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男性の僕がフェミニズムTweetをしたらバズったので反応をまとめて分析し反論もします
フェミニズムTweetをしたらバズった
先日ツイッターにフェミニズム的なツイートをしたら、たくさん拡散されました。いわゆる「バズる」という現象だと思います。バズったのはこちらのツイートです、少し長いです。
先日お店に、ある金融機関の人(若い男性)が新たにこの地域の担当になったというので挨拶に来た。その人はカウンターの前にいた妻、店の奥側にいた僕と挨拶を交わし、その後は僕と話したそうに目線を僕の方に移動させた。つまり「自分が話があるのは奥にいるあなたです」という雰囲気を出していた。→
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
「男女ふたりでお店をしている場合、責任者は男性の方である」との偏見(ジェンダーステレオタイプ)に基づいたものだろう。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
これは男女でお店をしている人なら誰しも経験のあることではないか。
なお、うちでは二人の立場は対等で、HPでも名刺でもどちらか一方が責任者に見える表記はしていない。→
僕は男3人兄弟で、中学高校は男子校、大学も院も理工系で8割以上が男性、就職先も明らかに男性優位だった。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
その環境が偏っていることに気づいてはいたけれど、「そんなものだ」「それが普通だ」と思っていた。大学や企業に関しては「入りたい女性が少ないんだからしょうがない」との認識だった。→
今の僕からしたらとても恥ずかしいけど、当時はそう思っていた。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
結婚して妻と暮らし、女性からの視点も見えるようになると世界が変わった。
「なぜ結婚して姓を変えるのは”普通は”女性なのか?」「女性の日常生活に影響を与える生理が社会(特に企業)でなぜほとんど考慮されていないのか?」
→
それまで僕は考えたことがなかったけれど(ごめんなさい!)、社会はおかしなことだらけだった。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
男女ふたりでお店をするようになると、一層社会の偏見が見えてきた。
男性である僕を責任者だと思うのは、冒頭の金融機関の人だけじゃない。→
お客さんや取材時にも最初から僕を代表者だと決めつける人は多い。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
例えば、
・妻が電話に出ると「代表者に替わってください」と言われる(僕が出ると言われない)
・お店はふたりで考えて始めたが、「夫が言い出して、妻がそれを許した」という勝手なストーリーが作られる
などなど。
「実際に男が代表者であるケースが(統計的に)多いんだからそう思うのは仕方ないじゃないか」との意見もあるが、これは言い訳だ。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
自分の意識を変え、
「なぜいま代表者に男性が多いのか?」
「そうなっている背景に社会の構造的差別はないか?」
これらこそ問われなければいけない。→
冒頭の金融機関の男性に対し、僕は挨拶のあと話を聞きに近づくことはせず、妻が最後まで対応した。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
それで社会が変わるわけじゃないけど、できる抵抗はしていきたい。
きっと個人店の世界でも、声をあげられない店主・店員はジェンダーを問わず多いと思う。→
僕にできることはとても小さいけれど、一緒に声をあげるとか、できることを考えるとか、やれることはやっていきたい。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
その宣言のための連続投稿でした。→
この投稿のきっかけをくれた、こちらの動画に感謝です。@tsuda @nomikaishiyouze https://t.co/1XEjxgBFbi
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 9, 2020
