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夢の中のあの街へと帰る

夢の中でよく行く街はないだろうか?
毎日ではない。ごくたまにその街に行く夢を見る。
俺はその架空の街で今とは別の家族と暮らしている。
仕事は運送業で趣味は呆れることにパチンコだ(笑)


それは毎回同じシーンから始まる。
車で橋を渡るとその架空の街が現れるのだ。

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現実では全く見に覚えのない街。
似たようなところは確かにあることにはあるが、建っている建物がまるで違う。

橋を越えて左に曲がると片側二車線の道路があり、少し行くと左側に古めのパチンコ屋とキレイなチェーン店のパチンコ屋、道路の向かい側にもパチンコ屋がある。
この向かい側のパチンコ屋にスロットだのを搬入したりするのが俺の仕事だ。現実では絶対にやらない、重い物を運んでいる(笑)

半地下、半二階のパチンコ屋があるビルで、上の階は駐車場になっていたか?
仕事関係であるためここで打つことはない。
遊ぶのは決まって向かいにある二件並んでる左側の古い方のパチンコ屋。
細長い建物で通路が狭く、よく人とぶつかるのが難点だが、店の奥の方に羽根物があるので気に入っている。

その羽根物達も古くなり、徐々に姿を消している。
3列しかない通路の床板もすっかり古くなり、なんとも時の流れを感じる。


そう。この夢の中の街もきっちり時が流れているのだ。


新しい店が出来ることもあるし、潰れてマンションになったりもする。
住宅街で細々とやっていたゲーセンの婆さんは先日ついに亡くなってしまった。
娘さん(といってもかなり年配の方)夫婦は店を閉めようかどうか悩んでいるそうだ。
「少子化だし、今は家でゲームする子が多くなったから」と言っていた。

昔はこの薄暗いゲーセンの中に沢山の人がいて、俺は二階の30円で出来るテーブル型のゲームでよく遊んでいた。狭いゲームセンターなのにここは二階もあるのだ。階段はものすごく急勾配。
店内には10円で紙コップのコーヒーを売っていて、100円持って3回ゲームをして1杯コーヒーを飲むのが定番だった。小さい頃はまだ婆さんも若くて元気だったなぁ。


俺は夢の中のこの街に小さな頃から来ている。
来ていると言うよりも暮らしていたんだと思う。
現実の方で就職して免許を取ってから、なぜか橋を越えてから街に行くようになったのだ。

小さな頃はこの夢を見たあと、どちらが現実なのかわからず怖かった。


・・・と、ここまでを下書きで書いていたのだけれども、先日また夢の中のこの街に久々に行ってきた。

なんと!俺のお気に入りのこの古いパチンコ屋が閉店していたのだ!

入口の貼り紙見てしばらく呆然としてしまった。
いやぁ残念だ。夢の中とはいえ。
今この店の話書いてる途中だってのに・・・。

居抜きで他のパチンコ屋が入ることもなく、完全に解体してしまうそうだ。
古い建物だったしなぁ。


ここまで読んでいる方も、もうどっちが現実の話か訳がわからなくなってしまうのではないだろうか?
俺自身も訳がわからない(笑)

たまに今こうしてタバコを咥えながらパソコンの前に座っている方が夢で、あっちが現実なんじゃないかと思うこともあるくらい。
だから起きてすぐのまだ寝ぼけてる時は「こっちは現実!」と確認しながら起きる。目を開けて汚い天井の方が現実の方。


夢の中での俺は奥さんと子供が二人・・いると思う。
パチンコ屋の大きな通りから斜めに入っている道の方に行き、前述したゲーセンの前を通ってもう少し奥の、個人でやっている車の修理工場のそばのアパートに住んでいる。

そこまで記憶はあるのに、家族のことがよくわからない。
奥さんの顔も、子供たちの顔も、モヤモヤとぼやけている。

現実の方の嫁と子供らではないのは確か。
理想の家族という認識はあるはずなのに、家族と一家団欒の記憶もほぼないのだ。仕事の同僚に奥さんや子供の話を振られては愛想笑いで誤魔化す。

