物価の違いに戸惑う
北海道の物価は安い。
もちろんその中でも都会と田舎でまた差があるのだけれども。
インターネットで誰かのコメントや情報を見ると、時折驚くことがある。
これは極端な例だけども見て欲しい。
とある日の道内産じゃがいもの値段だ。
見ての通り20キロ298円。
もちろんスーパーに行けば恐らく他の地域とそう変わらない値段でじゃがいもを売っていることもあるし、普通に高いなぁと思いながら買うこともある。
ただこのように安く売っていることも知っている。
夕張に行けばあの高級な夕張メロンも直売で一玉500円で売っているのだ。スイカも然り玉ねぎも然り。
魚介類なんかもそうだ。
ある時友人に「ホタテ貰ったんだけど食べきれないから持ってくかい?」と言われて「おお嬉しいな」と二つ返事で貰うことを伝えると、どでかい発泡スチロールの箱にとんでもない量のホタテを入れて持ってきた。
食べても食べても減る様子がない。
焼いてみたり燻製にしてみたりもしたけれど、結局半分ほど腐らせてしまい処理の仕方もわからず(とんでもない悪臭を放ってしまった)全て土に埋めるという暴挙に・・・。
まあこれは北海道に限らず、近くに農家さんや漁師さんなんかがいればこういったことはよくある事だろうと思うけれども、北海道はその農家さんや漁師さんがあまりにも身近なのだ(笑)
で、良い物は道内産の食べ物として本州に運ばれ高く売られ、売り物にならない形の悪い物が安く売られたり「いいよ持っていけよ」ということになる。
道民はそれに慣らされていて、テレビやネットで「じゃがいも3個198円」みたいなのを見ては少しギョッとするのだ(笑)
これだけ聞くと羨ましいなぁと思う人もいるかも知れないが、良い事ばかりではない。
物価が安い分、当然賃金も安いからだ。
バイトの時給もぜんぜん違う。
現在北海道の最低賃金は時給861円。
東京都は時給1013円となっている。
約150円ほどの違いだが、一日8時間で月20日間働いたとするならば、北海道だと137760円で東京だと162080円となり、24320円も違ってくる。
1年間で291840円の差だ。
物価も家賃も違うんだから仕方ないだろうと言われればそれまでなんだけど、よく考えてみて欲しい。
ニンテンドースイッチは全国ほぼ同じ値段なのだ!
買うのがじゃがいもだけならいいけれど、そういうわけにはいかない。
家賃も札幌だとそれなりに高い。平均6~8万というところか。一人暮らしする家だと。
(ちなみにニセコあたりの外国人セレブが住む街は、とてもじゃないがそんな値段では住めない。店も英語しか通じない場合も多い)
話がかなりそれてしまった。
ともかくしばしば物価の違いに驚くという話。
そしてその違いに驚くのは何も道民だけではない。
北海道へ転勤してきた家族も驚くのだ。
ここから話は30年ほど遡る。バブルの頃だから32~3年前か。
俺が将来クレジットカードを持つべきか持たざるべきか?と議論になった例の寿司屋でバイトしていた時の話だ。
とある常連さんの知り合いが横浜から札幌へと転勤となってやってきた。
すでに結婚もしていて子供も二人、単身赴任も考えたけれどここは心機一転、思い切って全員で北海道へと移住を決めたとか。
年齢もそれなりにいっていて、役職もそれなり。
何かやらかして飛ばされたわけでもなく、何かのポストに就くような形でやってきたそう。
給料も当然上がる。
それならばと札幌の支店の知り合いに、とある条件を出して家を用意してもらうことに。
当時バブル真っ只中。
横浜では家賃15万円の家に住んでいたそうだが、この転勤を機に家もランクアップしようと家賃20万円くらいの物件を用意するように頼んだそうだ。それが条件。あとはおまかせ。
札幌の中心地からは少し離れてはいるけれど、それでも車で中心部へまで10分で行けて、最寄りの地下鉄駅なら徒歩1分といった良いマンションが見つかったと連絡がすぐにあった。
部屋も5LDKだか6LDKだったか?とにかく大きくて日当たりもいい広いキレイな部屋だと連絡が来たので、それを信じて思い切って契約を決めたとか。
先に荷物を引越し業者に運ばせて、さあいざ北海道。新居へと向かう。
最寄りの駅に着いてみると、駅から徒歩1分どころかほぼ駅の真上と言っていいような立地に、環状線と主線道路が交わる交差点が目の前のマンションだった。その最上階。
横浜でも流石にこの立地では家賃20万で住めるわけがない。
その上マンション最上階の広い部屋なのだ。
バブル真っ只中、家賃50万100万はくだらない。
これで家賃20万なんて夢なんじゃないかと思うと同時に、ものすごく不安にもなったそうだ。
実は小さな部屋が5~6個縦につながってるとか、事故物件なんじゃないかとか(笑)
家族を連れて震える手で玄関のドアを開ける。
一体どんな部屋なのか?!
言葉を失うとはこのことだ。
目の前に見えたリビングが50畳ほどあったのだから(笑)
ワーイと喜び走り回る子供達。
ちょっとした公民館の広間のような部屋の隅に、こじんまりと集まっている家具とダンボール。
広い。確かに大きくて広いけどどうしてこうなった?
横浜でもそれなりに家族が暮らせる広めの部屋には住んでいたけれど、その家具や荷物を全部置いても隙間が埋められない。
50畳のリビングの角にテレビとこたつを置いて、隅っこに集まって生活していたそうだ。
振り向くと恐怖を感じるほどの謎の空間。体育館の角にテレビとこたつを置いて住んでるのを想像してみてくれ・・・と言って笑っていた(笑)
引っ越してみて初めて知った物価と家賃の違い。
結局落ち着かなくて数ヶ月で引っ越してしまったというのが事の顛末。
自分達にはあまりにも不釣り合いだったと苦笑い。
ちなみに現在この近辺で家賃20万円の物件を探してみるとこんな感じだった。
JRの駅まで徒歩4分、10階建てマンションの中の2階建て(10階建ての8~9階)
リビングは37.5畳でしかも吹き抜け!
トイレ2つに洗面台3つ!なのにルームシェアは不可(笑)
そりゃ落ち着かんわ。俺には住んでいる想像すらつかない。
そしてこの人が北海道へやってきて、家よりももっと驚いたことがあったそうだ。
俺が働く回らない寿司屋のカウンターでいつものように生ビールを飲んで、おまかせで握ってもらった寿司を食い終わり「マスターおあいそ」と一言。
「あいよ!えーと千円でいいや!」
「これだもん。帰れないよもう向こうに」と笑いながらのれんをくぐっていった。
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