どの程度の拡散かというと、先頭のツイートでは、この文章を書いている時点(投稿から3日経過)で2,112件のリツイート(うち103件が引用リツイート)、6,457件の「いいね」が付いています。アクティビティを確認すると、ツイートを見られた回数(インプレッション)は75万8千回を超えたところです。これがどの程度のバズりなのかはよくわかりませんが、著名人でもインフルエンサーでもない僕にとってはとんでもない数字です。
それで、これだけたくさんの人に読まれた結果、引用リツイートやリプライ、さらには「引用リツイートへのリプライ」や「リプライへの引用リツイート」などなどを通して本当にたくさんの方のご意見が投稿されました。僕のところに届かないコメントもあるのですべてを把握しているわけではありませんが、関連するコメントが数百件は投稿されているのではないかと思います。とてもありがたく、多くのことを学ばせてもらいました。
リアクションを整理し、分析する
当然コメントには賛否両論あり、中には僕への非難の言葉も含まれていました。これらのリアクションに対し、ツイッター上でひとつひとつ議論を交わすのでは議論の重複も多くなりますし、ツイッター空間の特性を考えてもあまり有意義なものになるとは思えません。ただ、たくさんのコメントを読んでいくと、その中に一定のパターン(同じような考え)があることが分かってきます。ならば、それらを整理して見える化し、それに対して僕が考えたことや反論などを文章にまとめておくことは、現状の日本のジェンダー不平等やフェミニズムを考えるうえでも有意義なのではないか、と考えこのnoteを書くことにしました。
以下では、今回の一連のツイートに対するコメントの中から、いくつかの代表的なツイートを取り上げつつコメントしていきたいと思います。
1. 共感、同じような体験
まず何より、「同じような体験をしている」との声がたくさん寄せられました。これは本当に多くて、以下はそのごく一部です。
これ、住宅購入時に妻の立場で何度も経験しました。名刺を夫にしか渡さない、内装の話は私にするけどお金の話は夫にしかしない等。
— トミコ・ザッカーバーグ (@tomiko_zucker) October 10, 2020
「わたし、夫より数倍稼いでるよー、内装は夫の方がこだわるよー」と思いつつも面倒なのでその場は受け流して、そっと候補から外しました😊
今の車のディーラー、修理士の男性たちは殆どこれ。
— m@4歳7ヶ月育児松 (@1119mkt) October 10, 2020
わたしの車なのに夫が同席してると夫に話す。わたしの車なのに。
修理士でも女性、営業の女性だとわたしをメインに話してくれる。
車のことは女性に話してもわからないと思ってんだろうけどこちとら車部品の製造業10年やってんゾ。 https://t.co/hptMmKHqxQ
これね…。以前、紳士アパレルで店長をしてた時「責任者はどなた?」と聞かれて私だと答えると「あら、あなたなの…」と女性が責任者をしている事が意外かのように言われた事あったっけ…。悔しかったな… https://t.co/91bhBn0JxM
— ポチャ (@masa5723) October 9, 2020
営業側もそうなんです…
— 野山ぴさか@DQX復帰勢 (@noyamapisaka) October 9, 2020
新卒の何も知らない資格もこれから、経験も肩書きもない子でも男性を連れていくと、急に偉い人が名刺くれます…
それまで何度も足を運んでいた会社でそんなことがあって、あーそっかーって思いました。
ホント、何なんでしょうね、この世の中の男女差別って。
こういったツイートを読んでいると、日本の女性への偏見やジェンダーステレオタイプがいかに根深いかが垣間見えます。以前お店をしていた友人は個別に体験を教えてくれて、「わたしもお店してる時、旦那さんがお金を出してくれてやっている主婦と思われて何度もカチンときた」とのことです。まさに偏見です。
共感の中でも、ジェンダー以外のステレオタイプについて言及してくださった方もいました。
日本ではすごくよくある事だと思います。男性と女性なら、男性にむかって話す。
— Half Moon st./半月通り (@halfmoonst) October 9, 2020
そしてわが家のようにアメリカ人の夫と日本人の私なら、日本人である私にむかって話す。
男性>女性>外国人
どっちもステレオタイプの偏見に基づいた嫌な対応だと思います。 https://t.co/x1pbVZRAF5