なぜか自分の家族の顔だけが見えない。


他人の夢の話なんて本当にどうでもいいとは思うが話は勝手にまだ続く。

ある時俺はこの夢の中の街で、ふと疑問に思う。
いつも川の上の橋の途中から始まるこの夢の街、渡ってきたあの橋をこちら側から渡って戻るとどうなっているのか?と夢の中の俺は考えた。

夢の中の街で俺は自由に行動し、時にはサイクリング、時には遠方までドライブの旅と生活を満喫しているのだけれども、どういうわけかこの橋だけは戻ったことがなかったのだ。

「橋の向こうは何があるんだろう?」と嫁さんに話しかける。
すると「駄目よ絶対。行ったら駄目」と静止された。
モヤモヤした顔のまま少し怒っている。
仕事の同僚や知り合いなんかにも同様のことを言ったら、ギョッとした顔をされて話を濁される。

ますます気になってしまった夢の中の俺は、明け方のほぼ人のいない時間帯に車に乗って橋に向かうことにした。
なかなかの急勾配を唸りを上げて駆け上がっていく。途中から車を路肩に停めて歩いていった。

そこには目を疑う光景があった。


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橋が途切れていて、渡れない状態だったのだ!

前方には薄っすらと橋の向こう側が見える。
そしてその橋の向こうに霞んで見えるのは、現実の俺が暮らす街、見慣れた札幌の風景が広がっていた。

橋の横には数段降りる階段があり、そこを降りると橋の下をくぐり抜けるように反対車線側へと続く。
何かの通路を通り、更に下へと降りる階段があったが、残念ながらその階段も途切れていた。

恐る恐る途切れた階段から身を乗り出すと、川の向こう側に草むらと歩道があり、そして数え切れないくらいの石と骨が落ちているのが見えた。

ここから飛び降りてでも向こう側へ行こうとした人達の死体だろうか?
この風景にも見覚えがある気もするが、わからない。

結局俺は進むのを諦めて元の道へと戻り、夢の中の街の自宅へと戻った。
モヤモヤ顔の嫁さんが「帰ってきたんだね。良かった」と安堵の声で迎えてくれた。

朝飯を食べて、その時はまだ閉店していなかったいつもの古いパチンコ屋に向かおうとした俺に嫁さんが話しかける。

「ねえ・・夢の中でいつも行く街ってない?」
「ああ・・確かにある」
「そこでも同じように暮らしてるの?」
「パチプロ辞めてからろくでもない暮らし方をしてるよ」

「今と似たようなもんじゃないの」と言いながら、ふふふと笑うモヤモヤ顔の嫁さん。
靴を履きながら玄関を出ようとする俺に「また帰ってきてね」と声をかけられた。

玄関を出ると眩しい光。
まぶたを開けると見慣れた天井。

現実の嫁に今見た夢の話をすると「ああ~あるある!」と頷いていた。
「そこでも同じように暮らしてるの?」と聞かれてゾワッとした。
俺は今現実なのか夢の中なのか?


寝ることと死ぬことは同じこと。
違いはその後起きるかどうかなだけだと昔誰かに聞いた。

とすれば、あの途切れた橋の下にあった川はやはり・・・

しかしまあ賽の河原って結構舗装されてるんだなぁ(笑)
途切れてたとはいえ橋もかかってたわけだし。


追記
夢の話だからなんだか創作話にしか思えないでしょうけれど、実際に見る夢の話です。他人にとっては創作のようなものか(笑)

現実の方の嫁と「久々に行ったいつもの街に、なんか俺が絶対入らないようなオシャレで高そうな服屋が出来たよ。ユニクロくらいの大きさの店で見た目はログハウスっぽいやつ。いらんわぁ・・・あと古い方のパチ屋潰れた」と普通に会話をしています。

「そっちでも飲みすぎて奥さんに迷惑かけないでよ」と心配されてるけど・・・あっちの嫁さんにも同じことを言われそう(笑)



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