動きを何度か繰り返してみると、なんだか「スリルを楽しむ感覚」があることに気づきました。コーチと一緒に、さらに何度も本当に上空から落ちていくイメージを味わっていくと、「自分の体重によって引き寄せられている感覚」「何かに逆らわず身をゆだねていく感覚」が出てきました。
地に着いた足が離れるのはちょっとスリル感もあるけれど、純粋な好奇心に従って飛び込んでみる、そこには余計な力は必要なく、ただただ導かれるように落ちていく。そのような感覚はとても心地のよいもので、実際の自分の人生の中でも、こういう感覚を持っていれば「思いきり」と楽しく付き合えるように感じられました。
言語の限界とフェルトセンス -Power of Body-
僕は大学時代、ヴィトゲンシュタインやラッセルなどの言語哲学を学んでいました。言語哲学では、言葉は存在につけられたラベルでしかないと考えられています。実際に存在するのは千差万別のものそれ自体であり、言葉は人間が意思疎通をするための道具でしかないと。
人間の感覚や感情についても、本来はそれ自体として存在しているのであり、たとえば「モヤモヤ」とか「悲しい」などの言葉は貼り付けられたラベルでしかありません。言葉で全てを表現することはできないのです。言葉によって表現される以前のこのような「感覚・感情そのもの」のことを心理療法「フォーカシング」の世界では「フェルトセンス」と呼ぶようです。
Co-Activeコーチングのトレーニングの中ではフェルトセンスという言葉は出てきませんが、Co-Activeコーチングはこのような本来ある感覚・感情そのものを味わうことの価値や意味、その技法についての学びであるということもできるように思います。
たとえば、今ある「悲しみ」(正確には「悲しみ」と呼べそうな感情)をじっくりとカラダで感じて深く深くその正体を味わってみたり、「モヤモヤ」をカラダの姿勢や動きで表してみたり。
拙速に言葉のラベルを貼ってしまうようりも、カラダで使って感じたり表したりする方が、その感覚・感情の正体を微細な部分までリアルに捉えられることを何度も体験しました。
とりわけ、これまでの自分の中ではまだ確立されていない、でも何か生まれている違和感や変化への欲求をいきなり言葉で言い当てることは難しいのです。いま自分の人生に何となく行き詰まり感があったり、やりたいことがあるのになぜか足踏みをしているとき、コーチと一緒にカラダを使って少しずつ深く味わっていくことで、奥底にある感覚や感情の正体を捉えることができる。それがコーチングの秘密の一つであるように思います。
言葉の力 -Power of Story-
3日目、自分の物語を語る演習がありました。自分にとってはシナジーコースのハイライトでした。これまでの人生、現在そして未来の自分を物語にしてコーチ仲間に語り終えたとき、心がじんわりと震え、熱いものが込み上げてきました。
優等生だけど繊細なところもあった子ども時代。祖父から言われて唯一覚えているのは「人に迷惑をかけるんじゃない」という言葉。兄からのおさがりじゃなくて新しい自転車を買って欲しいのに言えなかったこと。直接言われたわけでもないのに家計のことも考えて地元の国公立大学に進学したこと、卒業後は認知度の高い大企業に就職したこと。人間について考えることが好きで哲学を学び、人事の仕事についたこと。サラリーマンとしていわゆるエリート街道を進んできたところに挫折があり、それで初めてこれまでが周囲からの期待に応える、狭い階段を昇るような人生だったと気づいたこと。それからは自分らしく人間を探求する道を深めていき、人間が本来持っている力を出しきるのを支援することによって、自分自身にも誇りを持って生きている、そのような物語です。
前日の晩、ノートに向かって言葉を綴っていると、これまでの人生の様々な経験の中で、いまの自分を作るのに強い影響を与えている出来事が自然と浮かび上がってきました。そして、これから自分の進みたい道について考えると、思えばこれまでも何度もそれに心が魅かれていることにも気づきました。