ステレオタイプはジェンダーに限ったことではなく、国籍、年齢、見た目など、社会の様々な場面で見られるものであることを意識させられます。つまり、状況や場所によっては、僕も、あなたも、誰だってマイノリティーや社会的弱者になり得るのです。
2. 偏見があると雰囲気で判断したことへの批判
僕の冒頭のツイートに「(金融機関の担当者が)『自分が話があるのは奥にいるあなたです』という雰囲気を出していた」との記述があることから、僕が雰囲気だけで担当者に偏見があると判断したことへの批判が多数寄せられました。
雰囲気だけでこんなに長く書けるのすごいな。どっちかに目を合わせて話すんだから、たまたまかもよ?自分がそうだったからって他人も同じだと決めつけるなよ。 https://t.co/bsreEYRQko
— 冷凍ミカン (@adgj234562) October 9, 2020
どんな大罪を犯したのかと思ったら「雰囲気を出していた」の罪だった。 https://t.co/sNnQC7qI23
— rionaoki (@rionaoki) October 10, 2020
雰囲気だけで晒し上げられる若手社員可哀想に😖
— 私刑絶対反対🥺 (@fujitagiwaku) October 10, 2020
百歩譲っても、男女問わず奥にいる方が責任者と思うのは当然だろうに https://t.co/ADrHLlKnNW
まず、この指摘自体はもっともだと思います。実際、この担当者が本当に偏見を持っていたかどうかについて僕に確固たる証拠があるわけではありません。もし僕の勘違いで、今回の件について彼には全く偏見は無く、もしこの方がこのツイートを読まれて気分を害されたのであれば、お詫びしたいと思います。
ただし、そうだとしても、この一連のツイートにおいてこの金融機関の方の話は直近の例として挙げたに過ぎず、ツイートの中では他にもいくつか例を挙げています。さらにこれらも日常の中で何度も感じていることの一部を指摘したに過ぎないのです。なので、もしこの方に偏見がなかったからといって、僕が主張したかったことの意味が損なわれるとは考えていません。
さらに言うと、ある程度の期間、接客業をしていると、店の中での目線や声、仕草などから、その人のその時の意向がある程度は読み取れるようになるものだ、ということは指摘しておきたいと思います。
あと、少し話がズレますが、最後の人のツイートにある「男女問わず奥にいる方が責任者と思うのは当然だ」という指摘は、他にも複数ありました。これは単純に僕がお店の詳細をこのツイートには書いていないので勘違いされただけだと思います。恐らくこの指摘をした方々は、オフィスっぽいお店というか、例えば郵便局とか銀行とか、カウンターがあってその奥に事務スペースがあるような店舗空間をイメージしたのではないかと想像します。そのような店舗の場合、「奥の方に座っている人が責任者」というのはある程度当てはまるでしょう。ただ、うちの店はカウンターがあってそのすぐ奥に作業スペースがあるだけで、僕はそこにいただけです。たとえばスタンド式のカフェやカウンター式の寿司屋などの方がイメージに近いと思います。こういったお店を想像していただければ、「奥にいる人が責任者」という感覚は生まれないのではないでしょうか。
3. 「相手に指摘すれば良いだけ」もしくは「責任者がわかるようにしておくべきだ」という意見
「その場で責任者がどちらかを伝えれば済む話だ」といった指摘や、「そもそも責任者が分かるようにしておくべきだ」といった意見も複数ありました。
黙ってないで「妻が責任者です」とハッキリ言えば先方に対しても親切で丸く収まるのに、何故変な戦い方をするのかが良く分からない。現状で男女平等を謳うなら、男性は女性の下につく意識を持つ位で丁度良い。 https://t.co/9rFypeha9B
— 頼孝延 (@raitakanobu) October 11, 2020
いや、相手が勘違いしてるなら代表者は妻ですよ、と伝えてあげればいいし、そもそも一応会社ならそれぞれの役割をHPに書いとけば済む話。 https://t.co/Ju6QjAyoj5
— TOMBO (@uscpastudy) October 9, 2020
これ、ちゃんとどっちが金融担当か?を営業マンに明示しないと、担当者がかわいそう…。
— 未森 ひろこ (@mmr_hrk) October 9, 2020
単にどっちが担当かわからずに迷った可能性も。 https://t.co/C08cNDcx8J
