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「いい買い物だったと、売れて思う」と書いた理由【宣伝会議賞を振り返って】

2019年3月7日。
この日は僕にとって、忘れられない1日になった。
コピーライターの登竜門とも言われる「宣伝会議賞」でシルバーを受賞した。約51万本あるコピーの中からベスト11に選んでもらったことになる。

ちなみに、受賞コピーはこれ。他の受賞者のコピーは、宣伝会議賞のHPへどうぞ。)※以降のキャプチャは、宣伝会議賞のホームページから転載しています。

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ファイナリストになって、贈賞式に出て、シルバーを受賞した。そして、「広告クリエイティブの最前線で活躍している審査員」から「コピーなんて全然知らない友人」までいろんな人からいいコピーだって言ってもらえた。本当に嬉しい。でも、どういうところが評価されたのか、いいと思ってもらえたのかその理由は実はわかっていないし、自分がどういう狙いでこのコピーを書いたのかを話す機会もあまりなかった。

コピーなんて書いた瞬間から受け手のものなのだから、僕がどういう考えでこのコピーを書いたかなんてどうでもいいのかもしれない。実際、このコピーはいろんな解釈をすることのできる懐の広いコピーだとも思う。

でも、だからこそ「僕が」どうしてこのコピーをいいと思うのか、うーんうーんと頭を悩まさせていた当時の思考回路を振り返りながら、自分なりの解釈を残しておこうと思う。

ちなみに、僕もメルカリで出品したことがある。売り出したのはカフェテーブルで、買った時の値段は、椅子が2脚ついて15,000円くらいだったかな。引っ越し先で使いどころがなく、残念ながら出品することになった。気に入ってはいたけど、もともと間に合わせで買ったテーブルだったから安物で、売れるとは思っていなかった。でも、実際は売れた。金額は7,000〜10,000円くらいだったと思う。その時に「これは、いい買い物だったんだな」って思ったのが、このコピーにつながっている。

メルカリの価値とは、何か。

「What to say(何を言うか)」と「How to say(どう言うか)」という言葉がある。広告クリイエティブに関わる人だったら説明する必要がないくらい、何度も耳にする言葉。ここでも、これに準えて書いていこうと思う。まずは、メルカリを訴求する時の「What to say(何を言うか)」、つまり「メルカリの価値(魅力)」について。最初、僕は大きく以下の3つの軸でコピーを書いていた。

  「収益」:売買によって得ることのできる経済的利益
「環境(ECO)」:これまで捨てられていたものの再利用
「発見」:終売品や非売品など一般的な市場にはないものの流通

例えば、「収益」の視点でこんなコピーを書いた。

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他にも、「環境(ECO)」の視点だと、

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「発見」の視点だと、

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とか

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といったコピーを書いた。

ちなみにこれらは実際に応募したやつだけど、どれも一次審査も通過してない...というか一次通過したの受賞した1本のみ...笑

これは推測でしかないけど、この3つの切り口は文字通り「腐るほど」応募されていたと思う。だから「How to say(どう言うか)」の勝負になっていて、僕のコピーは他のコピーに劣っていたんだと思う。

さらに話を飛ばすと、協賛企業賞を受賞された「ベビーカーが三輪車になった。」ってコピーは「環境(ECO)」と「収益」の合わせ技だ。僕も似たようなのは書いていた。ただ、変化がわかりやすい点で受賞コピーの方が優れていると思う。

メルカリが生み出した、「もう一つの価値」

話をもとに戻そう。改めて受賞したコピーをもう一度見てみると、上記のどれにも当てはまらないことがわかる。

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このどれにも当てはまらない価値を4つめの軸として定義するならば、それは「センス(の共感)」だ。改めて軸を整理するとこうなる。

  「収益」:売買によって得ることのできる経済的利益
「環境(ECO)」:これまで捨てられていたものの再利用
「発見」:終売品や非売品など一般的な市場にはないものの流通
「センスの共感」:価値に対しての共感。価値の再認識・再確認。