つくづく不思議だなと思うのは、前の晩にノートに書き記したときには生まれなかった感覚が、この物語をコーチ仲間に向けて口から出した瞬間に、心の奥の方から湧き上がってきたことです。それは自分自身を認め、抱きしめてあげたいような感覚でした。書かれた言葉と話される言葉には何か大きなインパクトの違いがあるようです。
言葉が世界に出る瞬間 -Power of Statement-
先月のプロセスコースでもこのような場面がありました。
プロコーチによるデモセッションでクライアント役になったのはいつも元気で明るく快活な女性コーチ。焦点があたったのは、職場でマネージャとしての責任を果たせていないのではないかという不安や自分を責めるような気持ちでした。コーチの導きとともに、それをじっくりと味わっていく彼女を画面越しに見ていると、僕は彼女の優しさと奥深さ、人としての柔らかく美しい価値を感じました。
直後の2人一組での振り返りの時間、たまたま僕は彼女と一緒になりました。まだ余韻が残る中、僕は自分の感じたことを彼女に伝えずにはいられない気持ちに駆られました。そして自分の内にあった気持ちを言葉にした瞬間、心の震えが一層大きくなり、ぐっと熱いものを感じたのです。
あれは一体何が起きたのでしょうか。
言葉を口にすることには何か大きな力があるようです。
思うに、心の内側で思っている状態では、まだ「引き返せる」のに対して、言葉を口にするということは、世界に向かって覚悟やコミットメントを持って自分の態度を表明することであり、もはや「引き返せない」状態になると言えるのではないでしょうか。
心の中で思う分には、どんなに強い決意であっても、実は「なんちゃってね」が許される、自分に許してしまえる段階なのです。自分のノートに書いている状態もまだこれに近いのではないかと思います。まだ消しゴムで消せる。
それに対して聞き手に対して思いを口にするということは、石板に文字を刻むように、二度と変えることができない。言った後で訂正したとしても、そう言った事実は変えることができないのです。
思いや決意を口にするということにはパワフルなインパクトがあります。言葉が世界に刻まれるのです。それには「聞き手がいる」という条件が必要です。ここにもコーチングのパワーの秘密があるように思います。
人生に訪れる変化 -Transformation-
物語の演習でもう一つ学んだことがあります。
人生に節目というものがあるとして、それは何に喩えられるだろうか?という質問が参加者に投げかけられました。物語だったら1章・2章、演劇だったら1幕・2幕、音楽だったら第1楽章・第2楽章、、、というように。
自分の物語を語り、そして仲間の物語を聞いた後、僕の心に浮かんだのは「大人になっても泣いたっていいじゃん」ということです。涙が出るくらい心が震える、そんな場面にこれからも何度も立ち会いたいと本当に思いました。
そのときふと、人生というのは「子供から大人になり、そして大人から子供に戻るという物語なのではないか」という思いにとらわれました。あるいは「子供から大人になり、そして大人から別の何かに変わるという物語」。
自分の好きなこと、純粋な好奇心に駆られていた子供時代から、社会で生きていくためのルールや協調性を習得して大人になっていく。それは、自分が傷つかないように、あるいは周囲の人たちに受け入れらえるようにはどうすればよいか、様々な経験から認知パターンを身に着けていくプロセスでもある。
でもどこかで「本当にこれが自分の望んでいる人生なんだろうか」という疑問に憑りつかれる。社会の中でうまくやっていくことに過剰適応してしまい、何かもやーっとした虚無感や閉塞感、焦燥感を持つ。それは「大人」から次の形態に移行する合図なのではないかと思います。
これまで必死に頑張って生きてきたからこそ強固に持っている認知パターンを揺らし、自分の中の奥底にある感覚や感情を引っ張り出し、新しく大事にしたいことを自分の心に刻む。
Co-Activeコーチングというのは、このような変化を実現するための関わりなのではないかと思います。
これが現時点で僕なりに理解したことです。
これからもどんどん変わり続けると思いますが、104時間の基礎コース・応用コースを修了した時点での記録としても残しておきたいと思います。
学びに関わってくださった全ての皆さんに心から感謝します。ありがとうございました。