僕の一連のツイートの主旨からいって、これらの指摘は見当違いと言わざるを得ません。僕が今回伝えたかったのは無意識の女性への偏見やジェンダーステレオタイプが存在することであって、うちの店においてこういった場面を「丸く収める」方法でもなければ、どうしたらその担当者が「勘違い」しなくなるか、でもありません。今回直接その方に指摘しなかった僕の行為が良いか悪いかは様々な意見があると思いますが、そのことと今回の論点は関係のないことです。
ちなみにうちは夫婦ふたりの小さなお店で、「金融機関と話す担当」というのは存在しません。なので、実際には話しかけるのはどちらでも構わず、この担当者は「勘違い」をしたわけではありません。もし迷ったのなら、というか(偏見が無いのであれば)判断できるわけがないので、迷うより先にまず「〇〇について話がしたいのですが、どなたと話せばよいでしょうか」と尋ねればよかったのです。ただし、繰り返しますが、このことは今回の主旨とは関係の無いことです。
※なお、上のツイートのような指摘とは別に「なぜ直接本人に偏見について指摘しなかったのか?」というご質問をもらっていて、それに対する回答は後述します。
4. 「社会運営をスムーズにするためにステレオタイプが存在するのは仕方がない」という意見
ジェンダーステレオタイプには(ジェンダーに限らないですが)社会運営をスムーズにしている効果があり、その代わりに弊害が生まれるのはある程度仕方がない、という意見も見られました。
言いたい事はわかるが実際的な運用、平たく言えば仕事を普通にする中で毎回営業側がそんなことを考えて働いてたら旧いステレオタイプに当たった時面倒事に発展しかねないからしゃーなし
— 柑橘類 (@kankitsu_KNIGHT) October 10, 2020
言い訳って言っちゃうのは当事者の勝手。 https://t.co/LJE5qaBSV8
いや、それは物事を行うフェーズが異なる話で。つまり実際に何処かのお店に金融機関の担当者が挨拶に行ったとして「そのお店の本当の代表者、つまり実権を握ってる人が男女のどちらか分からない」と言う状況の場合、当然「現在の社会状況に合わせて確率的に高い方」と重点的に話をしたくなるのは当然。 https://t.co/AKND0nRFNR
— 彫木⛅環🧷✂️✏️(さよなら安倍、こっち来んな菅) (@CordwainersCat) October 9, 2020
これは、近年世界中で広がる保守派の言説に見られる「少数者のことばかり気にしていたら、他の多くの人の生活が窮屈になる」という理屈と共通する考え方です。「ステレオタイプが社会運営をスムーズにしているんだから、一部の人間(今回の場合は女性たち)が嫌な思いをすることくらい我慢しろ」という理屈です。しかしこれは一部の誰かを踏んづけて自分たちが楽をしたいだけの理屈であり、僕は受け入れることはできません。
たしかに、何のステレオタイプも存在しない世界で生きていくのは大変だ、というのはその通りだと思います。ただ、ステレオタイプが必要だとしても現在のジェンダーステレオタイプのように誰かを苦しめるステレオタイプである必要はないでしょう。ジェンダーギャップの無いステレオタイプに更新していけば良いのです。たとえば、「家事は女性がするものだ」というステレオタイプから、「家事は性別に関係なく共同でするものだ」というステレオタイプへと更新すれば良いと思います。
マイノリティーや社会的弱者を踏んづけた上で成立しているスムーズな生活にあぐらをかくのではなく、誰も踏んづけなくてもよい方法を模索していくことが必要です。繰り返しますが、状況や場所によっては、僕も、あなたも、誰だってマイノリティーや社会的弱者になり得るのです。
5. 「相手がジェンダーステレオタイプな男かもしれないから合わせるしかない」という意見
偏見なことはわかってるけど相手側の男性にジェンダーステレオタイプがあるかもしれないからそれに合わせるのは仕方がない、という意見も多かったです。
うーんとね。
— なんや×かんや (@lZRSXNLmMHvpGRE) October 9, 2020
男女でお店などしてる時、「男が責任者ですよね、分かってます」って態度してないと、拗ねる男性が多いから、一応そう言う態度する場合もままあります。
もし女性が責任者だったとしても、「そうだったんですか!?失礼しました」と態度を改めれば、女性はそうそう臍を曲げないから。 https://t.co/p56d5mZhO9
これ難しいですね。男性(夫)を尊重して対応しないと不機嫌になる方もいらっしゃるし…。 https://t.co/uZGqEoZFlh
