見出し画像

成長のマイルストーン

「アンラーニング」や「リスキリング」。新しいことを学びなおす、といった意味の単語が世の中にあふれ、社会は半ば脅迫的に、人の成長をあおる。

終身雇用は「過去」に近づき、能力や業務内容に見合って処遇するジョブ型雇用が脚光を浴びる。

自分は成長できているのか?自分の現在地点に不安に感じる機会は少なくないはずだ。


ヒトは一直線には成長できない

私の経験と実感から言うと、人の成長はリニア(直線状)ではない。伸び悩み、もがき苦しんだ後、爆発的に成長することの方が多い。

困難を乗り越えた後、仕事のプレッシャーから解放されて燃え尽きてしまうこともあれば、順調に伸びていくこともある。そうして寄り道もしながら成長していく。

能力が急成長している最中の「ハイな状態(高い有能感を感じる状態)」が落ち着くと、自分の能力が落ちた、まるで成長が嘘だったかのように感じることもある。

でも、心配する必要はない。実際には成長のペースが落ちてそう実感するだけで、一度得た能力はなかなか減ったり、無くなったりすることはないのだ。

成果を求めるのは10年目から

会社員の成長という点では、組織(課)から成果を求められるようになるのが大きなマイルストーンだ。

新入社員だからといって責任がないというわけではない。しかし、何もわからない新人に組織の成果を求めても、相当優秀でもない限り、組織として満足のいく成果は出せない。逆に、そんな成果で満足するようであれば、既存メンバーの実力を推して知るべし、である。

組織が一つのまとまった業務を安心して任すことができるのは、入社10年目頃だろう。そのころには、自社の仕事の仕方を習得し、自部門の社内での役割を理解したうえで、チームをリードして成果を出すことができるようになっている。

10年以内で成果を出せるようになった社員がいれば、会社は早く昇進させ、仕事の成果に責任を持てるポジションに就けるべきだ。

最初の10年は徹底的にプロセスを極める

入社からの10年間で大事なことは、仕事の進め方(プロセス)を徹底的に磨くことだ。

プロセスとは、PDCAサイクルや報連相、相手目線に立ったコミュニケーションや相手に伝わる論理性、あとはベースとなる心身の健康維持である。

この10年間も前半と後半の2つに分けられる。

前半は与えられた「作業」を遂行する、問い合わせに回答するなど比較的単純な仕事をこなしながら、仕事の進め方(プロセス)自体を習得する段階である。失敗もしながらとにかく数をこなす。上司・先輩に報告と相談を繰り返しながら、自分の組織の仕事の進め方や自分の役割を確認する。そうして本当の意味での組織の一員になっていく。

後半は習得したプロセスを使って仕事で成果を出いていく段階だ。ここまでくると、複数の「作業」を束ねた「業務」を一人で遂行できるようになる。組織内のグループをまとめたり、組織全体で取り組むプロジェクトを束ねたりする。

前半と違って、業務が「作業」の足し算ではなく、「作業」同士の順番や関連性まで考える掛け算の発想が必要になる。さらに、「業務のゴール=成果」となり、組織の論理や技術の原理原則の理解が必要となる。

会社員として、組織の一員として、初めての乗り越えなければならない壁であり、乗り越えられるかどうかは、人によって時期にばらつきが出る。

しかし、これを乗り越えるタイミングの早い・遅いは、その人の成長のタイミングや仕事の与えられ方による部分が大きく、本人の資質をそのまま反映したものではない。その人の昇進の可能性が左右されることがあってはならない。

課長代理・係長はそれまで培った能力をフル活用

こうして初めの10年間で準備ができたら、本格的に成果を出す責任を持たされる段階だ。組織(課)の中の仕事をさばきながら、組織としての成果に向け、他組織と調整することになる。

メンバーを束ねるリーダーシップや人材育成に加え、フットワークが必要だ。組織の内外の人たちと様々な仕事をしていると、想定外のトラブルや依頼が日常的に舞い込む。例外に気を取られ、時間を割かれてしまうと、定常業務が回らない、例外業務の問題が大きくなる。

必要なアクションをタイミングよく、次々にとっていくことが、組織全体を運営していくことにつながる。

だからこそ、10年目までに磨いた本質をとらえる力で、本質的な問題を順序よく押さえ、組織運営をスムーズに行うために仕事をさばく力が求められる。

管理職は「共感・文脈・タイミング」

管理職にもなると、その組織のトップであり、現状の仕事ではなく組織の将来の方向性を示すことが役割となる。今後の行く末を決めるために、他組織と折衝し、課長代理・係長以下の組織メンバーに将来を示し、実現のためのアクションを指示する。

しかし、いくら理想を描いたとしても、実現できなければ意味がない。管理職とはいえ、会社から与えられるリソース(ヒト・モノ・カネ)という制約条件の中で最大限の成果を出さなければならない。

大きなことを実現するためには、周囲の協力が必要であり、何事にもタイミングがある。周りを動かせる「共感」を生み出す力や、過去からの施策の文脈を把握し、適切なタイミングでアクションをできることが必要である。

ヒトの成長はままならない

ヒトは何をきっかけに成長するかは、なかなか予想できるものではない。しかし、ひと度きっかけをつかめば、2次関数・指数関数的に成長する姿をこれまで何度も目にしてきた。

だからこそ、組織の上に立つ人間は、一人ひとりをよく見て、適材適所を実現していくことが大事な仕事になる。ヒトの成長はままならず、だからこそ、おもしろいのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?