傾斜奇譚

『一つのお題で短編小説を書く』容原静と森本聡生の二人の作家が毎日投稿します。そして、そ…

傾斜奇譚

『一つのお題で短編小説を書く』容原静と森本聡生の二人の作家が毎日投稿します。そして、それを朗読して音声もお届けします。

最近の記事

【傾斜奇譚】朝【ショートショート】

グッモーニン。世界よおはよう。 僕は夢から覚める。幸せな夢。 希望に満ち溢れた夢。 目を開けるのが名残惜しい。 現実を見たくない。 君がいない。君がいない。君がいない。 君だけがいない朝。それがリアル。 君が生きている夢を見る。 君と結婚する夢を見る。 全部夢。全部嘘。 死なせてくれ。

    • 【傾斜奇譚】朝【ショートショート】

      みくびることばかりしてきた。痛みを考えたことはない。 頭痛が酷い。此れは背離。与えた苦痛の跳ね返り。 「君は綺麗だ」 男は言葉を皮切りに私を裏切った。私の若さを学び、ズタズタに切り裂いた。 身体中に傷がある。寒く痛い。 夜明けが近い。生きることを歪めない曙よ。私だけは赦してくれ。

      • 【傾斜奇譚】コーヒー【140字小説】

        空洞だ。何一つ胸が響かない。 君の声も指も唇も僕が話す理由にはならない。 香りが失われたんだ。何処へ消えた? 君は僕の置き手紙を破っただろ。一瞥もくれないんだ。 暑い。気がついたら海外だ。 民族衣装のおじさんがコーヒーをくれる。 俺とコーヒー。 世界は俺を手離す。 約束の自由だ。 た。 #容原静 #短編小説 #演出家 #脚本家 #コーヒー #朗読 #小説 #毎日更新 #オリジナル #傾斜奇譚

        • 【傾斜奇譚】コーヒー【140字小説】

          飲まなかった事を後悔した。 苦いものが嫌いだったから。 でもあの時、貴方が勧めてくれたコーヒーを飲んでいたら、私はこんな想いをしなくて良かったのに。 貴方の事が好きだった。傍にいたかった。 でも、貴方の傍にいるのは私じゃない女の子。 貴方の入れたコーヒーをいつも嬉しそうに飲んでいる。 た。 #森本聡生 #短編小説 #演出家 #脚本家 #コーヒー #朗読 #小説 #毎日更新 #オリジナル #傾斜奇譚 #失恋 #後悔

        【傾斜奇譚】朝【ショートショート】

        【傾斜奇譚】朝【ショートショート】

          【傾斜奇譚】りんご【140字小説】

          「僕は英雄になる。この村を出て。」 少年が、少女にそう言う。 少年の瞳は希望に満ち溢れている。 それに比べ少女は何処か不安そうだ。 「いつ帰ってくるの?」 「もうこの村には帰ってこない。」 少年の言葉に迷いは無かった。 少女は次の言葉を探している。 紅潮したその頬は、若い林檎の様だった。 #森本聡生 #短編小説 #演出家 #脚本家 #りんご #朗読 #小説 #毎日更新 #オリジナル #傾斜奇譚

          【傾斜奇譚】りんご【140字小説】

          【傾斜奇譚】りんご【140字小説】

          【傾斜奇譚】りんご【140字小説】

          寒気がする。知らない子供は泣いている。 幾多のりんごが浮遊している。マグリットのゴルコンダのように。 「この絵画から何を読み取れるのでしょうか。人は皆んな理知の塊の中で泳いでいない混在した生物。愚か者は誤魔化す。君は何となる? 私たちの目よ共有しないか。こちら側へようこそ」 #容原静 #短編小説 #演出家 #脚本家 #りんご #朗読 #小説 #毎日更新 #オリジナル #傾斜奇譚

          【傾斜奇譚】りんご【140字小説】

          【傾斜奇譚】りんご【140字小説】

          【傾斜奇譚】イヤフォン【140字小説】

          ぷるぷるぷるぷる。 逃れられない。壁を叩く。見放せ! 『いつでも誰かと心の会話』 孤独を殺す。人類は接続された。孤独は嫌やん。そんな奴ばかり。そうだ。 痛い。苦しい。ぐわ。 孤独が堪らない。 【傲慢よ】 真の英雄は関係なかった。俺は涙に両手を。尊い。ちょん切った、孤独、天よ。 #容原静 #短編小説 #演出家 #脚本家 #イヤフォン #朗読 #小説 #毎日更新 #オリジナル #傾斜奇譚

          【傾斜奇譚】イヤフォン【140字小説】

          【傾斜奇譚】イヤフォン【140字小説】

          【傾斜奇譚】イヤフォン【140字小説】

          「片方の耳を貸してくれない?」 突然、君が言う。 彼女の手にはイヤホンが握られている。 しかし、その先が何処に繋がってるかは判らなかった。 僕は彼女の言う通り、耳を貸した。 ドクンと大きな音が鼓膜を通り抜けて脳まで届いた。 「私、生きてるよね?」 イヤホンは彼女の心臓に繋がっていた。 #森本聡生 #短編小説 #演出家 #脚本家 #タイヤ #朗読 #小説 #毎日更新 #オリジナル #傾斜奇譚

          【傾斜奇譚】イヤフォン【140字小説】

          【傾斜奇譚】イヤフォン【140字小説】

          【傾斜奇譚】タイヤ【140字小説】

          大陸が海に浸され地上は事切れる。 「歴史上の記述通り私の家系も終わるはずだった」 「で、そのタイヤというわけですか」 彼は四つの首にタイヤを巻いている。彼の祖先は海の星でぷかぷか浮くタイヤにしがみついた。我々に保護されガラスの向こう側でタイヤに感謝する姿は生命の妙を教えてくれる。 #容原静 #短編小説 #演出家 #脚本家 #タイヤ #朗読 #小説 #毎日更新 #オリジナル

          【傾斜奇譚】タイヤ【140字小説】

          【傾斜奇譚】タイヤ【140字小説】

          タイヤ【140字小説・傾斜奇譚】

          「校庭に半分埋まってるタイヤを覚える?」 君ははしゃいでいる。 覚えている。あの不思議な存在を。 乗って遊ぶことも出来た。 でも、タイヤである必要は何処にあったの? 「君を見てると思い出すなぁ。」 僕が僕である必要はあったのだろうか。 半分の視界から君を眺めながら、僕はそう思った。 #森本聡生 #短編小説 #演出家 #脚本家 #タイヤ #朗読 #小説 #毎日更新 #オリジナル

          タイヤ【140字小説・傾斜奇譚】

          タイヤ【140字小説・傾斜奇譚】