— 田辺仁美☆働くママのインテリア応援 (@roomsailing) October 10, 2020
営業マンの立場からすると、話をするなら責任者とわかれば男女はどちらでも構わないのだが、特に年配の男性に対しては、後で「俺を無視しやがって」みたいな状況になるのを避けなければならない。幼稚なのが多いから。
— Jorge🐾 (@Jkwsk) October 9, 2020
これらの意見を読んで、僕は正直「なるほど、それは大変だな」と感じました。一つ前の意見(ステレオタイプ社会運営スムーズ論)とかなり近い意見ですが、相手側に存在するジェンダーステレオタイプが次のジェンダーステレオタイプを誘発している点で話がさらに厄介になっています。
ジェンダーステレオタイプがジェンダーステレオタイプを生む悪循環。難しい問題です。ただし、この状態を放置していてはいつまでたっても社会からジェンダーステレオタイプは無くなりません。いつまでも誰かを踏んづけ続けることになる。どこかでこの悪循環を止めなれければいけない。
そこで、これは僕からの提案ですが、相手の性別に関わらず前述したフレーズの「〇〇について話がしたいのですが、どなたと話せばよいでしょうか」とまず尋ねることにしてはどうでしょうか? こう尋ねれば、別に男性を責任者候補から外しているわけでも、無視しているわけでもないことが伝わると思うのです。
ただ、それでも中には「男の俺に決まってるだろ」という人はいるかもしれません。それはもう「そうでしたか」と流すしかない。これで相手方が機嫌を損ねることは企業にとってマイナスだと思われるかもしれませんが、それは間違いです。MeToo運動の高まりやSDGsへの取り組みなどにより、国際的にも社会は確実にジェンダー平等へ進んでいます。そんな中では、たとえば営業担当者が客先で女性差別的、ジェンダーステレオタイプ的な対応を取ることはむしろ大きなリスクとなります。信用を落とし、企業にとってもマイナスとなります。相手がジェンダーステレオタイプな客である可能性を心配するより、いまのうちからジェンダー平等な対応を取ることの方が、営業担当者にとっても、企業にとっても中長期的にはプラスになることを理解すべきです。
6. 「ジェンダーステレオタイプは人類にとって自然なあり方だ」という意見
現代社会のジェンダーステレオタイプは生物としての人類にとって自然なものである、という意見もありました。
男性が代表になる構造に、狩猟採集時代からなってきたのは、何らかの自然的な側面がある可能性が濃厚であって、もちろん女性が代表で男性が副代表で上手くいくのなら良いのですが、生物としての在り方を無視して急激に様式を変えるのは、その行為によって苦しめられる人が多数出る心配がありますね。 https://t.co/vcgSqaDXnl
— オオカワ (@okawa_hi) October 10, 2020
人類学や歴史学の研究成果は、この考えが誤りであることを指摘しています。
人類学者の丸山淳子さんは、ポッドキャスト(下にリンク)の中で、狩猟採集民の生活様式を現代まで保持しているアフリカの「ブッシュマン」は、性別によって仕事の役割を決めることはない、と述べています。性別による上下関係や役割分担を決めることをブッシュマンたちはむしろ強く否定するという話が印象的です。
また、国立歴史民俗博物館の横山百合子さん(日本近世史、ジェンダー史)は、インタビュー(下にリンク)の中で次のように述べています。
歴史をたどっていくと、男女の区分が非常に重要な意味を持っていた時代と、それほど意味をなさなかった時代があることが分かります。
祭祀が政治の役割を果たしていた古代には、男も女もリーダーは『祭祀=政治』を担っていました。
戦いが始まる弥生~古墳時代にかけても、祭祀・軍事・外交の全体に関わる地域リーダーに男も女もいたことが、埋葬人骨や副葬品から分かります。大規模な対外(朝鮮半島との)戦争が組織されるようになると、戦士およびそのリーダーは男がなりますが、国内の政治やムラ・地域を率いるリーダーには、あいかわらず男も女もいました
歴史を振り返れば、時代によって男女の区分や性差の捉え方が変わってきた、ということは明らかです。今の私たちが見ている景色は、揺がし難い『絶対的に決められたもの』ではないのです。
おふたりの話が示しているのは、男性が上に立つという構造は決して人類という生物にとって自然なものではなく、権力による思惑や偶然など、歴史的な様々な要因によって現在の状態になっているに過ぎない、ということです。
