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すい炎になっちゃった

のたうち回ること20時間。
やっと苦しみから逃れる事に成功し、すっかり治った気分で油断してまた酒飲み散歩。


案の定痛みがぶり返す。
後悔してももう遅い。
なんて馬鹿なことをしてしまったのか。
一睡もせずに夜明けをまた迎え夕方頃ようやく回復、今度こそ俺は神に誓った。


今日は一杯だけにしますと。


それはすぐにやってきた。
恐怖のストマッククロー。
ギブアップなんて甘い言葉じゃ許してはくれない。

湯たんぽでみぞおち付近を温めながら、ウコンだのしじみだの体に良さそうなものを無理やり飲み込む。
だが今度こそもう許す気は無いらしい。痛みのレベルも数段上。

飲むヨーグルトに烏龍茶も一気飲み。
小便が濃い黄色を通り過ぎて黒い。
何かがおかしい。絶対おかしい!

烏龍茶、小便、烏龍茶、小便、烏龍茶、小便、延々と朝まで繰り返しかなり濃い黄色と言えるくらいの色になってきた。
だがまだまだ腹痛はおさまらない。

絶食しつつ烏龍茶作戦を継続。
その日の夕方頃だっただろうか?
やっとストマッククローを外してくれた。

「おさまったよ」と嫁に連絡。
脂っこい物や刺激のある物は駄目っぽいと伝えたら、鉄火巻を買ってきてくれた。
わさびの刺激で一瞬ぶり返すもなんとか乗り切った。

神様ありがとう。本気で酒はしばらく控えます。


今回ばかりは本気だ。
一週間、いやせめて三日は断酒してみせる!

痛みもなく眠りすぎた朝。
十時過ぎに起床して歯を磨く。
洗面所の鏡にある顔は随分やつれた顔をしていた。

しばらくお茶漬けやお粥みたいなのにしよう。
今はいたわるべきなのだ。
お茶漬け用のお湯を沸かしながら天を見上げ神様に誓う。
見上げたところで掃除してない汚い換気扇しか見えてないけれども。


お茶漬けと言えばわさび茶漬けだよな。


いってきま~すと嫁が仕事に行ったくらいから違和感を覚える。
これはおかしい。
そして「それ」がかつてない規模の痛みと共にやってくる予感がする。

体が震えているのだ。寒くないのに!

大慌てで湯たんぽを作る。
やつはもうそこまで来ている。早く!早く!脂汗が止まらない!
烏龍茶をがぶ飲みしてトイレに行く。
小便の色を恐る恐る確認して恐怖に慄く。
また黒に近い色になっていたのだ。

そこからは一気だ。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!
断末魔をあげる。

高校生の次男が部屋にいるものの、俺のあまりの叫び声に恐怖し、部屋から出てこない。

嫁にラインを送るも、まともに文字が打てない。
痛すぎてスマホも持てないのだ。


1時半頃、ようやく嫁から返信。
どうするの?大丈夫?と言うから指一本で予測変換にすぐに出てくる言葉を選んだ。

「厳しい」と。


既読になったことを確認し、あとはひたすら堪えて待つ。
待つ待つ待つ!待つ??待てるものなのか?

叫び続けながら待つこと一時間。
今まで襲ってきていた痛みがかわいいと思える程の痛みがやってきた。


この世の地獄。


助けてと叫んだ声が勝手に断末魔となる。
助けてと言ったはずが知らずに殺してと言っていた。声にならない声で。



なかなか学校に行かない次男が心配になりライン。俺の叫び声が怖くて部屋を出られず行けないのかもしれない。

ラインを見て、ようやく様子を見にきた次男が慌てて嫁に連絡をする。
切羽詰まった声で必死に状況を伝えていた。
そこに薄っすら聞こえた嫁の声。

「でも抜けられないし〜」

は?
そんな声を出したのは次男だ。
そして反論しようとした矢先、電話は切られた。

喘息の発作で病院に家族全員呼ばれるくらいの状態の時、「(ノドが)ヒューヒューうるせえな」と言った嫁だ。
今回もそんな予感もしていた。

次男は三時から学校だと言うので、「もういいよ、行っといで」と伝えた。
もうこれは諦めた。
でもこんな死に方嫌だったな。ここに来て痛いランキング一位で死ぬのか。


遠くで次男の焦った声が聞こえる。嫁と何やら口論中。
やり取りを終えた次男になぜか「うん元気でね」と声をかけて、床に倒れたままで学校へと送り出した。


病院についた夢を見る。
もう大丈夫ですよと薬を投与され、俺は安心した表情。
家族も見守ってる。嫁もようやく来てくれたか。

俺って自分の顔を上から見れるんだなぁと感心していると、嫁の怒鳴り声が聞こえる。
「起き上がれないなら病院行けないでしょ。どうする気?」

何言ってるのか。ここは病院じゃないか。
着替え?無理だよ。靴下?そのくらいなら出来る。多分。

しばらく夢の中の嫁と会話して、それがようやく本物の声だと気がついた。午後3時半。

死にものぐるいで助手席に乗り込み倒れる。
あと少し。あと少しできっとどうにかしてくれるはず。

嫁の車は病院とは反対方向へ。

「借りてこないと金ねーもん」

断末魔で返事をする俺。
それは仕方ないけど、多分入院するから会計は後日だぞ?

腹を抑え「ううあ゛あ゛あ゛!!」と叫びながら来院し、金髪ヤクザが撃たれたシーンを完全再現。パジャマだけど(笑)
叫びながら診察を受け、叫びながらとりあえず痛み止めの座薬を貰う。

他人に座薬は入れてもらうものという俺の嘘を未だに信じている嫁が、嬉々として座薬を受け取り、あっという間に俺を脱がして挿入。
叫び声はこの時だけは我慢した。


検査結果はあっさりと出た。
酒の飲み過ぎによるすい炎。
(後日胆石が原因とわかった。まあ飲み過ぎには変わりない)


本来なら数年前の最初の痛みの時点で病院に行かなければならなかった。 
せめてその後の何度目かの湯たんぽ作戦で乗り切っていた時に行くべきだった。
半年に一度はこうなっていたのだから。

一般の人にとってはほぼ手遅れ。
そもそもここ一週間病院に来なかったのが異常だそうだ。


治療法は信じられない量の点滴。
500mlの点滴を一日で12本プラスα。
それを飲まず食わずで続ける。文字通り水すら禁止。

二日目からは8本となったが、飲まず食わずは継続。
まだいつ飲食出来るのか分からない。(投稿日現在、水なし完全絶食六日目)

なお大部屋の為、周りはガツガツ食べている模様。もう死んでしまいたい(笑)

そんな時に嫁からきたラインがこれ。

「お肉たくさん送られてきた〜!」


オウ・・・それは良かったな・・・
そして母からも昆布の煮物作っただのどうのこうの。

点滴してても死なないだけで、お腹は減るのよ。察してあげようよ(笑)


禁酒禁煙、飲まず食わず。
というかこうなってよく分かったけど、俺は多分禁煙出来るっぽい。
でも絶対しない。

シャバに出て「アニキ!お勤めご苦労さまでした!(シュッ!)」「おう(スパー)」タイプだと思われる。


こりゃまたすぐにムショ(病院)送りだな。


追記
俺以外の大部屋の入院患者が全員同時に退院となり、他の患者も入る事もなく一人ぼっちに。
気楽は気楽だけど、学校の教室で一人寝泊まりしてる感じで・・・

取り残された気分。

頂いたサポートはお酒になります。 安心して下さい。買うのは第三のビールだから・・・