メルカリによって「個人間取引」が当たり前になって、みんなが「売り手」になった。売り出しているのは「いいと思って買ったもの」、言い換えれば「その人のセンスそのもの」だ。(補足をすると、メルカリに出品されてるものは「気に入らないから売ってるもの」ばかりではない。サイズが合わなくなった服とか、家族が増えて使い道がなくなったソファとか。売る理由は様々だ。)

「いいと思っているもの」だからこそ、売れた時に僕らは嬉しいと思うし、僕は「いい買い物だった」と改めて思った。これまで自己完結していた「いい買い物」を、メルカリによって第三者にも認めてもらえること(しかもお金も入る!)。それが、メルカリが生み出したもう1つの価値だ。

価値をわかりやすく。印象強く。

次に、「How to say(どう言うか)」について。「そのままじゃん」と思われるかもしれないけど、一応考えてこうしているのでそれも残しておきたい。

このコピーは「いい買い物だった」の前半部分と、「と、売れて思う。」の後半部分に分けられる。

まず前半部分。「いい買い物だった」をそのまま残したのは、それが普段から使う言葉だったことと(きっと誰もが一度は「いい買い物したわー」って言ったことあると思う。)、それ自体が「感情」を連れてきてくれる言葉だったからだ。

「好き」とか、「嬉しい」とか、「楽しい」とか、感情を表す言葉はたくさんある。でもそれらを使わずに感情を届けるのが表現だ。(これは、1年目か2年目かの時に、博報堂同期のコピーライターが言ってたことで、その時から大事にしている考え方。言われてみれば、たしかに歌詞とかもそうなんだよなー。)

次に後半部分。これはシンプルなテクニック(レトリック)で、「買い物」に対して、「売れて」という言葉を持ってくることで、対比構造をつくり、印象に残りやすいフレーズになっている。

余談だけど、この手のコピーは結構多い。例えば、、

  ・映画は、本当のことを言う嘘だ。(dビデオ)
・毎日、命懸けで生きている魚に、遊びで勝てるわけがない。(釣り具のイシグロ)
・赤字は、財産です。(Z会)

とかがある。

今回ファイナリストに残ったコピーにも、この対句表現がとにかく多かった。(以下、自分以外の対句表現コピー)

  ・お金持ちになれないのは、お金を持っているからです。(大和証券)
・さっそく明日から、一生使うね。(伝統的工芸品産業振興協会)
・AIは、まだ、恋を知らない。(工学院大学)
・とても大切で、とてもジャマな物がある。(サマリーポケット)
・医療費の高さが病的でした。(沢井製薬)
・チケットがなくなれば、チケットはなくさない。(ディーエムソリューションズ)

(多すぎいいい…!)

結構似たような、かつ本質ついてるコピーが多い中でシルバーにすべり込めたのは、今をときめく「メルカリ」だったからだと思っている。

宣伝会議賞を振り返って

今回の受賞を経て、やっと「いいコピー」がわかった気がする。文字にすると普通なんだけど、

  ・いいコピーには、嘘がない。
・いいコピーには、無駄がない。
・いいコピーは、企画が広がる。

ってことなんだろうなと。この辺はもう少し言語化できる気がするし、今後のためにも言語化しなくちゃいけないので、考えがまとまったらまた書きます。

あとは、やっぱり「What to say(何を言うか)」の重要性を最近強く感じる。ゼクシィの「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです。」のコピーも、そう。いま言ってほしいことを、そのまま言ってくれた感じ。こういうコピーが、いいコピーなんだと思う。

「うまいこと言う」は自己満足だけど、「いいこと言う」は誰かを幸せにできる。そう信じて、これからも頑張っていきたい。

(追記)
読んでいただきありがとうございます。もう2年以上前になるこの記事を、読んでくださる方はおそらく宣伝会議賞を頑張っている方なんだと想像しています。この記事から何か得るものがあれば嬉しいです。無料でも全文読めるようにしていますが、もし得るものがあればお気持ちいただけますと幸いです。

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