上のツイートをした方がどういった根拠で「男性が代表になる構造に何らかの自然的な側面がある可能性が濃厚」だとおっしゃっているのかは分かりませんが、もし根拠があるのであれば、教えていただければと思います。
7. みなさんの中のジェンダーステレオタイプの告白
僕のツイートを読んで、性別を問わず自分が過去に行っていたジェンダーステレオタイプな言動を告白してくださった方もたくさんいました。
息子の同級生のお母さんが家族経営でケーキ屋さんの社長をしています。
— ぱのこ (@bitter821bb) October 10, 2020
わたしはつい「じゃあお父さん(旦那さん)の仕事は?」と息子に聞いてしまったけど
考えてみたら知るべきはお母さんが社長である事実、それだけだよなと考え直して
猛省しました。
これは私も反省しないといけない。面倒なことは「主人に聞かないと」と利用してたことがたくさんあった。 https://t.co/1PeVFn0PHC
— 絵本のこたち (@cotachi_books) October 9, 2020
自分の中にもジェンダーバイアスがあり、注意しててもふと顔を出す。先日、後輩男子が結婚の報告に来て「苗字も彼女のにしたし、彼女の家を二世帯住宅にして同居している」と聞いてうっかり「お、長男なのに譲ったねえ!」って言ってから「ごめん、間違えた。立派」って訂正し、いやそれも違うな、と。 https://t.co/8f9rboPd6j
— ねむるねこ (@nobita4989) October 10, 2020
僕も過去を振り返ると、反省すべき言動がたくさんあります。これからは意識して、できる限りステレオタイプに基づく言動を無くしていきます。
8. 男性が言ってくれて嬉しい。女性が言うと叩かれる
これほんとそう。めちゃくちゃ共感するし、めちゃ経験してるよ。
— ふーみえー (@fumieee123) October 9, 2020
言葉にしてくれてありがたい。しかも男性が書くことに意味がある。女性が書くとまた謎に批判される。 https://t.co/vUtqMGToqs
男性視点でツイしてくれてる事が嬉しい https://t.co/cLY64Ge9XA
— みどり@DMの通知が来ない(´・ω・`) (@warayama_hana) October 10, 2020
こういう気づきを発信してくださるのありがたい。
— くじら🟥 (@quzi23) October 10, 2020
女性がツイートすると初期から糞バイスばかりがつくので。
ツイ主さん、「否定的なリプも増えてきた」とツイートしてるけど、すっごく少ない気がします...同じ内容を女性がツイートした場合より。
そういうところも、男女で不均衡なんだよな〜マジで https://t.co/8iwsXSJXNV
同じ発言をしても、男性だったら褒められて、女性だったら叩かれる。その事実自体に大きなジェンダーバイアスが見て取れます。本当に残念です。変えていかないといけないです。
9. 動こう、変えていこう
気づいていても行動に起こさないのは気付いていないのと同じ。小さな波も集まれば大きなうねりとなる。 https://t.co/0EU8qTl22S
— エリカ・ミカエリス(我が剣閃、幽寂閑雅の調べなり♥) (@tennis_erika_) October 10, 2020
「できる抵抗はしていきたい。」同じ気持ちです🙏 https://t.co/UDSDbnAzfr
— ライライ (@rairaipass) October 10, 2020
”当たり前”はどんどん破壊されていくもの。
— 🥰まや🥰プログラミング×哲学×イラスト (@MayaH_mdi) October 9, 2020
でも当たり前を覆す意思を持たなければ、流され続けてしまう。
小さなアクションがいずれ大きなうねりとなって新しい時代をつくっていくんだろうなぁ。 https://t.co/fPdNZKDHiQ
Twitter上で女性差別について言及してる男は数いれど、リアルで望ましい対応をしてるの初めて見た。
— ℕ (@upp8uvSZhG8sORg) October 10, 2020
私が必要だと思ってるアクションはこういうことだよ。 https://t.co/CSQPY4nia8
「小さなアクションがいずれ大きなうねりとなって新しい時代をつくっていく」、僕もそう思います。すべての場面で適切に対応することは難しくても、できるときに、できることからアクションを起こしていくことが大切だと思います。
