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秋のはじまり

去る9月23日、秋の気配が深まりつつある秋分の日に、目黒区八雲にある八雲茶寮にて、「ひとうたの茶席」という書と花生けを鑑賞しながらお茶を頂く会が開かれた。

1.蒼の刻

午前9時少し前に、八雲茶寮の門をくぐる。晴れた日の朝は木々の緑が朝の光に照らされて、空を仰ぐと気持ちが良い。そういう意味を込めているのか、午前の部は「蒼い刻」と示されていた。正午からの部は「白の刻」、夕方の部は「茜の刻」。
ちなみに、蒼は海のように青い色だと思っていたけど、実際には青緑色を示す色のよう。こうして並べてみると結構色の違いがあって面白い。

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引用:https://ichigoichina.jp/kanji/13/%E8%92%BC

そもそもこの会は、茶の湯に受け継がれる歌人の想いを紐解くために1か月に1つずつ和歌を紹介する連載「ひとうたの茶席」の集大成として企画されたよう。これまで日本茶や茶道に触れてきて、徐々に歴史や文化的な側面に興味が湧いていたから、昔から語り継がれる和歌に親しむことができればさらに一歩前進するんじゃないかと、期待に胸が膨らむ。これを機に、書を眺めてお茶を嗜むだけではなく、実際に筆を持ち、自身が書く側になった時に見られる景色を見てみたい。

本連載、「ひとうたの茶席」では、現在の茶の湯につながる和歌を利休の時代から古今和歌集までさかのぼり、毎回一首紹介していきます。そして茶人たちが愛した和歌にどのような気持ちが込められていたのか、また茶の湯がはじまる前の歌人たちの思いが現在の茶の湯にどのように受け継がれているのかを探っていきます。全12回の連載では、和歌を書した私の作品を、表具師 岸野 田氏が表装いたします。そして華道家 平間 磨理夫氏によって花が添えられ、写真家 山平 敦史氏がそれを写真に収めます。
https://www.hitouta.com/post/_%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%AB
「ひとうたの茶席」>「はじめに」

2.歓迎の一杯

一杯目は玉露。60度くらいの低温で丁寧に時間をかけて抽出するため1,2滴しかないけど、少ないからこそ、玉露の香りと深い味わいが鼻に抜けていく。薄荷と砂糖がまぶされた木の実と共に頂き、歓迎の気持ちを受け取る。

二杯目はお抹茶。「言の葉」という見た目が青々しい和菓子を先に頂き、口の甘さでお抹茶の苦みをまるっと受け取る。ただ、このお抹茶は苦みではなく新茶のような爽やかさが際立つ、とても飲みやすいお茶で、感動。

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茶を頂くのと同時に、窓の外では2回ほど花が活けられる。祈りを形どった活け花と、それを照らす陽の光。窓枠には光が零れ、ここだけ俗世を離れた空間のような気がしていた。
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最後の三杯目はほうじ茶。燻した茶葉の香ばしい香りに緊張がゆるみ、ほっと息をつく。そこで、和歌/書道・掛け軸・生け花の先生方のお話があり、普段接することのない世界の話に耳を傾ける。

3.表現者との出会い

本日お話を頂いたのは3名の先生方。和歌/書道の根本知先生。掛け軸を作成する表具師の岸野田先生。そして華道家の平間 磨理夫先生。皆様、お話をされている時は穏やかだけれど、作品を作ったり説明されている時には心に宿る熱い想いが表れ、こっちの心がぐっと動かされる。

印象に残ったのは、掛け軸を手掛ける「表具師」という職業について。ふすまや掛け軸などの紙を利用した建具を、和紙や布を使って仕立てるお仕事。今回展示されていた数々の作品は数々のピースを寄せ集めて1つの新たな作品として作られていたもので、そこには調和だけではなく、高貴さも伴っていた。普段何気なく鑑賞しているものでも「作り手」がいて、その方々の修行と鍛錬の結晶が美しい物を作ってくれること。忘れてしまいがちなことだからこそ、実際に面と向かってお話を伺うことができてとても良かった。

以下、展示されていた掛け軸や装飾の作品。

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4.最後に

今回、たくさんの良い出会いがあった。これからこの縁がどのように広がっていくのかと思うと、とてもわくわくする。そのためには、この縁をしっかり繋げていくための努力が必要になってくる。
今は何もないからこそ、人・モノを繋げて、自分の人生を1つの大きな作品に育てたいと思う、気持ちの良い午前だった。

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