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ベルント&ヒラ・ベッヒャー私史/3の1

(タイトル写真はMOMAのWEBサイトより引用キャプチャー:URL=https://www.moma.org/collection/works/127884
大学に入って間もなくした頃だっただろうか。大学生協で本を立ち読みしている時、衝撃の写真と出会った。それは小さな写真だったが、私にはとんでもなく強烈だった。そこにはたぶん「ベルント&ヒラ・ベッヒャー」と書いてあっただろう。それがベッヒャー夫妻との出会いだった。

それがなんていう本だったか、どんな本だったかも全然覚えていない。現代美術の流れみたいな本だったんだろうな、とは思う。そこに掲載されていたのは代表作である給水塔だった可能性は高いんだけど、記憶としては小屋みたいなものだった気もする。まあ何でもいいけど、そこで一気にファンになった。と言って、その時点で作品はその一点しか知らない。他の作品を知りたいけど、とりあえず生協にはない。図書館で検索しても、まあない。

あの時インターネットがあったらなーと今となっては思う。当時は「検索」みたいな発想がなかった。とにかく、美術館とか図書館とか本屋さんとかを捜索していくしかない。展覧会のついでに、美術館の図書館に行く。でも当時の公立美術館の図書館って正直あんまりピンとくることがなかったな、そういえば(今はどうだろう)。そして青山のワタリウム美術館の地下「オンサンデーズ」で、その写真集に出会った。ベッヒャー夫妻の給水塔の作品のみで構成された写真集だ。

その時手にしたのは、おそらくこの「Typologies of Industrial Buildings (The MIT Press) 」だったんじゃないかと思う。もしかしたらこんな感じの写真集「Basic Forms (Masters of the Camera)」もあった気がする。欲しい、猛烈に欲しい。しかし当時の私に買えるような金銭状況ではないし、もちろん買えない。貧乏大学生にとって、写真集に1万円以上出すとかなかなかハードルが高い、というかそれは無理だ。でも観たい、観たい、観たい。

どうするか。当時住んでいた世田谷区羽根木(新代田駅)から青山のワタリウム美術館まで、自転車で30分。当時「フルクサス展」とかやってたこともあって(確か何度も入場できた)、自転車行って立ち読みするみたいなことを何度もやった。「なにがそんなに」っていうくらい、一見静かな、淡白な作品なんだけど、でもたまんない。まだ写真集以外で作品を観たことはなかったにも関わらず、もうすっかり心酔していた。

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