僕自身は、妻と暮らすようになり、妻から日常の中で感じる偏見について教えてもらえたことが、意識が変わる大きなきっかけとなりました。そして今回のフェミニズムTweetをするに至り、それをたくさんの方が読んでくれました。
自分が差別されたとき、もしくは差別の現場に立ち会ったとき、「それは差別です」と声をあげることは大切ですが、それはとても勇気のいることで、誰しもができることじゃないと思うのです。また、SNSで声をあげることも、炎上するかもしれないし、簡単にできることではないと思います。
だから、まずは身近な信頼できる人に、「こんな扱いを受けた」とか、「あの発言ってモヤモヤするけど、どう思う?」とか、そんな風に話をするだけでも、その相手に気づきを与え、その人がまた他の誰かにその気づきを伝えてくれるかもしれません。そうして少しづつ広がって、大きな変化につながれば良いなと思っています。
質問・疑問への回答
意見や批判とは別に、ツイッター上でいくつか質問や疑問をいただき、回答したのでここでも紹介します。
<質問・疑問1>
すいません、単純に疑問なんですが、どうして思われたことを直接本人にお伝えされなかったのでしょうか?
— 名前はまだない (@Q7wPZ2bs4ufwE6R) October 10, 2020
若い男性だったとのこと。伝えた方が本人にとっても勉強になったと思います。
(回答)
僕に勇気が足りないのだと思います。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 10, 2020
これからもその場で本人に思ったことをすぐに伝えられるかは、あまり自信がありません。。ただ、ご指摘の通り、直接伝えることで変わることはあると思います。少しずつでも直接伝えられるように努力していきます。 https://t.co/4J6sT3XONH
<質問・疑問2>
結婚するまで分からなかったんだ、へえ。 https://t.co/MmXRG7En62
— Moonlight japonicus (@Eda_nomel) October 10, 2020
(回答)
はい、結婚するまで分かりませんでした。過去の自分が本当に恥ずかしいです。妻には心から感謝しています。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 10, 2020
いまも全てを理解できているとは思っていません。これからも勉強を続けて、少しずつできることをやっていきたいと思っています。 https://t.co/mH2uCzBnyq
<質問・疑問3>
中村さんは、姓をどちらにするか、どのように決めましたか。嫌らしい質問ですみません。中村さんのような考えを持っている人は、どのように姓を決定するのか気になったのです。私は夫婦別姓賛成派です。まだ結婚していません。結婚することになったとき、どう姓を決めるのか気になってます。
— とようけ (@toyoukebime1) October 9, 2020
(回答)
うちは妻が僕の姓に変えたのですが、結婚を決めた当時、正直僕は深く考えておらず「そういうものだ」と思っていました。とても恥ずかしいです。
— 中村佳太|Keita Nakamura (@keitanakamu) October 11, 2020
当時の2人の関係では、まだ妻は僕に違和感を口にできなかったそうです。今だったら2人でしっかりと話し合って決めます。
僕も選択的夫婦別姓に賛成です。
おわりに
今回のフェミニズムTweetのバズりの経験で、僕は多くのことを学ぶことができました。今の日本にはびこる女性差別、ジェンダーステレオタイプに、いかに多くの女性が日常的に遭遇しているのかを知ることができました。また、そのことを理解せず、見当違いな意見や理屈を持っている方が性別を問わず多くいることも実感しました。
そして、ジェンダーステレオタイプを意識すると、ジェンダー以外の様々なステレオタイプや偏見についても、それが社会にどれだけ蔓延しているかが見えるようになってきます。
日本社会において身近なマイノリティーである女性への問題を考えることで、社会全体のステレオタイプや偏見、差別をなくす動きにつながっていくのだろうと思います。
僕にできることはとても小さいですが、これからもできる限り考え、行動していきます。社会が少しずつでも変わっていくことを切に願います。
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